January 18, 2019 / 1:40 AM / a month ago

コラム:英ポンド、ブレグジット混乱でも上昇する理由

[ロンドン 16日 ロイター] - 英国政府と政治が今ほど混乱に陥ったことはないだろう。だが、欧州連合(EU)からの離脱を巡る混乱は、思ったほど通貨ポンドの大惨事を招かないかもしれない。

 1月16日、英国政府と政治が今ほど混乱に陥ったことはないだろう。だが、EUからの離脱を巡る混乱は、思ったほど通貨ポンドの大惨事を招かないかもしれない。写真は英ポンド紙幣。仏パリで2017年11月撮影(2019年 ロイター/ Benoit Tessier)

主要国の中央銀行は今年は大幅な利上げを避け、ユーロとドルはポンドのぜい弱性から利益を得ることに四苦八苦するだろう。

イングランド銀行(英中銀、BOE)も今年は利上げを行わず、来年8月までに0.25%ポイント引き上げるだけにとどまると金融市場は見込んでいる。向こう1年半でわずか1度の利上げであっても、楽観的な見方かもしれない。

15日に英下院で繰り広げられたドラマは見ものだった。メイ首相のEU離脱(ブレグジット)協定案は歴史的大差で否決され、その後まもなくして野党・労働党のコービン党首は内閣不信任案を提出した。

EU離脱の賛否を問う国民投票から2年半が経過し、離脱期限まで3カ月を切った今なお、英議会は合意から程遠く、国内の分断は深まるばかりだ。

16日発表されたスカイニュースの世論調査によると、国民の61%が英国は危機状態にあると答えている。当然、投資は控えられ、企業や消費者の信頼感も悪化。成長見通しも暗い。

約360億ポンド(約5兆円)の資産を運用するエルメス・インベストメント・マネジメントのセイカー・ヌセイベ最高経営責任者(CEO)は、「不確実な状況が今後も続き、明確な代替シナリオがないように思われるというのが悲しい現実だ」と、投資家の失望感を代弁した。

英国の政治的、経済的、そして金利見通しが、ポンドにとって明らかに良くないという見方は根強く存在する。

しかし、メイ首相の離脱案が否決された15日、ポンドは上昇した。英国貿易の4割超を担う相手国がユーロ圏であることを考えれば、より正確な指標とも言えるユーロに対して、ポンドは昨年11月以来の高値を更新し、翌16日も続伸した。

その背景にあるのは、政治的混乱と崖っぷちのブレグジットにより、3月29日の離脱期限が延期される、あるいは最終的により柔軟なブレグジットで英議会が合意する、という市場の憶測だ。議員の大半は「合意なき離脱」というハードブレグジットに反対している。

また、為替は単独で動いているわけではない。各国の経済成長や金融政策の引き締め観測も後退しており、本来なら他の主要通貨が享受できたであろう支援材料の一部が弱められている。

<ポンドのからくり>

では、ユーロはどうか。ドイツではリセッション(景気後退)がちらつき始めた。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は15日、最近の経済指標が予想よりも弱く、世界の不確実性も依然として高い中、「相当な」量の刺激が今なお必要だと述べた。

HSBCのエコノミストは今週、ECBの金融政策に関する見通しを修正。少なくとも2020年末までECBが利上げをしないと予想する。ユーロ圏無担保翌日物平均金利(EONIA)のフォワードレートも、ECBが2020年半ばまでに利上げする可能性は低いことを示している。

これは英短期市場が想定するシナリオよりもさらに弱い。ドイツ銀行と野村は現在、ユーロを売ってポンドを買うことを推奨している。

金利差という厳密な観点から言えば、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見通しが今年に入って修正される中、ドルに対するポンドの見通しはさらに明るいかもしれない。

昨年末に発表されたフォワードガイダンスによると、FRBは今年3回の利上げを予定していた。一方、利上げは1度きりだと市場は見込んでいた。だが、中国との貿易摩擦や金融情勢の悪化が成長見通しに影を落とし、FRB当局者が使う言葉もハト派寄りになっている。

米フェデラルファンド(FF)金利先物は、今年の利上げをもはや織り込んでいない。それどころか、利下げの可能性を考慮し始めている。わずか数カ月前には今年4回の利上げを予想していたゴールドマン・サックスのエコノミストは今、その回数を2回に減らしている。

つまり、金融市場はBOEの政策予想を改めて織り込みつつ、FRBとECBの見通しも再検討している、ということだ。この3行のどれもが利上げを回避する公算が一段と大きくなっているように見える。そうなれば、ブレグジットがいかに混乱しようとも、ポンドにとっては「救いの神」となる。

また、市場のポジションも、少なくとも短期的にはポンドの支援材料となる可能性がある。直近の米先物市場データ(米政府機関閉鎖のおかげで数週間前のものであることは確かだが)によると、ファンドや投機筋は大きなショートポジションを積み上げていた。これは、ポンド安の可能性に賭けていたことを意味する。

したがって、これ以上ポンドの売り持ちを増やす可能性は限定的と言える。過去数週間、ポンドは実際に上昇しており、こうしたファンドは選択を迫られている。市場の風向きが自らに有利な方向に変わると期待して損失を膨らますか、あるいは損切りするかだ。それはつまり、ポンドを買い戻すということだ。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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