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コラム

コラム:先進国で生産性低迷の「謎」を解く

[ロンドン 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 経済協力開発機構(OECD)の統計によると、先進国の生産性伸び率は低下している。多くのエコノミストや政治家がこの傾向を憂慮しており、特に英国では悩みが深い。英イングランド銀行(中央銀行)は13日公表したインフレ報告で生産性伸び率の持ち直しが必須と強調したが、何も悩む必要はない。

 5月13日、経済協力開発機構(OECD)の統計によると、先進国の生産性伸び率は低下している。米サウスカロライナ州のTV組み立て工場で昨年5月撮影(2015年 ロイター/Chris Keane)

彼らが想定している課題は労働生産性だ。発表された数字には確かに気が滅入る。OECDの報告によると、1990年代前半には日本、ドイツ、フランス、英国、イタリアの生産性は年率2%超のペースで伸びており、米国は1.3%だった。これに対して2009年から14年までの5年間では、これら6カ国すべてで伸び率が1.1%以下となり、米国では0.9%まで下がった。

しかし生産性伸び率の低下は、技術革新ペースが減速したり、設備投資の有効性が薄れたり、ライフスタイルがほとんど向上していないことを示していない。

生産性の単純な計算方法は、大半の労働が現場や工場で行われている時に意味を持つ。機械が人力に取って代わった際の生産性向上を把握できるからだ。

しかし現在、まったく同じ製品をより多く作れるようになったから生産性が向上する、という状況はまれだ。むしろ旧来の製品を改良したり、完全に新しい製品を開発することによって生産性は向上している。こうした定性的な変化は定量的変化と本質的に異なり、計測できない。

受信状態が最悪だった2G型の携帯電話1機を製造するのに要していた労働時間で、最新型スマートフォン1機を製造できるようになった場合、労働生産性はどれほど向上したのだろうか。正確な答えはない。統計専門家は実質価値を比較しようと果敢に挑んでいるが、彼らが生み出した実質的な付加価値の計測法はまったくもって自分勝手だ。

サービス業となると、生産性の計測はさらにいい加減になる。先進国の国内総生産(GDP)において、サービス業は今や約3分の2を占める。教育や医療といった重要なサービス業では、生産性が何を意味するのかさえはっきりしない。人々が往々にして求めるのは、個人的な指導やケアなど、一般に生産性が低いとされるサービスなのだ。

あるいは、ファストフードに代わってカジュアルダイニングが台頭していることを考えてみよう。カジュアルダイニング店がいかに効率的なサービスを提供していたとしても、カウンター越しに料理を渡すファストフード店に比べればずっと多くの労働を必要とする。しかしどのような常識的な基準で見ても、数値で示される生産性が低下したからといって、経済の生産性が落ちたとは考えられない。飲食店で労働の対価をより多く支払えるようになったことは、社会が豊かさを増した証拠だろう。

経済活動に占めるサービス業の割合は増えているため、標準的な生産性指標の有用性は低下する一方だ。言い換えれば、先進国経済はポスト生産性時代に移行した。

裁量的な数字ではなく実際の経済に目を向けると、労働生産性の低下は読み取れない。労働者の教育水準は上がり、技術は進歩している。設備投資、特に政府部門のそれが減速している可能性は危惧される。しかし出鱈目な生産性計測は、高齢化が進み、既に裕福な経済においてどれほどの投資規模が適正かをめぐる議論を混乱させるだけだ。

しかしイングランド銀行の懸念を共有する者はほかにもおり、例えば、ロンドンのインペリアル・カレッジ・ビジネス・スクールは「英生産性の謎」と題する33ページの論文を発表している。

しかし謎など存在しない。発表される生産性伸び率が低下しているのは、経済に占める比率がどんどん縮小している分野の数字を集計しているからだ。

生産性をめぐる的外れな懸念は、基本的研究への投資拡大といった良い政策につながり得る。しかし目に見える形でGDPに寄与していない雇用削減を後押ししてしまう恐れもある。こうした雇用を削減すれば生産性の数字は上昇するが、失業を増やしたり過少雇用を生み出すことになる。こうした事態の方が必ずしも非効率ではない生産よりも、先進国においては明らかに深刻な問題だ。

労働市場以外にも、福祉国家のコストの高さや金融市場の機能不全、世界的な貧困など、解決すべき問題は目白押しだ。杞憂に時間とエネルギーを費やしている場合ではない。

●背景となるニュース

*イングランド銀行のインフレ報告は以下のアドレスをクリックしてご覧ください。

bit.ly/1zZG7y5

*インペリアル・カレッジの論文は以下のアドレスをクリックしてご覧ください。

bit.ly/1QJaVHJ

*世界銀行の指数は以下のアドレスをクリックしてご覧ください。

健康 bit.ly/1G6g2Pg

教育 bit.ly/1IAYrPN

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

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