June 24, 2020 / 12:12 AM / a month ago

コラム:感染第2波が影落とす投資戦略、今年後半は強気か弱気か=青木大樹氏

[東京 24日] - 新型コロナウイルスの猛威に苛まれてきたグローバルの株式市場は、ショックが広がる前のピーク時の水準をすでに70%程度まで回復している。各地で経済の再稼働が広がる中、景気の底が確認され、一段の回復期待や各国政府・中央銀行による緩和刺激策の大きな効果が株式市場の上昇機運を支えている。

 6月24日、新型コロナウイルスの猛威に苛まれてきたグローバルの株式市場は、ショックが広がる前のピーク時の水準をすでに70%程度まで回復している。写真は2011年1月、ポーランドのワルシャワで撮影(2020年 ロイター/Kacper Pempel)

一方、ここにきて中国の一部や米国、新興国では感染拡大「第2波」の懸念も出始めた。また、香港統制を強めようという中国の動きを受けた米中関係の悪化や今秋の米国大統領選挙に向けた不透明感も意識されている。

2020年後半に向けて経済・市場はどう推移し、どのような投資戦略を立てていくべきだろうか。

<過剰流動性が支える株式市場>

結論を最初に述べれば、感染「第2波」や米大統領選に絡んだ政治リスクは意識されるものの、政府・中央銀行による過去にない規模の、かつ迅速な政策対応が経済や市場を支え続ける構造は変わらないとみている。

株価が想定を超えて素早く戻り、上昇した背景には、一般個人投資家の存在が大きかったとされる。年金や保険といった機関投資家の多くは、経済回復が緩やかなペースにとどまるとの判断から慎重な見方を持っており、ヘッジファンドには今の回復相場に追いつけていないところも多いと聞く。

米国では3月以降、 米連邦準備理事会(FRB)のバランスシートは3兆ドル以上も拡大し、財政面でもコロナ対策としてすでに2.7兆ドル(約290兆円)の刺激策を実施している。特に家計には大人1人当たり1200ドル、子供500ドルを給付するなど、合計で8000億ドルが支援され、多くの部分がすでに消費などに回っている。

日本は家計への直接給付を1980年以降しばしば行ってきたものの、実際に消費に回る割合は給付額の3割程度で、多くが貯蓄に回ってしまうと分析されている。

しかし、米国の場合、現金給付のうち5割程度は消費に回っており、これが足元の小売りの強さにつながっていると思われる。同時に、相当程度の資金が株式市場にも流れ込んでいる。

仮に8000億ドルの給付のうち、25%に当たる2000億ドルが株式市場に流れ込んだとしよう。これは米国の株式時価総額の1.3%に相当する額だ。この規模感を日本の状況で例えれば、日銀が年間で最大12兆円の上場投資信託(ETF)を購入する予定のところ、家計が1、2カ月の間に約8兆円(日本の株式時価総額の1.3%相当)の株式を購入することに等しい。

米国ではさらに8月以降の給付継続に向けて、第4弾の追加財政刺激策の議論も出始めており、総額1-2兆ドル程度、家計給付にも3000-7000億ドルの新たな給付が予想されている。

一般個人マネーが主導する株式市場は、高値圏警戒や感染「第2波」、米中対立の悪化懸念など、リスク要因の報道にも影響を受けやすいかもしれない。ただ、FRBによる緩和政策は継続し、米政権による追加の現金給付の可能性も高まる中、パニック的に売り込まれる状況とはなりにくいと考えている。

<米国の感染「第2波」は大統領選挙へ影響する>

米国では新規感染者数に増勢がみられるが、上昇は一部の州に集中しており、全米に広がっているわけではない。

注視すべきは医療崩壊のリスクである。現状、コロナ患者が病床に占める割合は、感染が拡大しているアリゾナ州でも20%未満にとどまっており、3月時点と比較して医療体制は安定している。

現状の拡大ペースが続いて感染者数が2倍超とならない限り、医療崩壊という状況とはならないとみている。感染拡大により経済再稼働のペースは鈍化せざるを得ないかもしれないが、景気回復の方向を大きく変えるような事態とはならないだろう。

また、ワクチン開発への期待も継続する。現在、世界保健機構(WHO)に登録されているワクチンの開発プログラムは140を超え、うち13が臨床試験入りしている。このうち2、3のワクチンは7月にも医療現場における実際の使用を想定した第3フェーズの臨床試験に入るとみられ、その後の承認を経て実用化される見通しだ。実際の大量生産は2021年となるが、ワクチン開発への期待もまた、市場を支える要因となろう。

