January 23, 2018 / 11:00 PM / 24 days ago

コラム:トランプ大統領、ダボス会議で「悪臭弾」放つか

Peter Apps

[22日 ロイター] - 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)は1971年の創設以来、グローバル化が進む世界に対するコンセンサスの高まりの代名詞となってきた。

現在、トランプ米大統領は、グローバルエリートを自認するダボス会議参加者に、彼らがほぼ全てにおいて間違っていたと伝えるため、現地へと向かっている。

米国の現職大統領がダボス会議に出席するのは、2000年のビル・クリントン氏以来初めてとなる。だが、同会議に出席する主要国首脳はトランプ氏だけではない。インドのモディ首相も初参加となるほか、マクロン仏大統領も出席する。ドイツ社会民主党(SPD)と新連立政権樹立に向けて本協議に入ることで合意したメルケル独首相も参加する予定だ。

メイ英首相やカナダのトルドー首相らに加え、彼らが会議に参加することは、トランプ米大統領との興味深い対決のお膳立てとなる。

ダボス会議は指導者にとって、自身をアピールする格好の機会となり得る。昨年の会議では、中国の習近平国家主席が主役だった。習氏は演説の中で、反保護主義を打ち出し、中国はトランプ時代における自由貿易の新たな擁護者だと説いた。海外で実績に磨きをかけた習氏は、その後に国内で開催された共産党大会で権力を固めた。

だが今年は大物政治家の参加が多く、主役の座を巡って昨年よりも火花が散らされることは必至だろう。マクロン氏とメルケル氏は、移民と安全保障における自身の実績を擁護する場として会議を利用し、リベラルかつ中道路線の欧州というビジョンを打ち出すだろう。

それにより、マクロン氏は難しい立場に立たされる可能性がある。メルケル氏がダボス会議に参加することになったため、マクロン氏は反トランプ的立場に同調せざるを得ないと感じるかもしれない。だがマクロン氏はトランプ氏と会談する予定であり、昨年行われた初会談の時のように友好的な関係を再び築きたいと願っているかもしれない。

インドのモディ首相にとっては、サーカスのようなダボス会議は相当なフラストレーションとなるだろう。モディ首相が習氏の例に倣い、会議を支配したいと願っていることは明らかだ。しかし昨年11月に会談したトランプ氏も同会議に出席することで、同氏との友好な関係を強固なものとする機会にもなるだろう。ダボス会議は、両首脳が世界で最も強力な2大民主主義国家のリーダーだとアピールするチャンスだ。望むことは何でも主張できる強力な舞台である。

一方、他の出席者の多くは、トランプ氏を攻撃する機会に飛びつくことはほぼ間違いない。そうしたことは常に避けられなかったが、同氏がアフリカやカリブ海諸国を「不潔」と表現したと伝えられたことで、その可能性は高まっている。

「脱線」しないようトランプ氏を説得できるかや、他の指導者たちが思い通りの議題に同氏を誘導できるかどうかに、多くのことがかかっている。昨年、米議会でトランプ氏が初めて行った演説は、総じていつもの即興的なものではなく、共和・民主両党の多くから、同氏の世界観が理路整然と語られたものの1つとしてみなされている。対照的に、昨年5月に北大西洋条約機構(NATO)の加盟国首脳を前に行った演説は取りとめがなく、非難がましい内容だった。

 1月22日、トランプ米大統領(右)は、グローバルエリートを自認するダボス会議参加者に、彼らがほぼ全てにおいて間違っていたと伝えるため、現地へと向かっている。写真中央はメルケル独首相、同左はマクロン仏大統領。独ハンブルクで昨年7月代表撮影(2018年 ロイター)

トランプ大統領とその側近らは、国内では難しい綱渡りに直面している。トランプ氏は、自分がアルプス山脈の麓に集まった企業経営者や著名人、リベラルな政治家を批判するのを国内の支持基盤の人々が見たがっていると分かっている。

同時に、トランプ政権は成し遂げたいことには事欠かない。ダボス会議は、裏交渉や短時間の秘密会談の機会を他にないほど提供してくれる場だ。

トランプ氏はウォールストリート・ジャーナル紙とのインタビューで、ダボス会議に出席する目的は「米国のチアリーダー」になるためだと語っている。ムニューシン財務長官は、トランプ大統領が「アメリカ第一」の経済政策を大いにアピールすると述べている。昨年11月のアジア歴訪でも大統領が強調した保護主義のメッセージだ。

トランプ政権はまた、イラン核合意を巡る欧州諸国との溝を埋めたり、北朝鮮への圧力を強化したりといった他の多くの問題においても何らかの進展を見たいと考えているだろう。

 1月22日、トランプ米大統領は、グローバルエリートを自認するダボス会議参加者に、彼らがほぼ全てにおいて間違っていたと伝えるため、現地へと向かっている。ダボスの会場で撮影(2018年 ロイター/Denis Balibouse)

トランプ大統領は、近年のダボス会議において最大規模となる米代表団を同行させる。ムニューシン財務長官に加え、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題)やティラーソン国務長官、ロス商務長官も随行する予定だ。このように異例の幅広い顔ぶれの政権幹部がスピーチを行えば、米国は自国の立場を表明したり、あるいは大統領の発言にニュアンスや説明を付け加えたりすることも可能だろう。

トランプ氏がどのような演説をしようとも、それは同氏の海外における演説としてこれまでで最大の注目を集めるものとなるだろう。同氏はまた、会議で起きたことについてツイッターで非常に個人的なコメントをつぶやき続けると思われる。誰に対してとてもいらついたかという話だけでなく、同氏の心理状態をうかがう一定のヒントが得られるに違いない。

米政治メディアのポリティコによると、トランプ大統領は、劇的な「悪臭弾」と一部で呼ばれるものを放つため、ダボス会議の演説を利用する可能性が最も高いという。米国の利益を損なっているとみなす自由貿易協定を巡って他の出席者を糾弾したり、気候変動または国際通貨基金(IMF)や世界銀行の活動に懐疑的な態度を表明したりすることが考えられる。

そうしたことは、ほとんど受け入れられそうもない。とはいえ、批判に対してトランプ氏がどう反応するかに多くのことがかかっているだろう。同氏は間違いなく、世界各国の首脳を含む全ての出席者に対し、かつてタイム誌の批判的なジャーナリストに対して言ったように、彼らではなく自分こそが米国大統領だということを思い出させる機会を逃さないだろう。

成功したショーマンであるというのがトランプ大統領の取りえである。そして、自身の演説がダボス会議の最後に行われるという事実を確実にかみ締めるだろう。出席する他のエリートたちにとっての問題は、最も巧みな駆け引きを講じても、自分たちの議題がトランプ氏のそれに飲み込まれてしまうことを阻止できないということだ。

言うまでもなく、それはトランプ氏がまさに望むところだ。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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