March 12, 2018 / 12:47 AM / 3 months ago

コラム:中国「債務の長城」、専門家が鋭く分析

Edward Chancellor

 3月9日、中国経済は、ずっと前から破滅すると言われながらその兆しは見えない。このため最近では悲観論の代わりに、中国政府が経済をうまく管理しているという肯定的な見方が台頭してきた。吉林省で2015年2月撮影(2018年 ロイター)

[ロンドン 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国経済は、ずっと前から破滅すると言われながらその兆しは見えない。このため最近では悲観論の代わりに、中国政府が経済をうまく管理しているという肯定的な見方が台頭してきた。

それに基づけば、政府は国家と市場それぞれの力をバランス良く機能させる地点を見出し、ビッグデータや人工知能(AI)といった新技術を活用する上でも最適な態勢を築いている。政治的に一つにはなれず、経済的には硬直化している西側諸国は、ひたすらうらやましがるしかないのだという。

しかし中国語を話せる金融ジャーナリストとして長年同国の報道に携わってきたディニー・マクマホン氏は、こうした中国政府の手腕を高く評価する意見にはくみしない。同氏によれば、中国は長期にわたって景気刺激的な政策を続けた結果、不良債権が積み上がり、経済に巨大な不均衡が生み出された。

これは初めて提起された見方ではないが、中国が対外的に公表している裏にある事実をチェックするには、もってこいの方法だ。中国が推進してきた経済モデルの矛盾や脆弱性に言及してきた数ある書籍の中でも、近く出版されるマクマホン氏の著書「中国の債務の長城(China’s Great Wall of Debt)」は白眉だといって良い。中国が抱える問題の細部にまで正しく目を向け、自身の主張を展開するための独自のストーリーも用意している。

同書によると、2008年の世界金融危機以降、中国の経済成長は輸出への依存度が減り、国内投資の比率が増えている。そして投資のほとんどが建設に向けられ、国内総生産(GDP)に占める割合は直接部分だけで約20%に達し、間接的な項目を含めるともっと高くなる。非常に長い建設ブームがもたらしたのは多数のゴースト都市(マクマホン氏の集計では50カ所)で、空き部屋の集合住宅だらけになった。

不動産は供給増加とともに価格も高騰し、多くの労働者には高過ぎて手が出せない市場となり、「住宅ローンの奴隷」や「蟻部族(都市周辺の低価格住宅に居住する人々)」を生み出した。深センなど一部の過熱市場では、地価が上物物件の価値を超える事態になった。

中国経済が建設によって勢い付いているとすれば、クレーンやブルドーザーを動かし続けている要素は誰の目にも分かる。政府が08年終盤に大規模経済対策を発表して以来、誰もが競って借金をする状況が続いている。08年末からの債務の増加額は中国GDPのおよそ100%に上り、米国が08年までの10年に記録した規模の2倍を超えている。数年前には、驚くばかりの中国の債務の伸びを見て多くの人々は警戒感を高めた。しかしその後危機が発生したように見えないため、大半の中国専門家はもはや債務が増えている事態に慣れきってしまっている。

ただ勝手に安心するのは正しくない。中国は債務増加ペースが異例なほど急速というだけでなく、今は債務水準も国際基準に照らすと高い。特に企業借り入れはそうだ。

金融システム自体も不安定化してきた。かつてなら中国の預金者は、ほぼ強制的に国有銀行にお金を預けさせられていた。ところが最近では、理財商品や信託ローン、オンライン個人金融などさまざまな分野から成るシャドーバンキング(影の銀行)が発達している。

それでも金融システムが何とか崩れずに踏ん張っているのは、当局がデフォルト(債務不履行)を隠ぺいする手段を見つけているからだ。銀行は法的責任がなくても理財商品の損失カバーに乗り出し、政府は打撃を受けた企業の救済者を呼び集める。

こうした対応策をマクマホン氏に正当化したある政府高官は、不良債権を正当に認識すれば銀行が与信を圧縮し、企業破綻や失業につながる以上、何も良いことなどないのだと断言する。政府内では、いかなる犠牲を払っても安定を維持することこそが鉄則となっている。

しかしマクマホン氏が指摘するようにそれは代償を伴う。政府が無責任な融資がもたらす結果から国民を守ろうとすれば、いきおい新たな不良債権が生じる。その結果は経済が債務まみれになるばかりか、ゾンビ企業が跳梁跋扈することになる。

セメントから造船まで多くの産業はそれぞれ過剰設備に苦しみ、産出価格は低下の一途。世界生産の半分強を占める中国の鉄鋼業は「キャベツより安い鉄鋼製品」を生産するありさまだ。

地方政府は、税収をもたらしてくれる産業に必要以上の投資を促してきた。地方はGDPの目標達成も迫られている。だから時折、GDP統計は単純に水増しされる。マクマホン氏は「村から町、町から郡という具合に、国務院にまで水増しが進んでいく」と描写する。最終的にはすべての省のGDPを合計すると、国家のGDPより高い成長率になってしまう。

政府が常に経済に介入し、金融データにも信頼が置けない以上、資金配分は利益によって決まらない。また中国の起業家たちは社会的に高い地位を得られない。マクマホン氏が引用している、ある小規模ホテルチェーン経営者が李克強首相に宛てた公開書簡には「政府当局者は嫡出子、国有企業は愛人の子供、民間企業は売春婦の子」と記され、伝統的に商業従事者を社会的最下層とみなしてきた中国の実情を物語っている。

マクマホン氏は、中国がいつ現実に目を向けるか、あるいは今後どうなるかは予想していない。それでも著書からは、いかに不安定な事態になっているかを理解することができる。

中国政府は、短期の資金を調達して大型の海外買収を行っていた民間大手企業の安邦保険を管理下に置いた。習近平国家主席は、不動産投機と影の銀行の抑制を目指している。そして国内の物価上昇率は加速しつつある。

こうした中で中国政府は遅かれ早かれ、もはや積み上がった債務問題がもたらすほころびを隠し通せないと気付く。

もしかしたら、マクマホン氏の賢明な警告は非常に良いタイミングであったことが後で判明するかもしれない。

●背景となるニュース

*ディニー・マクマホン氏著「中国の債務の長城(China’s Great Wall of Debt)」は13日に出版される。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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