July 17, 2015 / 6:57 AM / in 4 years

コラム:日銀の強気支える「3本の柱」

――輸出・生産、中国経済、原油価格に関する見通しのうち、どれか1つが危うくなるだけで、日銀シナリオの実現性は急低下しかねない。

 7月15日、黒田日銀総裁の強気の見方を支えている「3つの柱」が、金融政策決定会合後の会見で浮き彫りになった。写真は都内の日銀本店で会見に臨む総裁。4月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

田巻 一彦

[東京 15日 ロイター]- 日銀の黒田東彦総裁が維持している強気の見方を支えている「3つの柱」が、15日の会見で浮き彫りになった。1つは4─6月期の輸出・生産の落ち込みが一時的との見通しであり、2つ目は中国経済は大崩れしないとの認識だ。

最後は原油価格が1バレル70ドルに上がるという前提で、このうちのどれかが危くなると、日銀シナリオの実現性が急低下しかねない。BOJウオッチャーの注目点も、この3つに集まるのではないか。

<黒田総裁、4─6月の落ち込み「一時的」>

この日の会見で、黒田総裁は2016年度前半に物価目標2%を達成するとの「強気」のスタンスを維持した。

その見通しを支える1本目の大きな柱が「4─6月期の輸出・生産の落ち込みは一時的」という見通しだ。   

4─6月期の国内総生産に関しては、一部のエコノミストは前期比マイナスとの予想を出しているが、もし7─9月期も輸出・生産の下振れが継続すれば、15年度成長率の先行きを暗くすることになりかねない。

だが、黒田総裁は「米国経済は4─6月は明確に回復しているし、中国も成長のモメンタムが切り下がっているのは事実だが4─6月も7%成長を維持した。日本経済の足元の弱い状況が、7月以降ずっと続くとはみていない」と、弱気な見通しを一蹴した。

<中国は安定した成長経路たどる>

2つ目の大きな支柱は、中国経済が安定的に推移するとの見通しだ。中国の輸入は、今年6月までに8カ月連続で前年比マイナスに転落している。中国向けの輸出に比重を置いている日本企業には、輸出減少としてのしかかってくる。

もし、中国の輸入減少が継続するようなら、黒田総裁が「一時的」とみている日本の輸出の動静に影響を与えかねない。

この点についても、黒田総裁の見解は明快だ。「中国の4─6月期のGDP成長率が前年比7%だったということから確認されたように、総じて安定した成長を維持しているとみている」「先行きについても金融・経済面について、中国政府が景気下支えに向けた政策を相次いで講じていることから、今後も成長率を切り下げながらも、概ね安定した成長経路をたどるとみている」と言い切った。

ただ、「中国経済については、今後とも注意深く見ていきたいと思っている」と、付け加えることも忘れなかった。

<原油はバレル70ドルに上昇の前提>

3つ目の大きな支援要因は、原油価格の動向だ。日銀は1バレル60ドルから17年度末にかけ70ドル程度に上昇するとの前提を置いている。

その前提通りに推移すれば、消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)を押し下げてきた原油安の効果が次第にはく落し、15年度後半から16年度にかけてその影響がゼロになり、物価を急速に押し上げると想定している。

<懸念される中国輸入の減少長期化>

ここで指摘した3つの要因が、あたかも日銀シナリオを支える3本の太い柱となって基本構造を支えているとみることができる。

逆に言えば、3つの支柱のどれか1つでも「グラグラ」するようになると、日銀シナリオの構造は「ギーギー」という音を立てて、揺れ動くことが予想される。

もし、輸出・生産の4─6月期の落ち込みが一時的でなく、7─9月期以降も伸び悩みや減少傾向を見せれば、15年度の成長シナリオをかなり書き換える必要が出てきてしまうだろう。

また、中国経済の調整が長期化し、輸入減少に歯止めがかからないようなら、1つ目の輸出・生産の回復シナリオを後退させるだけでなく、足元で落ち着きを取り戻りしている中国株の下落再発懸念に発展しかねない。

<米利上げもかく乱要因>

この2つ目の支柱は、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ戦略の影響をかなり受ける。市場では、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における利上げについて、まだ半信半疑の参加者がかなりいるようだ。特に東京市場では、その割合が欧米市場よりも多いとみられている。

だが、9月利上げが実現するなら、中国市場に滞留している米欧系のホットマネーのかなりの部分が、米市場にシフトすることが予想される。

中国株が下落すると、米欧ヘッジファンド系のマネーが、日本株も同時に売り出したのは、直近の株式市場で目撃したばかりだ。

<原油価格、下げ圧力増す>

また、70ドルへの原油価格上昇シナリオには、中国を含めた世界経済の減速予測や米欧とイランの核開発をめぐる交渉の決着、米国内におけるシェールオイル設備の稼働増加など、原油の需給を供給増加方向に傾けさせる要因が目白押し。

 7月15日、日銀の黒田東彦総裁が維持している強気の見方を支えている「3つの柱」が、金融政策決定会合後の会見で浮き彫りになった(2015年 ロイター/Yuya Shino)

日銀の前提通りに原油価格が推移せず、価格が下振れすれば、短期的な物価の下押し圧力が増す。

黒田総裁も15日の会見で「将来、石油価格がさらに上昇したり下落した時にどうかというのは、非常に大きな変化であれば、物価上昇率とか上昇率の期待に影響を与えて、物価の基調に変化を来すことになれば当然、必要に応じて政策を調整することになると思う」と語っている。

以上の3点を丁寧にフォローしていけば、日銀が政策変更するのか、それとも現状維持をしばらく続けるのか、だんだんと様子がわかってくるのではないか。

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