January 17, 2017 / 8:42 AM / 2 years ago

コラム:英国が直面する「ブレグジットの崖」、転落の影響は

[ロンドン 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英国は崖からの転落を回避しようとしている。だが、もし欧州連合(EU)の単一市場から撤退する「ハードブレグジット」を選択することになった場合、英国が転落の道をたどるかどうかは問題なのではない。その転落がどのようなもので、どれほど深刻かが問題なのだ。

 1月16日、英国は崖からの転落を回避しようとしている。写真は同国のメイ首相。ブリュッセルで昨年12月撮影(2017年 ロイター/Yves Herman)

それは断崖絶壁からの転落となりかねない。欧州司法裁判所に対する英国政府の明らかな敵対心や、貿易と人の移動における支配を取り戻すとの公約は、英国がもはや欧州経済領域(EEA)にもEUの関税同盟にも属さないことを示唆している。

したがって、EUに加盟する27カ国との無関税貿易も失うことになる。EU加盟国は韓国などと自由貿易協定を結んでいるため、英国は非関税障壁に直面することになるだろう。

もっとも厄介なのは、英国とEU間の新たな貿易協定をめぐる交渉は、離脱プロセスが完了するまで開始することさえできず、つまり英国は2019年になっても新たな自由貿易協定を結べていないだろうということだ。

昨年6月23日に実施されたEU離脱の是非を問う国民投票前の経済予測では、協定を結ばないという結末が最も経済的な打撃が大きいとみられていた。これは、英国がWTO(世界貿易機関)の関税に戻ることから、しばしば「WTOオプション」と呼ばれる。

会計監査大手プライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、そうなれば、英国の国内総生産(GDP)は2030年までに現在の動向より3.5%低下する可能性があると推定している。英財務省は7.5%下がると試算している。

これは大きな打撃だが、致命的ではない。PwCも認識しているように、ブレグジットが回避された場合ほどではなくとも、英国は今後も大きな富裕国であり続けることに変わりはない。どちらにせよ、現在このような話をするのはいささか抽象的すぎる。

さらに言えば、WTOの関税はそれほど高くはない。2015年にEUへの輸入品に課せられた平均関税率は5.1%、貿易加重平均では2.7%だった。英国民投票以降、英ポンドは貿易加重ベースで14%下落。一方、WTOによると、輸入農産物の47%、輸入非農産物の63%は無関税だった。対米輸出品の場合は、非農産物の73%が非課税だった。

WTOの条件は自動的に得られるわけではない。英国は「調整」と呼ばれるプロセスを踏むことが望ましい。そうすることで、複雑な交渉を必要最低限に抑えつつ、WTOでEUが持つ条件を引き継ぐことが可能となる。1つではなく2つの相手と取引することは、同プロセスが調整というよりも関税の「修正」であり、より長期に及ぶ交渉プロセスと混乱の拡大を招くと、WTOに加盟する第3国は主張するかもしれない。

だが、英GDPの80%を占め、2014年には100億ポンドの貿易黒字を計上したサービス産業ではあまり効果は得られない。これらを保護するためには、金融のような主要サービスにおいて、英国をEU加盟国と規制上「同等」に扱うことに欧州は賛成する必要がある。それが正しいことであっても、もしEUに加盟する他の27カ国が報復的な態度に出るなら、不正の余地が生まれる。

英国にとって、交渉における大きな決定的要因は2つ、複雑さと影響力だ。複雑さは、同時に行われる数々の交渉と既得権によって悪化している。スコットランドはEEAにとどまりたいと考えており、独立の是非を問う住民投票を求める声が再び高まる可能性がある。金融セクターは長期の移行期間を望んでおり、その間、独自に複雑な交渉が行われるかもしれない。また、一部のEU離脱派は、新しく関税を設定できる完全な自由を求めているが、それは離脱交渉をいっそう混乱させるだけだろう。

影響力については、英国は一見、不利な立場にあるように見える。英国の対EU輸出はGDPの12%を占めるが、EUの対英輸出は域内GDPのわずか3─4%にすぎない。

とはいえ、英国にまったく影響力がないわけではない。EUからの輸入総額2200億ポンドの3分の2は、ドイツ、フランス、スペイン、オランダ、アイルランドの5カ国で占められている。ポーランドのような、英国に続いてEUを離脱しそうな国が結局、EU資金の主な受益者であり、英国ではない。サービス産業においてEU単一市場に残れないことは英国にとって遺憾だろうが、そのような市場は完全とは言えない。

致命的な転落よりは、EUが協力するような可能性へと向かうべきだ。そうなれば、崖は対処可能なレベルにまで改善し、英国は国境管理と一部主権の保持によって国内の分断を和らげることができるだろう。英国はブレグジットから経済的に利益を得られることができると思い、事を推し進めてきた。英国にとっての最善の結果は、世界最大の貿易圏にとどまりながら、その改革に取り組むことだったに違いない。だが、たとえEUとの関係強化は望めなくても、離脱交渉が耐えられる内容にはできるだろう。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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