July 31, 2018 / 7:42 PM / 19 days ago

コラム:日銀枠組み、配慮の組み合わせ 注目はフォワードガイダンス

[東京 31日 ロイター] - 日銀が31日に打ち出した「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」は、かなり精緻に組み立てられている。イールドカーブ・コントロール(YCC)の下でゼロ%となっている長期金利の水準に一定の変動幅を持たせるとともに、新たに政策金利のフォワードガイダンスを設定。短期的に金利が跳ねないように配慮された組み合わせと言える。

 7月31日、日銀が打ち出した「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」は、かなり精緻に組み立てられている。会見する黒田総裁(2018年 ロイター/Toru Hanai)

一方、物価が上がり出せば、フォワードガイダンスが市場の予見可能性を高め、いずれかの時期に長期金利目標を引き上げる際に、非連続な変化が起きないようにするバッファーの役割も果たすのではないか。今回の対応は、短期と中長期の両方に備えたかなり「ハイレベル」な機能を実は装備したようにみえる。 

<短期的に弱く、中長期的に強くなる物価>

日銀は今回の展望リポートで、物価見通しを18年度─20年度までそろって下げ、物価2%の達成に向けた超緩和策の実施が、長期戦になることを強くにじませた。

その一方、需給ギャップのプラスが継続し、人手不足対応などによる設備投資が本格化すれば、生産性が高まり、短期的に物価は伸び悩むものの、中長期的には賃上げを伴って物価上昇への期待が高まるとのシナリオを描いた。

「今は低い伸び率でも、将来の物価上昇率は高まる」──。これが日銀の主張だが、かなり時間もかかりそうだ。

そこで、市場機能の低下など「副作用」の緩和を図るため、1)長期金利の誘導水準への一定程度の変動幅の容認、2)国債の弾力的な買い入れ、3)ETFやJ-REITは市場の状況に応じ、買い入れ額は変動しうると明記、4)ETFの買い入れではTOPIX連動の買い入れ額を増加、5)マイナス金利が適用される政策金利残高を現在の10兆円から減少させる──などと決めた。

<金利上昇をオフセットするフォワードガイダンス>

このうち、長期金利の変動幅に関し、黒田東彦日銀総裁は31日の会見で、上下0.2%程度になることを明らかにした。物価上昇率が伸びないのに、長期金利の誘導水準を上げることになる政策が打ち出されたのは、こうした日銀の「ロジック」が背景にある。

ただ、金利が上がれば、円高や株安になるリスクが高まるというのが、過去の経験則から予想される展開だ。

そこで、金利上昇に「フタ」をする意味で、「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している」とのフォワードガイダンスの文言を新設。金利上昇の圧力を相殺(オフセット)することを狙ったのではないかと私は類推する。

その意味で今回の「枠組み」は、かなり入念に考え込まれ、精緻に作り上げられた政策パッケージで構成されていると言えるのではないか。

<物価上昇時に発揮される機能>

この先、グローバルに大きなショックが発生せず、需給ギャップのプラスが継続していけば、人手不足の解消が見込めない中で、賃金が目に見えて上がる局面が到来するかもしれない。

そのときは、14年に経験した1.5%の物価上昇率を超え、2%を目指す動きになっているかもしれない。

物価が上がりだすと、今回、導入したフォワードガイダンスに対する市場の注目度が上がると予想する。欧州中銀(ECB)の最近の金融政策をめぐっては、フォワードガイダンスの変更がまず意識され、その後、実際の金利引き上げが行われるという予測が、市場で共有されるようになっている。

いずれ、日本でもそのような現象が発生すると考えても、何ら不思議ではない。物価上昇の動きを見て、市場が過敏に反応し、金利が急上昇することも防ぐことができそうだ。

ただ、物価が上がり出さなければ、こうした機能が動き出すことはない。物価を継続的に上げる原動力は賃上げであり、企業経営者がもっとアグレッシブに動かないと、日銀が本格的に出口を模索することは難しいのではないか。

●背景となるニュース

・UPDATE 2-長期金利の変動幅、プラスマイナス0.2%程度を念頭=黒田日銀総裁

[nL4N1UR42S]

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