July 2, 2018 / 2:33 AM / 5 months ago

コラム:日銀とスイス中銀の株保有、過剰なリスクテイクか

[27日 ロイター] - 中央銀行は、非常に保守的な機関と思われがちだ。車に例えるなら、安全なファミリー向けセダンだろう。だが最近は、コンバーチブルのスポーツカーで市場を疾走しているような中銀もある。

 6月27日、中央銀行は、非常に保守的な機関と思われがちだ。車に例えるなら、安全なファミリー向けセダンだろう。だが最近は、コンバーチブルのスポーツカーで市場を疾走しているような中銀もある。写真は黒田日銀総裁。都内の日銀本店で15日撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

近年、少なくとも2つの主要中銀が、リスキーな投資だと通常考えられている株式を大量購入している。

スイス国立銀行(SNB)の外貨準備に占める株式の比率は約20%と、10年前の約7%から上昇している。その半分以上は米国株だ。

また、日本銀行が国内株式市場の参加者になったと言うのは控えめな言い方だろう。日銀は現在、日本の上場投資信託(ETF)の75%近くを保有している。こちらも、ほんの数年前と比べ、保有率が急上昇している。

日本とスイスの中央銀行が最も積極的だが、他にも欧州中央銀行(ECB)や南アフリカ準備銀行などが同様に株式を購入している。

中央銀行がある企業の株式を大量に保有するという考えが奇妙に聞こえても、それは当然だろう。例えば、米国では、米連邦準備理事会(FRB)が株式を保有することは法律で禁止されている。代わりに、FRBは外貨準備を債券や他の政府保証証券に投資している。

明らかに一部の他国は異なるルールを適用しており、適度な株式保有は何年も中銀の金融政策の1つとなってきた。とはいえ、中銀が大量に株式を保有するという慣行はきわめて最近の現象である。

では、なぜ中銀は大量の株式を購入するようになったのだろうか。この前例のない傾向はどのようなリスクをはらんでいるのだろうか。

日本の場合、動機は明らかだ。経済成長を持続させることに何十年も苦しみ、日銀は、利下げや国債買い入れといった伝統的な刺激策をすでに使い果たしていた。安倍晋三首相と黒田東彦日銀総裁は、成長を刺激し、デフレ脱却を図ろうと苦しんでいる。

一方、スイス中銀は、アグレッシブな個人投資家のように行動しているように見える。カネが生まれる場所であるがゆえに株式を購入している。多くの米国人投資家の知らないうちに、アマゾンやアップル、フェイスブックやマイクロソフトといった米大手企業の大株主になっている。(概して、米国株の4分の1あまりは海外株主により保有されているが、スイス中銀の保有量は尋常ではない。)

多くの企業にとって、スイス中銀より大きな株主と言えば、バンガードやブラックロックのような機関投資家だけである。こうした投資家は多くの個人や機関のために株を運用するが、人工知能(AI)分析会社「Intelligentsia.ai」のデーブ・エドワーズ、ヘレン・エドワーズの両氏が指摘するように、スイス中銀は多くの点で、最大の個人ファンドだと言える。

株式を大量に保有する政策には確かにいくつか利点がある。不思議なことに、スイス中銀も株式(SWX: SNBN)として実際に取り引きされている。1株当たり1000スイスフラン(約11万円)近辺で何年も取り引きされた後、近年では8000スイスフランまで高騰している。これは、スイス中銀が大量に株式を購入し始めた時期とほぼ一致している。

日本の場合、2年ほどプラス成長を続けた後、2018年第1・四半期に国内総生産(GDP)の成長率はマイナスに転じた。(しかし日銀の株価は好調で、今年1月以降、約20%上昇している。)

とはいえ、株式の大量保有にリスクがないわけではない。

株式相場は急落することもある。中銀がパニック売りしていると思われれば、暴落を容易に招きかねない。急落すれば、中銀は通常、市場に流動性を供給しようとする。

だが世界はまだ、中銀が大株主である株式市場の大幅な下落を目にしていない。たとえそれが起きなくても、中銀が(自国通貨を強くしたり弱くしたりするなど)他の理由から株の保有量を減らすことにした場合、株価に影響を及ぼす可能性がある。

さらに言えば、中銀が事実上コンピューターのキー操作で通貨を発行できることを考慮すれば、インスタントマネーを企業株式に変換することによってインフレを招く可能性があるとみる向きもある。(日本の場合、インフレ率の上昇はまさに目標なのかもしれないが。)

また、中銀による株式保有はコーポレートガバナンス(企業統治)を複雑にする。ある企業の株式を相当数保有する中央銀行は、少なくとも理論上、その企業の経営にある程度の責任を負うことになる。

しかし、民間企業が部分的にでも中銀から指図を受けるというのは、利害の対立をはらんでおり、過去数十年にわたる、市場と国家機関との関係に対する大方の先進国の見方に反するものだ。それに比べて、責任のない株保有という選択肢はとても魅力的とは言えない。

スイスと日本が追求している株式買い入れは、差し当たり、どちらの国でも火急の政治問題にはなっていないようだ。だが、永遠に上昇し続ける株式相場など存在しない。株の下落によって、中銀が保有するポートフォリオを清算せざるを得なくなり、計り知れない結果を招くという、厄介な状況に陥る可能性がある。

 6月27日、中央銀行は、非常に保守的な機関と思われがちだ。車に例えるなら、安全なファミリー向けセダンだろう。だが最近は、コンバーチブルのスポーツカーで市場を疾走しているような中銀もある。写真は、スイス国立銀行。ベルンで5月撮影(2018年 ロイター/Denis Balibouse)

*筆者は米ビジネス誌「インク」編集長。近著に「One Nation Under Gold: How One Precious Metal Has Dominated The American Imagination For Decades」がある。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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