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コラム:中銀はなぜ正直になれないか
November 17, 2017 / 8:17 AM / a month ago

コラム:中銀はなぜ正直になれないか

Swaha Pattanaik

 11月16日、正直こそが最良の政策だとしばしば言いはやされるが、中央銀行当局者にとっては一番採用しにくい政策かもしれない。写真はワシントンのG20会合前に記念撮影に臨むドラギECB総裁(左)とイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長(2017年 ロイター/Joshua Roberts)

[ロンドン 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 正直こそが最良の政策だとしばしば言いはやされるが、中央銀行当局者にとっては一番採用しにくい政策かもしれない。

イングランド銀行(英中央銀行、BOE)のチーフエコノミスト、アンディ・ホールデン氏は今週の会合で、中銀はもっとシンプルかつ誠実な表現で一般に語りかける必要があると訴えた。この提言は称賛に値するとはいえ、完全に実行するのは難しい。

明晰な言葉使いにすることの方が、達成のハードルは低い。中央銀行の世界は、意味不明で複雑な言い回しを楽しんでいたグリーンスパン元米連邦準備理事会(FRB)議長の時代からは随分とかけ離れた地点に達している。それでもまだ改善の余地は大きい。

ホールデン氏は、市民に直接語りかけるという新スタイルの最も優れた提唱者の1人で、平易な表現と、物語り風の言い回しを巧みに組み合わせる。今週、欧州中央銀行(ECB)が主催した会合でも、他の中銀当局者にそうした姿勢を勧めてみせた。

しかし正直さはより困難な課題だ。

確かに一般市民になら、金融政策担当者が自らの無知や過去の間違った判断を素直に認めれば、尊敬してもらえるかもしれない。ところが金融市場はそれほど寛大ではない。

もし中銀が生産ないし物価が想定通りに推移しない理由は分からないと打ち明けた場合、投資家やトレーダーは現行政策がどの程度の見識で遂行されているのか疑いを抱く公算の方が大きい。

また政策担当者が以前のしくじりを告白してしまえば、今の政策運営に間違いはないと市場を説き伏せるのに余計苦労するだろう。だからこそ、自分たちもしくはその前任者の失敗を積極的に認めようとする中銀当局者はほとんどいないと思われる。

 11月16日、正直こそが最良の政策だとしばしば言いはやされるが、中央銀行当局者にとっては一番採用しにくい政策かもしれない。写真はフランクフルトでの国際会議にに臨む中銀総裁ら。左からイエレン米FRB議長、ドラギECB総裁、カーニーBOE総裁と黒田日銀総裁(2017年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

ECBが2011年に行った利上げを考えてみよう。

当時はユーロ圏危機がなお非常に深刻で、結局は再利下げを迫られた。BOEのカーニー総裁が2013年に提示したガイダンスは、失業率と政策金利の関係をあまりにも単純化してしまい、途中で放棄された。にもかかわらずECBとBOEは、いずれも当初の決定が大失敗だったとの認識を示していない。

ホールデン氏は、過去の政策の失敗を認めることと中銀の信認維持は相反しないと主張する。

中銀当局者が、入手可能な情報が不完全な中で最善を尽くそうとしているのも明らかだし、すべての人間に間違いはある。ただし残念ながら、全能の神さながらのオーラに頼り、金融市場を意のままに動かそうとしてきた人々が、実は単なる人間でしたと公言するのは難しい。

●背景となるニュース

・BOEのチーフエコノミスト、アンディ・ホールデン氏は15日、中銀当局者は一般の人々に自分たちの行動をより分かりやすく説明するため、もっと単純な言葉を用いて、物語風な言い回しをするべきだと述べた。

・ホールデン氏は、過去の政策の失敗を認めることと、中銀の信認維持は相反しないとも主張した。

・同氏は、ECBが主催した中銀の対話を議論する会合で発言。この会合にはFRBのイエレン議長、日銀の黒田東彦総裁、ECBのドラギ総裁、BOEのカーニー総裁が参加した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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