March 4, 2018 / 12:35 AM / 7 months ago

コラム:培養される「クリーンミート」は地球を救うか

[26日 ロイター] - 今年のアカデミー賞で作品賞と主演男優賞を含む6部門でノミネートされている映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」は、第2次世界大戦の転換期に歴史を変える決断に直面する当時のチャーチル英首相の物語を描き、観客を魅了している。

 2月26日、近年、いわゆる「クリーンミート(人工培養肉)」はSFの世界から飛び出し、科学的事実となっている。写真は、2013年に発表された培養肉の初の牛肉パテで作ったハンバーガー。ロンドンで代表撮影(2018年 ロイター)

実のところ、チャーチルはすでに、もっと根本的に人類の未来について思いをめぐらせていた。

1931年に発表したエッセー「Fifty Years Hence(50年後)」の中で、チャーチルは1980年代までに世界がどうなっているか予想している。中でも驚きなのが、畜産と決別した食肉生産の方法を人類が考え出す、というものだ。

「胸肉や手羽肉を食べるためにニワトリ1羽を飼育するという不合理から自由になっているだろう」とチャーチルは予言。「適切な培地下で、それら部位を別々に育てる」というのだ。そうすることにより、家畜飼料用の作物栽培に使われていた土地を開放できるとし、「牧草地や畑は公園や庭園となるだろう」と結論づけている。

チャーチルの予言は数十年外れたが、われわれは現在、まさに彼が予見したことを実現できる能力を備えている。つまりそれは、動物の体外で本物の肉を造る能力である。

近年、いわゆる「クリーンミート(人工培養肉)」はSFの世界から飛び出し、科学的事実となっている。

この言葉は「クリーンエネルギー」と人工肉の安全性に賛同を示すものとして、非営利団体グッド・フード・インスティテュートが世に広めた。米グーグルの共同創業者セルゲイ・ブリン氏が研究開発資金を提供したおかげもあり、初の「クリーンバーガー」が2013年に発表された。2014年以降、筆者は幸運なことに、人工培養された牛肉、鴨肉、魚、チョリソー、レバー、ヨーグルトを食べている。これらは全て、動物抜きで造られたものだ。(当然だろうが、クリーンミートはまさに肉そのものなので、肉のような味がする。)

クリーンミートに関心があるのは筆者だけではない。

こうした製品は、従来の食肉加工業者から大いに注目を集め始めている。米アグリビジネス大手のタイソンやカーギルは、カリフォルニア州サンレアンドロにあるクリーンミートのスタートアップ企業メンフィス・ミーツに投資している。「われわれにとって脅威ではなく、チャンスだ」と、カーギルでグロースベンチャー企業を担当するソニア・マッカラム・ロバーツ社長は最近、フォーチュン誌でこう述べている。

誤解のないように言えば、チャーチルが思い描いたクリーンミートと、メンフィス・ミーツのような企業が生産し始めているクリーンミートは、単なる肉の代用品ではない。生きた意識ある動物を使わずに本物の動物の筋肉組織から培養されている。食用としてニワトリや豚を飼育し、その肉を販売する代わりに、クリーンミートの生産者はごく小さな動物の細胞を取り出し、体内と同じように作用するよう培地に置き、われわれがこんにち食べているような筋肉組織に成長するよう栄養を与えて培養する。

 2月26日、近年、いわゆる「クリーンミート(人工培養肉)」はSFの世界から飛び出し、科学的事実となっている。写真は、2013年に発表された培養肉の初の牛肉パテ。ロンドンで代表撮影(2018年 ロイター)

ではなぜ、チャーチルが予言したように、われわれは動物抜きで本物の肉を生産したいのだろうか。

第一に、家畜の飼育にはばく大な資源を必要とするからだ。地元のスーパーマーケットの鶏肉コーナーを歩いていると想像してみてほしい。ニワトリ1羽当たり、1ガロン容器入りの水が1000本以上その傍らにあるとしよう。それから、その容器1つ1つのふたを開け、水を全部注ぎ出す。つまり、棚じゅうのニワトリを飼育するにはそれだけの水が必要だということだ。要するに、シャワーを半年浴びないよりも、1家族がニワトリ1羽を丸ごと使った夕飯を取りやめた方が水を節約できる、ということだ。

必要な分だけ肉を生産すれば、動物1体を飼育するのに必要な資源のすべてを必要とはしない。オックスフォード大学の研究者ハンナ・トゥオミスト氏が2011年に発表した研究は、クリーンミートの生産では通常の牛肉生産と比べて、土地を99%、水は96%、温室効果ガスも96%削減することが可能だと試算している。

クリーンミートの商業化を可能とするテクノロジーは依然開発中であるため、こうした早期研究の不正確さは認めざるを得ない。しかしながら、人工培養肉を大量生産しても、従来の畜産生産よりはるかに資源効率性が高くなるだろうと大半の専門家は考えている。

チャーチルが描いていたような広く流通した人工培養肉はまだ実現していない。だが、それも数十年ではなく、数年のうちに可能となるだろう。その一方で、植物性の人工肉はすでに大規模畜産からわれわれを遠ざけてくれる一助となっている。

チャーチルが予想した動物抜きで生産される肉は「不自然」だと心配する人たちは、現代の食肉生産がいかに持続不可能で、残酷で、不自然であるかを思い出してほしい。クリーンミートは恐らく、放牧されて育った動物の肉と市場でシェア争いをするようにはならないだろう。

むしろ、クリーンミート支持者は、現在われわれが口にする肉の大半を提供する家畜に取って代わることを目指している。排せつ物にまみれて暮らし、一度も屋外に出たことがなく、大量の抗生物質や他の薬を飲まされている動物たちだ。われわれが少し立ち止まってこの厳しい現実について真剣に考えるなら、クリーンミートの可能性は明白なように思える。

チャーチルは首相に就任したとき、彼の皿の上にはやるべきことが山ほどあった。だが、われわれにとって唯一の惑星である地球への害を減らす方法を模索する現在、われわれの皿の中身に関する彼の予想はいっそう重みを増しているかもしれない。クリーンミートがその解決策の1つであるというこが証明されるのも、そう遠くはないだろう。

*筆者は「Clean Meat: How Growing Meat Without Animals Will Revolutionize Dinner and the World」の著者。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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 2月26日、近年、いわゆる「クリーンミート(人工培養肉)」はSFの世界から飛び出し、科学的事実となっている。写真は売られる鶏肉。ペルーのリマで昨年7月撮影(2018年 ロイター/Mariana Bazo)

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