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コラム:米ブロードコム、クアルコム買収の巨額調達に漂う不安
2017年11月7日 / 09:17 / 11日前

コラム:米ブロードコム、クアルコム買収の巨額調達に漂う不安

[ダラス 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 半導体大手ブロードコム(AVGO.O)は6日、米通信用半導体大手クアルコム(QCOM.O)に対する1050億ドルの買収提案について、契約を結んだアドバイザーが買収資金の調達に「強い自信」を示していると説明した。

 11月6日、半導体大手ブロードコムは、米通信用半導体大手クアルコムに対する1050億ドルの買収提案について、契約を結んだアドバイザーが買収資金の調達に「強い自信」を示していると説明した。写真はクアルコムの建物。カリフォルニア州で2015年11月撮影(2017年 ロイター/Mike Blake)

豊富な流動性や低いデフォルト率、規制緩和を背景に、金融機関は融資したくてうずうずしている。

しかし企業の借り入れ比率は高まり、銀行が融資の際に顧客企業に求める財務上の制限条項(コベナンツ)も緩んでいることから、貸し出しは大きなリスクをはらむ。

ブロードコムのアドバイザーは、まさに今こそ必要な用心深さをかなぐり捨てようとしている。

ブロードコムは株式と現金の組み合わせによる支払いを提案しており、900億ドルの現金を用立てる必要が生じる。ハイテク投資会社シルバー・レイクが50億ドルを融通するほか、ブロードコムが今後買収完了までに生み出す予定のキャッシュによって不足分はやや圧縮されそうだ。

しかし融資と起債による調達が総額700億ドルにとどまったとしても、昨年デルがEMC買収のために借り入れた額を大幅に上回り、M&A目的の調達としては過去最大級となる。

名乗りを上げた金融機関はまだないが、今回の案件には追い風が吹いている。

米財務省は最近、世界金融危機後に設けた債務の水準に関する指針を緩和する可能性があることを明らかにした。フィッチによると、デフォルト率は来年低下し、景気後退期でない通常の時期としても低くなる見通しだ。またトムソン・ロイターのデータによると、融資実行額は今年はわずかに減少したが、ドル建て投資適格級債の発行額はこの6年間、毎年増加しており、今年は年初来で1兆2000億ドルに達した。

しかし、カネ余りによる与信基準の悪化は心配だ。米連邦準備理事会(FRB)のデータによると、米国の非金融企業の債務は第2・四半期に過去最高の6兆ドルに膨らみ、09年の「グレートリセッション」末期から63%増えた。S&Pグローバル・レーティングスによると、格付けを付与されている米企業の債務は中央値でみて、EBITDA(利払い・税・償却前利益)の4倍を超え、金融危機前の一般的な水準を上回った。

社債利回りも低下している。

11月6日、半導体大手ブロードコムは、米通信用半導体大手クアルコムに対する1050億ドルの買収提案について、契約を結んだアドバイザーが買収資金の調達に「強い自信」を示していると説明した。写真はブロードコムの建物。米カリフォルニア州で撮影(2017年 ロイター/Mike Blake)

「Baa」格付け債の10年物米国債との利回り差は先週にわずか1.91%ポイントと、07年10月以来の水準に縮小した。ブロードコムは投資適格級だが、S&Pレバレッジド・コメンタリー・アンド・データによると、高利回り債の財務制限条項の質は6年前の集計開始以来で最低となっている。

FRBは徐々に金利を引き上げ続け、バランスシートを縮小して市場への資金供給から吸収へと転じていく方針だが、ちょうどそのタイミングで信用の質が悪化しているのだ。

ブロードコムがクアルコム買収のために発行する社債が割高で、投資家の保護も甘いと受け取られ始めるのは間もなくかもしれない。銀行は投資家から強いられるのでなく、自ら資金調達見通しで示した「強い自信」の軌道修正を図る必要がありそうだ。

●背景となるニュース

*ブロードコムは6日、クアルコムへの1050億ドルの買収提示について、契約を結んだアドバイザーは買収資金の調達に強い自信を示していると発表した。支払いは現金と株式の組み合わせで行う見通しで、必要な現金は900億ドル近くに上る。

*S&Pグローバル・レーティングスが10月10日公表したデータによると、格付けを付与されている米企業の債務は中央値でみて、EBITDA(利払い・税・償却前利益)の4倍を超えており、2008─09年の金融危機当時に一般的だった水準を上回っている。

*債務の対EBITDA比が6倍以上の企業に対する融資の実行には慎重を期すよう銀行に求めた2013年の当局の指針について、米会計検査院は10月19日、議会で見直す必要があるとの見解を示しており、指針は撤廃される可能性がある。米財務省も6月にこの指針に関して意見公募を始め、見直しに向けて動いている。

*S&Pレバレッジド・コメンタリー・アンド・データによると、高利回り債の財務制限条項(コベナンツ)の質は第3・四半期に過去最低となった。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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