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コラム:中国軍は南シナ海で米軍を出し抜けるか
2017年3月3日 / 02:10 / 8ヶ月後

コラム:中国軍は南シナ海で米軍を出し抜けるか

[1日 ロイター] - 米空母カール・ビンソンは、先週ほぼずっと南シナ海で監視活動を行っていた。これはまさに、米国の影響力と、米海軍の優れた世界的到達能力を示すエピソードにほかならない。

 3月1日、アジアにおける米国のアプローチが常に、中国の裏庭で空母を航行させることに重点を置いている一方、中国は仮想敵国に対して戦略的バランスを崩すためにできることを何でもやっている。写真手前は中国初の空母「遼寧」。南シナ海で昨年12月撮影。提供写真(2017年 ロイター/China Stringer Network)

その狙いは、同盟国を安心させるだけではなく、今回の場合は、仮想敵国にメッセージを送ることにある。

しかし米国がそのような活動を、抵抗を受けずにいつまで続けられるかは、ますます疑わしくなっている。

10年余りで、中国海軍が米国よりも多くの艦船を保有する可能性を一部の専門家は予想している。中国の軍備増強は、南シナ海の領有権問題で優位に立ち、米国に対抗する戦略の一環である。

米国が世界で軍事的優位を保持することは、国防費を約9%、540億ドル(約6兆1700億円)増やすというトランプ大統領の計画の中核だ。しかし、米国がアジア地域で軍事的優位を持続させるには、それだけでは十分ではないだろう。

中国の国防費の伸びは昨年やや減速したものの、過去20年にわたり、ほぼ毎年のように2ケタ増を繰り返してきた。さらに重要なのは、米国が効果的な対応が全くできないようなさまざまな戦術を導入していることだ。

アジアにおける米国のアプローチが常に、中国の裏庭で空母を航行させることに重点を置いている一方、中国は仮想敵国に対して戦略的バランスを崩すためにできることを何でもやっている。新たな兵器システムや海軍における相当な規模の従来型の戦力拡大といったことだけでなく、海軍基地や水上発電所、人工島の建設を含む多くの戦術から成る戦略だ。

アジアで衝突が起きるのは仮定の話ではなく時間の問題だと、一部の現旧米軍当局者は考えている。同様にあり得る話と思えるのは、実際に戦争の引き金となる何かが起きる一歩手前の状態で、概して血は流れないだろうが、数十年に及ぶ対立状態に陥る可能性だ。

それこそ中国の計画なのだろう。

それは中国が自国の一部とみなす台湾の海域周辺でミサイル発射試験や軍事演習を実施した1995年以降、ますます熱心に同国が取り組むゲームである。当時のクリントン大統領は、台湾海峡を監視するため空母2隻を派遣した。それは、中国が負け戦だと分っている戦争を始めることなしには阻止できない動きだった。

以来、中国は周辺地域から米軍、とりわけ空母を遠ざけるための能力獲得に専念している。多くの専門家は、米国の戦略立案者が再び中国の沿岸地域に空母を接近させるリスクを負いたくないと考えるに十分な、潜水艦やミサイルや戦闘機といった兵器技術を中国が手にしているとみている。

中国は、至近距離の艦船を破壊するための兵器のみならず、台湾に照準を定めた弾道ミサイル数千発を保有しているとみられる。一部の専門家は、中国が今後20年のうちに台湾を支配下に収めようとする可能性を指摘している。

中国の次なる目的は、豊富なエネルギー資源が眠っているかもしれない、フィリピンやベトナムやマレーシアが領有権を主張する多くの環礁や島にまで自国の軍事力を拡大することかもしれない。

南シナ海における中国の最も尊大な領有権主張は昨年、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所で却下された。だが中国は、特にフィリピンと領有権を争うスカボロー礁周辺での建設拡大を続行した。2012年に中国軍が足を踏み入れてからは、そこに軍事施設を築き上げている。

このような基地を根拠に、中国軍は自国の領土だとして空域や海域を主張し、他国の航空機や船舶に登録を求めている。米国やオーストラリアなど他国の軍は、比較的罰せられず、国際的な正当性もほとんどないこうしたルールを無視している。

しかし、中国を止める戦略を誰も持っていない。トランプ政権のティラーソン国務長官は指名承認公聴会で、米軍が中国に南シナ海にアクセスさせないようにする可能性を示唆して驚かせた。そうなれば戦争が始まることはほぼ間違いなく、これに関してはその後言及されてはいない。

南シナ海で起きていることは、多くの点で、2014年のロシアによるクリミア併合でプーチン大統領が成し遂げたことと似ているが、より漸進的である。クリミア併合では、ウクライナや同盟国が対処する前に、軍人ではない武装した親ロシア派を使って現実を変えてしまった。

ウクライナでは、今でもロシアは公式に認めないが、結局は公然と軍事力を使って東部のロシア語を話す地域を占拠する気のあったことが明らかとなった。

問題は、南シナ海で中国も同じようなことを考えているかどうかだ。そして、もしそうなら何が起きるか、ということだ。

中国は、かつて米国が自国に対して使用したハイレベルかつハイバリューの軍事資産を獲得することに一段と力を入れている。ソ連製の中国初の空母は、主に訓練での使用にとどまってはいるものの、かつてないほど活動している。昨年12月、同空母は中国の沿岸水域外で初の長距離パトロールを実施したとみられる。中国はまた、初となる国産空母を建造しており、報道によると、さらにもう1隻の建造も進めているという。

これら空母は中国の国際的なイメージにとって重要である。ロシアが昨年後半にシリアで空爆を実施するために唯一の空母を派遣したことで集めた注目を目の当たりにしたからだ。中国は、ロシアのように、弾道ミサイル搭載の潜水艦の建造を増やしている。これは、中国のいかなる仮想敵国にとっても、全面戦争によって大激変をもたらすリスクに対する明らかな警鐘となっている。

いくつかの予測データによると、向こう10年から15年で、中国は高性能のコルベット艦や巡視船、他の艦艇のみならず、最大4隻の空母や潜水艦100隻を含む、計500隻の艦隊を持つ可能性がある。一方、トランプ大統領は米海軍の艦船を350隻に増やし、より強力な艦船の割合を高め、全世界に展開させるという計画だ。

米空母カール・ビンソンは、南シナ海の領有権が争われている海域を通過することで、米国の軍事力を改めて誇示した。しかし実際に戦争が起きた場合、そのように巨大な艦船が撃沈されるまでどれくらい生き残れるかは全く分からない。

どちらにせよ、カール・ビンソンは来週、同地域を離れる。だが、米国の他の戦力は残されたままだ。そして中国も依然として軍備増強を進めるだろう。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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