April 27, 2018 / 12:59 PM / a month ago

コラム:日銀に追い風の米長期金利上昇、強まる政策対応力

田巻 一彦

 4月27日、日銀は展望リポートで2%の物価目標の達成時期を明記せず、黒田東彦総裁の会見ではその点に質問が集中した。日銀本店、2016年撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 27日 ロイター] - 日銀は27日に公表した展望リポートで2%の物価目標の達成時期を明記せず、黒田東彦総裁の会見ではその点に質問が集中した。目標達成が遅れても「先送り」と書かれないための対応との疑念が、質問する記者側に根強くあった。

ただ、そうした見方とは別に最近の米長期金利US10YT=RRの上昇で、日銀には「追い風」が吹き始めており、市場予想が外れて2%に近づく可能性もある。日銀の対応力は強まる兆しがある。  

この日の会見では、達成時期を削除したことと関連し「7回目の目標達成先送りと書かれないための対応だったのか」という質問も出た。黒田総裁は苦笑いを浮かべつつ、そうした意図はないと明確に否定。目標未達成と追加緩和を結びつける一部の市場観測を生まないようにコミュニケーション手段を工夫したとの見解を繰り返し説明した。

記者団の質問が目標達成時期の削除に集中した背景の一つに、2%の達成は当面難しいとの市場の思惑や、記者団の観測がありそうだ。

だが、そのように即断できない外部環境の変化が、足元で起きている。その最大の現象は、米長期金利の上昇だろう。26日のNY市場でいったん3%を割り込んだものの、その前の2営業日で3%台に上昇。日米の長期金利差は、300bp程度に拡大している。

短期的な振れはあるものの、中長期的に日米長期金利のかい離幅はドル/円JPY=EBSに影響を与えやすい。実際、27日のドル/円は109円台での推移を続けた。

<日銀にとって警戒すべき円高発の悪影響>

日銀にとって、為替は金融政策の目的ではないものの、金融政策に影響を与える要素の一つとして注視せざるを得ない要因だ。

円高になれば、輸出企業を中心に企業収益が下振れ、株価押し下げ要因として市場で意識される。

円高発の企業業績悪化─株安─企業や家計のマインド悪化─総需要の悪化というのが最も避けたい展開だろう。縮小再生産のメカニズムが働き出せば、それを阻止するために追加緩和を実行に移すことになる。

ただ、現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の下で、強力な追加緩和策として予想されるマイナス金利の深掘りは、地銀などの収益基盤を揺るがすという副作用の面も慎重に考慮する必要がある。できればこの宝刀を抜かずに済ませたいというのが、日銀首脳陣の本音ではないだろうか。

<円安進展なら、プラスの波及メカニズムも>

ところが足元の外為市場では、円高とは逆方向の円安がじわりと進んでいる。円安は、先ほど指摘したメカニズムとは逆方向の効果を日本経済に生み出し、結果として成長持続と物価上昇の可能性を大きくする。

その状況で短期金利マイナス0.1%、長期金利ゼロ%のYCCを維持していけば、2016年9月のYCC導入時に比べ、格段に強い緩和効果を生み出すことになる。

例えば、需給ギャップがプラス方向に拡大する中で長期金利ゼロ%を維持していけば、企業の設備投資や個人の住宅投資を一段と刺激し、物価押し上げのルートを増やすことになるだろう。

デフレ心理が強く、なかなか中長期の予想物価上昇率が上がってこないと黒田総裁も27日の会見で認めた。

だが、日米金利差の拡大がゆっくりと進み円安が徐々に進めば、株価上昇と企業心理の好転や輸入物価の上昇、個人のマインド好転・消費への好影響などの波及効果が、市場関係者の予想を超えて進む可能性もある。

米長期金利の動向とドル/円の行方は、日銀の政策選択の幅を広げることになるだろう。「2%達成はずっと先」──と頭から決めてかかると、足をすくわれるリスクも相応に考えておくべきだろう。

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