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コラム

コラム:「日銀ショック」で浮上、来年の世界的流動性リスク

[オーランド(米フロリダ州) 20日 ロイター] - 来年は米国の景気が軟着陸し、インフレと金利がピークを超えることで世界市場が落ち着くと期待していた向きは、日銀が20日に実施した「ショッキングなピボット」(政策転換)によって再考を迫られるかもしれない。

 12月20日、来年は米国の景気が軟着陸し、インフレと金利がピークを超えることで世界市場が落ち着くと期待していた向きは、日銀が20日に実施した「ショッキングなピボット」(政策転換)によって再考を迫られるかもしれない。写真は同日、都内の日銀本店で記者会見する黒田東彦総裁(2022年 時事通信)

世界の中銀の中で最もハト派の日銀が、金融システムから流動性を吸収し始めるまでには、まだ距離がある。しかし、「イールドカーブコントロール」を修正し、長期金利の水準を実質的に2倍に引き上げる今回の決定により、日銀がいずれ流動性拡大を中止する可能性が視界に入ってきた。

今回の決定は、重要な意味を持つだろう。日銀は過去数十年間にわたって、デフレとの長い闘いを続ける中で、世界の先頭に立って超緩和・非伝統的金融政策を実施してきた。最近では10年物国債利回りを0.25%程度に抑えるため、無制限の国債買い入れを表明してきた。

米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)、その他の西側中銀が今年、利上げや量的引き締め(QT)によって程度の差こそあれ流動性を引き揚げているのとは対照的に、日銀と中国人民銀行は再び流動性を供給している。

日銀が後退すれば、少数派に残るのは中国人民銀行だけになるだろう。その中国ですら、経済活動再開に成功して緩和バイアスを修正、ひいては転換しないとも限らない。

来年の世界市場で流動性供給が縮小することは、以前から予想されていた。だが、日銀による資産購入中止の可能性をこれほど早く想定内に入れていた人は、ほとんどいなかっただろう。

シティ(ロンドン)のマット・キング氏は、日銀は過去1年間に約2000億ドルの債券を購入したが、来年は減額される「可能性が非常に高い」ようだと語る。

「これはQTではない。しかし、リスク性資産を支えてきた中銀の流動性供給が徐々に引き揚げられ、場合によっては引き締めに転じる度合いが強まったのは間違いない。そうなれば、リスク性資産にマイナスの影響が及ぶ」とキング氏は述べた。

キング氏は日銀によるサプライズの前、主要中銀が来年の世界の金融システムから1兆5000億ドル前後の流動性を吸収すると予想していた。他の条件が同じなら、これは世界の株価を15%押し下げる影響があるという。

<来年は険しい道のり>

モルガン・スタンレーのアナリストチームは今年6月、キング氏よりも大規模なQTを想定していた。FRB、ECB、BOE、日銀の主要4中銀が、その時点からの1年間で合計4兆ドル以上の流動性を吸収するとの予想だ。

モルガンは「過去最大の中銀バランスシートの拡大は、過去最大の縮小へとつながる」としていたが、日銀だけは、ほぼ流動性を吸収しないと想定していた。

FRBはその後、9兆ドル近くに膨らんだバランスシートを月額950億ドル縮小していく計画を示した。償還を迎えた国債やモーゲージ担保証券の元本等を再投資しないという手法だ。

ECBは先週、5兆ユーロ(5兆3100億ドル)の保有資産について、債券の償還資金の再投資を中止する計画を示した。資産購入プログラム(APP)の保有資産を来年3月から月額150億ユーロ縮小し、7月に縮小ペースの見直しを行うとしている。

BOEは先週、QTのペースを速め、来年第1・四半期に97億5000万ポンド(118億7000万ドル)の国債を売却すると発表した。

日銀は他の中銀に大きく遅れを取っているが、20日の発表で本当にサプライズだったのは、その方向ではなくタイミングだ。日本のインフレ率は物価目標の2倍近い4%弱に達しており、日銀のバランスシートと国内市場のゆがみは急速に拡大している。

一方、日銀は国際舞台において政策的な「仲間はずれ」の様相を強めていた。先進7カ国(G7)においては確実にそうだ。

ある意味で20日の「青天のへきれき」は、金融市場にとって史上まれに見る予測不能で、波瀾万丈な1年の締めくくりとしては完璧だ。来年もまた、順風満帆とは程遠い1年になることをうかがわせる出来事でもあった。

スタンダード・チャータードのG10調査責任者、スティーブ・イングランダー氏は「2023年の第1部は困難に満ちているかもしれない。主要3中銀の金融引き締めと流動性吸収が、資産の価格決定を支配する可能性がある」と予想した。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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