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コラム:中国の習近平氏「独裁」阻む3つの壁
April 21, 2015 / 8:38 AM / 3 years ago

コラム:中国の習近平氏「独裁」阻む3つの壁

William Johnson

 4月20日、中国の習近平国家主席(写真)が独裁的指導者になり得ないのには、3つの理由がある。北京で3月撮影(2015年 ロイター/Jason Lee)

[20日 ロイター] - 西側の中国ウォッチャーは当初、習近平国家主席は自身の権力基盤を固めるためだけに強固な共産主義者のふりをしている一種の「隠れリベラル」であり、中国を自由民主主義に導く可能性がある指導者だという望みを持っていた。

しかし、そうした希望的観測を捨て去る代わりに、最近では権力を拡大させつつある独裁的指導者との見方を強めている。

実際に過去2年間では、西側メディアは習主席を「権威主義者」もしくは「新独裁主義者」と描写している。ニューヨーカー誌は「毛沢東以来で最も独裁的な中国の指導者」と表現。ニューズウィーク誌の寄稿者も「習氏は中国を民主主義から引き離している」と記述した。

しかし、こうした見方は間違っている。

中国社会では現在、急速な都市化や石炭火力発電所の閉鎖、預金口座の保護など大きな変化が進行中だが、それらは習氏の強引なトップダウンによって起きているわけではない。習氏は、多くの西側ウォッチャーが描写するような独裁主義者ではないばかりか、実際には、権力基盤を揺さぶり続ける一連の課題に直面しているのだ。

習氏が独裁的指導者になり得ないのには、3つの理由がある。

第1に、中国経済の構造的欠陥が足かせとなっている。中国の競争力を維持するためにはまず、急速な高齢化や出稼ぎ労働者の社会保障、深刻な環境汚染といった問題に取り組まなくてはならない。農村部から都市部に出てくる労働者は、出稼ぎ先では教育や社会保障を受けられないという問題があったが、それを解消するために習氏は戸籍登録制度を改革した。また、労働力を再活性化させるために「一人っ子政策」の緩和を決め、公害低減でも特に北京では大胆な措置を講じた。しかし、中国経済を支えるにはまださまざまな問題が残っており、引き続き迅速な対応が求められている。

第2に、習氏の政治的地位は、見掛けほど強力ではない。確かに習氏は2012年に共産党最高指導者の地位に就いてから多くの要職を手にし、華国鋒氏以来で初めて、共産党と国務院と中央軍事委員会を同時に率いる立場となった。共産党の最高意思決定機関である中央政治局常務委員会でも権力基盤を固め、同委員会7人の出身派閥を見ると、「共青団」の李克強首相を除く6人が、習氏と同じ「太子党」に属している。一見、習氏は何でも望み通りに動かせる立場にいるように見える。

しかし、実際にはそうではない。政治局常務委員会の太子党メンバーのうち3人は、いまだに大きな影響力を持つ江沢民元国家主席の息がかかった人物だ。江氏と習氏は同じ太子党に属しているとはいえ、利益が必ずしも一致するわけではない。例えば、江氏の側近だった周永康・前政治局常務委員の汚職をめぐる捜査では、習氏よりも江氏が幅をきかせた。周氏の逮捕は、江氏が同意を与えない限り捜査当局も踏み切れなかったという。

さらに言えば、政治局常務委員会の新たなメンバー構成は、派閥に何の関係もない可能性がある。新しい5人は年齢制限に合致するから選ばれただけかもしれない。年功序列と定年制度により、これら5人が政権トップの座に就くことはないだろう。5人は習政権2期目に定年退職を迎えるが、その時に常務委員の派閥バランスは変わる可能性がある。中央政治局の多数派は今も共青団だからだ。内紛が起きれば習氏の影響力に影響するはずだ。

共産党指導部内での権謀術数に加え、習氏は地方や省レベルの幹部の意欲を保つことにも苦労している。習氏が推進する汚職撲滅は、党内既得権益層の特権を奪うことになるため、これは一際難しい仕事だ。筆者は実際、それがどれほど困難な作業になるか、自分の目でも見てきた。

筆者は最近、遼寧省で共産党の中級幹部を務める大連の友人を訪ねた。迎えに来てくれた友人の車は、幹部の象徴だった黒の最新アウディではなく、国産の第一汽車のセダンだった。豪華に歓迎できないことを何度も謝罪され、われわれは質素な夕食をともにした。食事代の請求書を最初に手に取ったのは筆者の方だった。話題の中心は友人の転職先探しについてだった。友人は民間の、できれば外資系企業を望んでいた。特権がなくなれば、党の仕事で家族を養っていけるか心配なのだという。こうした感情は共産党内で広がっており、習氏は省やそれ以下の地方レベルで生産性とコントロールを失うリスクがある。

汚職はビジネス界にも広がっている。習氏は、国有企業に対するトップダウン型の管理を不快に思う省政府と戦わなくてはならなかった。

国有企業の監督は一筋縄ではいかない。なぜなら、国有企業は党中央のみならず、省政府や市政府、特別行政区委員会によって所有されていることもあり、非効率と汚職の温床となっているからだ。幽霊社員も多く、省所有企業は国が所有する企業と取り組みが重複し、市場シェアを奪い合っていることもある。

中国の社会構造や経済構造のシステム的な欠陥を考慮すれば、習氏が国家を動かしているのと同じぐらい、習氏が社会に動かされていることは明らかだ。もし習氏が党のルールと社会の安定を保ちたいなら、これらの問題すべてに対処しなくてはならない。習氏の前任者は、こうした問題の大部分を先送りにした。習氏にその選択肢はないのだ。

*筆者は、元米空軍将校で外交にも携わっていた。米空軍士官学校では哲学教授を5年間務め、2009─2011年には米太平洋特殊作戦軍(SOCPAC)の上級政務官だった。軍を退役後は、米海軍大学院で中国政策に関する助言も行っている。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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