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コラム:ブラジルW杯、投資家は「惨敗」に期待
June 12, 2014 / 2:42 AM / 4 years ago

コラム:ブラジルW杯、投資家は「惨敗」に期待

Rob Cox

 6月10日、ブラジルで政権交代を確実にするには、サッカーW杯ブラジル大会が「惨敗」に終わることが必要だ。写真は同国の国旗。ブラジリアで5月撮影(2014年 ロイター/Ueslei Marcelio)

[ニューヨーク 10日 ロイターBreakingviews] - サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会のリハーサルとして1年前に行われたコンフェデレーションズカップでは、開会式に登場したルセフ大統領に観客から激しいブーイングが浴びせられた。12日のW杯開会式で大統領が演説しないのは無理からぬことだ。

世界最大のスポーツの祭典であるサッカーW杯の開催国として恥をかいたり、「マラカナンの悲劇」として記憶される1950年大会の二の舞を踏むようなことがあれば、 ルセフ大統領の再選には大きな障害となるだろう。1950年大会では、自国開催のブラジルが決勝でウルグアイに逆転負けし、優勝を逃した。

ブラジルの株式市場では、ルセフ大統領の支持率が下がるたびに、ブラジルのボベスパ指数が上昇している。投資家は明らかに、今秋の大統領選でルセフ陣営が敗れ、実験的な経済政策に終止符が打たれることを望んでいるようだ。

政権交代を確実にするには、選挙までに同国経済に関する悪いニュースがいくつか出てくるだけでは十分ではない。W杯ブラジル大会が「惨敗」に終わることが必要だ。

ブラジル代表の実力を公に軽んじるブラジル人は少ない。しかし、W杯で無残な結果に終わったとしても、それは南米最大の経済大国を侵している「停滞病」の表れだとひそかに考える国民は多い。ブラジルはインフレ率が6.4%と依然高く、国内総生産(GDP)の伸びは低迷し、政府の財政状況も芳しくない。

ルセフ大統領の経済運営が失策だったのは明らかだ。欠陥だらけの金融・産業・財政政策は、ブラジルを「新興国の星」から「期待外れの国」に変えた。2011年初めにルセフ政権が発足して以降、ブラジルの株式市場は約25%下落し、通貨レアルも対米ドルで同様の下げを記録した。ルセフ大統領はしかし、こうした相場の動きは「ブラジルに対する悪いムード」が原因だとして、自身の政策運営のせいではないとしている。

現実には、ルセフ大統領の支持率とブラジルの資産価格は見事な逆相関を描いている。2014年の初めに40%を超えていた支持率は、そこから右肩下がりとなり、6日発表された世論調査では34%まで落ちた。その間、ボベスパ株価指数は15%超上昇している。さらに詳しく見れば、ブラジル国営石油会社ペトロブラス(PETR4.SA)の株価は、ルセフ大統領の最新の支持率が発表された6日には5%上昇した。

それは当然のことと言えるだろう。ペトロブラスは、ルセフ政権の企業への介入の象徴的存在だからだ。同社は2007年には大規模な深海油田を発見したが、産油量は伸びていない。その理由は、厳しい外資規制のほか、政府が同社にコスト負担の大きい製油所を建設させ、市場価格より安価に燃料を供給するよう求めていることなどが挙げられる。

マクロ経済に目を転じても、ブラジルの見通しは明るくない。格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は3月、ブラジルのソブリン格付けを「BBB」から投資適格級で最も低い「BBBマイナス」に1段階引き下げた。S&Pは「格下げは、財政の悪化や、向こう数年にわたり抑制された成長の中で財政執行が引き続き低迷するとの見通し、10月の大統領選を控えて政策調整能力が制約されること、ブラジルの対外収支が幾分悪化するといった複合的要因を反映している」と指摘した。つまり、懸念材料には事欠かないということだ。

    とはいえ、クレジットアナリストやエコノミストには問題が明白に見えていても、平均的な有権者がそれに気づかないこともある。分かりやすい例を挙げれば、ブラジルの失業率は5%を下回っているが、これは欧米なら政権維持を確実にする数字だろう。

    さらに、ルセフ大統領の後見人ともいうべきルラ前大統領が政権の座に就いた2003年以降、ブラジルでは約3500万人が貧困から脱し、中流階級入りした。これが依然として、ルセフ大統領の労働者党にとっては切り札になっている。特に、筆頭対立候補とみられる社会民主党(PSDB)のアエシオ・ネベス氏に対しては有効なカードとなる。元ミナスジェライス州知事のネべス氏は裕福な政治一家の出身であり、ルセフ陣営にしてみれば「浮世離れ」のレッテルを貼るのは簡単だろう。

    ブラジルのインフレ率はまだ高いが、タイトな労働需給と価格統制の結果、多くの労働者の給料も上がっている。拡大する中流層の生命線ともいえる消費者信用は、流れが弱まったが止まってはいない。一方、労働生産性と賃金の伸びは一致していない。ブラジル政府は、創造的な会計操作をしない限り、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字目標を達成できないだろう。

    いずれにしろ、こうした問題は大統領選が終わる10月以降まで持ち越される公算が大きい。4年に1回のサッカーの祭典は間もなく始まり、熱戦は1カ月にわたって繰り広げられる。ブラジルがW杯を首尾よく成功させ、最終的に優勝を飾り、1950年からの積年の悔しさを晴らすことができれば、ルセフ大統領も2度目のチャンスをつかめるかもしれない。さて、どんなゲームになるだろうか。

    *筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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