May 29, 2015 / 5:41 AM / 4 years ago

コラム:CPIと消費「同時拡大」のカギ握る賃金 

[東京 29日 ロイター] - 4月全国消費者物価指数(CPI、総合)は、前年比プラス0.6%と半年ぶりの高さとなった。一方、実質消費支出は13カ月連続で前年比マイナスだ。もしかして、物価が上がると消費が抑制されるメカニズムが働いているのかどうか。カギは賃金動向が握っているが、前年比で大幅増にはなりそうもない。

 5月29日、物価上昇が消費を抑制しているなら、「期待」を重視するアベノミクスの理想とは違った方向に動いていることになる。都内で28日撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

もし、物価上昇が消費を抑制しているなら、「期待」を重視するアベノミクスの理想とは違った方向に動いていることになる。

<予想より強めのCPI>

日銀が注目しているコアCPI(除く生鮮)は同0.3%だった。一部のエコノミストはマイナス0.1%になると見ていたので、この数字は足元での物価が想定よりも強めに動いていることを示している。

中でも生鮮を除く食料が同1.5%と上昇したことが目立つ。円安などで輸入食材の価格が上がり、スーパーなどの店頭でも食料品の値上がりが相次いでいたが、いよいよ統計の数字に反映されてきたということだろう。

足元ではドル/円JPY=EBSが一時124円台に上昇し、この基調が継続するなら、夏場にかけてさらに輸入食品の値上げが出てくる可能性もある。

また、消費者の物価観の実態に近いと言われている4月の持家帰属家賃を除く総合は同0.8%となり、消費者のマインドは「物価が上がってきた」という受け止め方に変化している公算が大きい。

その一方、4月全世帯の実質消費支出は前年比マイナス1.3%と13カ月連続で減少した。季節調整済み全世帯消費支出は、前月比マイナス5.5%と大きく落ち込んだ。

<「物価上がると消費に冷水」の仮説>

エコノミストの一部は、物価が上がり出すと個人消費にブレーキがかかり、物価の上昇が足踏みすると消費が持ち直すという関係があるとの推論を明らかにしている。確かに原油下落の影響でコアCPIの上昇率がめっきり低下した昨年12月以降、各種の消費データには持ち直しを示す結果が出始めていた。

この推論に説得力をもたらしている1つの要素として、年金生活者の増加を指摘する声もある。2013年度の公的年金受給者は約3950万人に達し、2015年3月時点における雇用者数の5580万人の70%に達している。

大企業を中心にしたベースアップの恩恵を年金受給者は受けない。物価が上がると、日用品を中心に節約志向が鮮明となり、消費伸び悩みの中心的な存在となるという見立てだ。

こうした節約志向は、アベノミクスが想定していた経済活動の姿と明らかな食い違いを見せることになる。アベノミクスが主眼に置いているのは、デフレからの脱却による消費の盛り上がりだ。

目先、物価が下がると思えば、消費を先送りすることにメリットを感じる消費者が多くなるが、物価が上がると見れば、反対に値上がりする前に買おうという意欲が高まって、消費動向にプラスに働くと想定していた。

<賃金は目立って上がっているのか>

だが、2014年4月の消費増税の影響が大きかったとは言え、足元で起きている自動車などの耐久消費財の販売不振は、この先の値上げを見込んだ買い意欲の盛り上がりとは「別世界」の動きだ。

やはり、消費が盛り上がるかどうかは、賃上げなどによる所得の行方にかかっているのではないか。

ベースアップは今年の春闘でかなりの注目を集めたが、連合の調べでは、前年度のプラス0.4%から0.6%と、たった0.2%ポイントしか上昇していない。残業代の増加や非正規雇用の雇い入れ増などを含め、雇用者全体に支払われる賃金全体がどの程度の増加を見せるのか。

そこが、今後の消費動向の明暗を分けることになるだろう。 まずは6月2日に発表される4月の毎月勤労統計で、賃金上昇がどの程度になるのか。フランス料理のコースで最も先に出てくるオードブルの皿に期待感を膨らませるような「驚き」があれば、そこが物価上昇の基調が本物であると多くの人が認識するきっかけになるだろう。

ただ、「ネットに出ているコメントとは違う料理の実態」と思うような結果なら、物価上昇や景気拡大への期待は、急速にしぼむ可能性がある。

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