October 31, 2019 / 10:05 AM / 13 days ago

コラム:米中通商交渉の行方に揺れるFRBと日銀の未来

[東京 31日 ロイター] - 日銀と米連邦準備理事会(FRB)の今後の政策は、ともに米中通商交渉の動向に大きく左右されるだろう。11月中下旬に米中が第1段階の合意で正式調印に漕ぎつけることができれば、日米の中銀はいずれも12月に政策を維持する公算が大きくなると予想する。しかし、交渉が暗礁に乗り上げるなら、追加緩和で「衝撃」を和らげるしかないだろう。特に日銀は、外部環境次第という色彩が一段と強まってきたようだ。

10月31日、日銀と米連邦準備理事会(FRB)の今後の政策は、ともに米中通商交渉の動向に大きく左右されるだろう。写真は7月、日銀本店で記者会見する黒田東彦総裁(2019年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に公表された声明文や、パウエルFRB議長の会見内容を見れば、大方の市場関係者が判断したように、利下げ休止に傾いたことは明らかだ。

同時に主要なリスクは「貿易動向」と議長は指摘した。米中間で第1段階の合意に達すれば「貿易摩擦の緩和や不透明感後退といった効果をもたらす可能性がある」とも言及。米中交渉が円滑に進展すれば、12月の追加緩和は見送られるとの印象を与えた。

言い換えれば、順調そうに見える米中交渉が途中で頓挫した場合、リスクオフ心理の高まりで世界的な株安も想定され、そのケースでは「利下げ」のカードを切ると思われる。

<米中が部分合意なら、12月に日銀は政策維持の可能性>

一方、日銀も31日に公表した経済と物価の展望(展望リポート)で、4つの経済的リスクの1つとして、海外経済の動向を挙げた。その中で「保護主義的な動きの帰すうとその影響」に言及。これが米中貿易摩擦の激化による関税引き上げ合戦とその影響を想定しているのは間違いない。

黒田東彦総裁もこの日の会見で、足元の米中関係は緊張緩和方向に向かっているとしつつ「全体的に摩擦が完全に解消したわけではない」と述べ、一定の不確実性が残っているとの見解を示した。

ただ、輸出依存度の高い製造業を中心に先行きの景況感に懸念が出ているものの、非製造業が持ちこたえ、日本経済全体の腰折れにはつながっていない。

今回の決定会合で、日銀が政策維持を決めた背景にも、外需の弱さが「内需に波及するということではない」(黒田総裁)との判断があり、このまま米中交渉が円滑に着地すれば、日本経済に「光明」も見えてきそうだ。

具体的には、グローバルにリスクオン心理が台頭し、世界的に株価が上昇。ドル高/円安地合いの進展で、企業経営者の心理も前向きに転換する兆しが出て、設備投資につながるという「前向きの循環」が起動する展開が見通せるようになるだろう。

とすれば、現行の緩和政策を維持し、その効果を見守るというシナリオの現実味が増すと予想する。

<米中交渉の不調、日銀・FRBには緩和圧力>

だが、交渉が予想外の展開をたどり、第1段階の合意形成に失敗した場合、全く別の結末がやってきそうだ。

市場が期待してきたのは、第1段階の合意を踏まえ、米国がかけて来た対中高率関税の段階的な引き下げだ。

実際、米国の対中関税は、大方の専門家の予想を上回る打撃を中国経済に与え、足元で発表される経済指標に下げ止まりの兆しが見えてこない。中国国家統計局が発表した10月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.3と、前月の49.8から低下し、景況拡大と悪化の分かれ目となる50を6カ月連続で下回った。

現行の対中関税が継続した場合、中国経済への下押し圧力もかかり続け、中国を起点にした世界経済全体の下降トレンドに歯止めがかからな可能性が高まる。

FRBが追加緩和にかじを切り、米長期金利が低下するのと並行的に、ドル安/円高の圧力が久方ぶりに高まるリスクが大きくなりそうだ。

円高と株安は、日本の企業経営者と消費者の心理を「てき面」に悪化させる。このケースでは、日銀が「ちゅうちょなく」短期金利の深掘りを含めた追加緩和を決断することになるだろう。

日銀からの視点に立てば、米中交渉は全く自己の影響力が及ばない分野であり、その局面変化で大きな影響を受ける構造は、非常にやっかいだ。

年末から年明け以降も、しばらくの間は「受け身」の状況を強いられることになりそうだ。

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