むしろ、感染拡大のリスクは経済への直接のインパクトよりも米国大統領選挙への影響が懸念されるかもしれない。米国の新規感染者数の拡大を州ごとにみると、選挙にとって重要なスイングステート(共和党と民主党の支持が揺れ動く激戦州)8州の新規感染者数が4月と5月の1日当たり7千人程度から1万人を超える水準へと明確に加速し始めているからだ。

トランプ大統領の支持率は感染拡大への懸念だけでなく、ミネソタ州で警官に拘束された黒人男性の死亡事件を巡るデモの広がりも要因となり、この1カ月は下落傾向にある。夏以降、大統領選挙に向けて政策の見通しに不確実性が高まりそうだ。

感染の終息が遅れれば、郵送による投票を実施する州が多く出てくるとみられる。郵便投票により貧困者やマイノリティー(少数派)の投票率が上昇すれば、民主党に有利になるとの見方もある。

仮に民主党の候補指名を確定させたバイデン前副大統領の勝利が意識される場合、法人税の引き上げやIT企業への規制、金融規制の強化が市場の重しとなるリスクがあろう。一方、グリーンインフラへの投資や対中関税の見直し、環太平洋連携協定(TPP)への加入再考などはポジティブ材料となるかもしれない。

もちろん、トランプ氏勝利の場合であれば、米中間の対立が激化する不確実性が残るものの、法人税のさらなる引き下げや金融規制の緩和など、これまでの政策の延長が予想される。

夏以降、政策の方向性について不透明感は意識されるものの、どちらが勝利したとしても米国経済の見通しを大きく変えるものではないと考えている。

米中間の新たな火種になっている中国の「香港国家安全維持法」の運用は7月にも始まりそうだ。トランプ大統領による制裁を含め、米中関係については一部悪化がみられるかもしれない。

しかしながら、両国が景気回復を重視する中、今年1月にまとまった米中貿易合意は順守されるとみており、関税強化の応酬といった経済に大きな影響を与えるような状況とはならないだろう。

<正常モードに向かう先進国経済>

2020年後半に向けた投資戦略の前提を見ていこう。基本シナリオでは、経済活動の再開が緩やかに進む中、先進国経済は2021年前半には正常モードとなろう。

感染再拡大も医療施設の対処能力で収まる状況にとどまる中、グローバル株式市場に対しては強気のスタンスでいる。特に素材・エネルギー・金融セクターの割合が大きい英国株式市場については、これまでの悲観論からのアップサイドは大きいとみている。

また、経済の再稼働、景気回復が進む中、景気敏感銘柄がディフェンシブ銘柄よりも恩恵を受けるだろう。

クレジット市場は、景気回復が続く中で政策支援もあり、米国やアジアのハイイールド債や新興国国債を推奨している。

為替では、これまでの経済封鎖やクレジットリスクによるドル需要が徐々に減退し、ドル安傾向が継続するとみる。一方、円もグローバルの景気回復が続く中で売られやすい通貨であり、円安余地が残る。したがって、ドルの上昇余地はなくとも、ドル円の下値は堅く、105-110円のレンジが続きやすいと考える。

また、ドル安・円安の中で魅力が高まるのが、これまで割安であったポンドやユーロとなろう。特に英国は欧州連合(EU)との貿易交渉が難航、さらにマイナス金利の導入観測が懸念材料となっているが、市場の悲観論は行き過ぎと言えるだろう。

今回の新型コロナ問題のように、経済や市場は常に予期できないショックが起きうる。十分に分散されたポートフォリオをしっかり持ち続けていくことが、長期的な資産の保全と繁栄につながっていくと考えている。短期的な戦略と長期的な視点をしっかり分けた投資戦略の構築が常に重要となろう。

*青木大樹氏は、UBS証券ウェルスマネジメント本部の日本における最高投資責任者(CIO)兼チーフエコノミスト。2001年より内閣府で政策企画・経済調査に携わった後、2010年にUBS証券入社。2016年より現職。2016年、インスティテューショナル・インベスター誌による「オールジャパン・リサーチチーム」調査の日本経済エコノミスト部門にて5位(外資系1位)に選ばれる。

(編集:北松克朗)

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