January 14, 2018 / 5:04 AM / 7 days ago

コラム:金融引き締めでも上がらない実質金利、何を意味するか

Jamie McGeever

[ロンドン 9日 ロイター] - 米国と英国は利上げ局面にあり、欧州中央銀行(ECB)は資産買い入れの減額に乗り出しつつある。日銀でさえ、将来どこかの時点で緩和を縮小することを示唆している。

こうした環境を背景に、今年は世界的に金融政策が金融危機以降で最も引き締め的になるだろう。

だが物価調整後の実質借り入れコストは歴史的にみてなお低く、恐らく危険なほどの低水準にある。先進国の実質金利は2016年10月からマイナスで推移しており、しばらく同様の状況が続く見通しだ。

これは投資家の耳には心地よく響く。実質ベースの短期金利や債券利回りがマイナスであることは、幅広い金融環境を緩和的に保ち、資産価格を押し上げる上で大きな役割を持っているからにほかならない。

ゴールドマン・サックスによると、米国の金融環境は、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを開始した2015年12月当時よりも今の方が緩和的になっている。

FRBが過去2年間で5回利上げしたにもかかわらず、米国の実質金利は引き続きマイナス圏にある。物価指標として何を用いるかにもよるが、実質金利は最も低くてマイナス0.5%と推測される。

一般的な認識と異なり、G4の中央銀行が受け持つ国・地域では日本の実質金利が最も高い。英国の10年国債の実質利回りは、過去6年の最低圏付近にある。

借り入れコストの実質マイナス化は、既に活況を呈している金融市場をさらに後押しし、債券相場の下値を限定的にするとともに、社債利回りスプレッドのタイト化を維持し、株価を連日の高値更新へと導いている。

それでも国際決済銀行(BIS)によると、実質利回りと比較した株価は「特に割高」なわけではない。金融危機以後に実質利回りが下がり続けたため、S&P総合500種の2.5%近辺という配当利回りでもまだ投資家には魅力が残っている。

為替レートも、名目ではなく実質ベースの金利や利回りを通して見るべきだ。そうすれば日銀が大規模緩和を続行しているのになぜ円が底堅いのか、あるいは英国が利上げ局面に入ってもどうしてポンドは依然として2016年の国民投票以降で10%強下がった地点にあるのか理解する上で役立つ。

<資産価格上昇>

今この局面で実質金利がマイナスであることの問題ははっきりしている。世界経済と金融市場が沸きかえっているという環境は、果たしてマイナスの実質金利を正当化するのだろうか。

資産インフレは至る所で出現している一方、消費者物価の大幅な上昇はほとんど目にしない。だからこそ主要中銀は、引き締めを非常にゆっくりと進めることに違和感を覚えていない。

世界経済が拡大中といっても、2007─09年に受けた痛手はまだ深い部分に存在し、政策担当者は明らかに、利上げを段階的に急がず進める傾向を持っている。

慎重になるのも無理はないし、世界的な債務の急増もこれに輪をかけている。国際金融協会(IIF)の集計では、世界の債務総額は230兆ドルを超え、金融危機前を上回って過去最高水準に達した。

債務増加によって、消費者は支出ペースと生活水準を落とさないため実質借り入れコストの低下が必要になっている。金利が上昇すれば、高水準の債務を維持できなくなる恐れがある。

投資家にとっては、たまごが先かにわとりが先かという話になる。彼らは、金利上昇と市場への「介入」減少を意味する金融政策の「正常化」を強く求めながら、これまでの大盤振る舞い的な金融緩和が直接的にもたらした資産価格上昇の恩恵に浴している。

しかし実際には、潮目が変わって世界的に引き締めが進行しつつあるのは明らかで、特に力強い経済成長が続けば、実質金利は今後ある程度上がるはずだ。とはいえ、とりわけユーロ圏と英国では実質金利が大きくプラスに浮上すると予想するのは難しい。

この状況が変わらないとすれば借金は増え続け、それを清算しなければならない時期は刻々と近づくだろう。だとしても投資家が「総決算」はまだ遠い先だと信じている限り、世界的な資産価格上昇は終わらないかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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