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コラム:黒田総裁がヒント、「バランスシートの規模」に注目すべき
2017年6月16日 / 19:57 / 5ヶ月前

コラム:黒田総裁がヒント、「バランスシートの規模」に注目すべき

[東京 16日 ロイター] - 16日の黒田東彦日銀総裁の会見は、見る人によって受け止め方がかなり異なったようだ。市場との対話がうまくいっていないとの感想や、出口戦略に関する情報は「ゼロ回答」の見方もあった。だが、詳しく見ると、いくつかのヒントも示したと思う。キーワードは「バランスシートの規模」だ。 

 6月16日、黒田東彦日銀総裁(写真)の会見は、見る人によって受け止め方がかなり異なったようだ。市場との対話がうまくいっていないとの感想や、出口戦略に関する情報は「ゼロ回答」の見方もあったが、詳しく見るといくつかのヒントも示したと思う。キーワードは「バランスシートの規模」だ(2017年 ロイター/Toru Hanai)

<市場に「ゼロ回答」の声>

黒田総裁は会見の冒頭に近いところで、出口戦略と日銀財務について聞かれ、「2%の物価目標達成までまだかなり距離があるので、今から具体的に出口がどうなるか、そのもとで日銀の収益がどうなるかは、目標達成がまだ道半ばの状況で、将来の経済、物価、金利に加え、そのもとでどのような手段をどのルートで取るかによって変わってくるので、現時点で具体的なシミュレーションの話をするとかえって混乱を招くと考えている」と述べた。

また、出口の手法や順序を示すのは難しく、「収支の状況等について具体的なシミュレーションの話しをするのは、かえって混乱を招く」としたほか、「今の時点で具体的な数字などで示すのは適当でないと思う」と語った。

<正常化、短期金利とバランスシートが焦点>

このあたりだけを聞いていると、確かに「ゼロ回答」との印象もやむを得ないとも感じる。

しかし、1時間近いこの日の会見を最後まで聞くと、「あれっ」と思う発言箇所がいくつかあった。

出口の議論で長期金利目標引き上げの選択肢はあるのか、という質問のところで、黒田総裁は「直接動かせるのは、付利と国債の買入(額)」と指摘。「それを通じてターゲットして長期金利を上下に誘導することはあり得る」と述べた。

さらに「非伝統的政策の正常化プロセス議論は、通常、短期金利とバランスシートをどうしていくのかが焦点になる」と語った。

また、これに関連した発言として、出口の定義を聞かれ、金融緩和の程度を縮小していくことであるとも述べた。

<日銀財務、通貨発行益などで信認き損せず>

日銀財務との関連では「収益が赤字になる可能性はあるのではないかと言われると、前提の置き方によってはあり得る。しかし、より一般的には長期的な通貨発行益が発生するので、長い目で見れば中央銀行は収益を確保できる。短期的な収益悪化で通貨の信認がき損されることはない。財務状況が政策を制約したり、通貨の信認をき損したりすることにはならないと思っている」と明言した。

黒田総裁のこの日の発言は、これまでの定例会見での中味と比べれば、踏み込んでいる。

出口戦略というと、東京市場の多くの市場関係者は「付利」の引き上げをイメージするが、黒田総裁はバランスシートの規模にも言及した。

黒田総裁の発言内容をパズルのように組み合わせて行くと、出口戦略の一環として、バランスシートの縮小を始めて行けば、それが「出口」のスタートになっている可能性があると考えることができる。

<足元で進む買入量の削減>

一方、足元では国債買入量の圧縮が進んでいる。これは日銀の説明では、長期金利上昇の圧力が弱まって、イールドカーブコントロール(YCC)の下で誘導目標としている長期金利をゼロ%にすることが可能な量ということになる。

足元の消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)が前年比プラス0.3%と目標の2%から遠く、出口戦略の発動を考える局面でないことはだれが見ても明らかだ。

つまり、現在の国債買入量の減少と、出口で模索するバランスシートの圧縮に連続性はなく、全く「別物」だということだ。

ただ、表面上の現象としては、「別物」か「連続した動き」なのか、見分けることは難しい。

仮に物価上昇率が前年比1%を超えてきた際に、バランスシート圧縮に備えた「前段的な動き」とみるのか、そうでないとみるのか、市場の意見は分かれるのではないか。

そこが、日銀にとってある種の政策発動の「フリーハンド」の余地とみることも可能ではないかと私は考える。

多くの市場関係者はこの日、黒田総裁のメッセージを黙殺したが、「バランスシートの規模」に注目するべきだろう。

そこを意識すれば、日銀と市場との対話は、より円滑に進むのではないか。

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