October 1, 2018 / 9:24 AM / 13 days ago

コラム:世界で高まる「ドル不足」の危険性

[ロンドン 28日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が利上げに踏み切り、自身のバランスシートを縮小する中で、ドルと米国債利回りは上昇しており、海外投資家によるドル資金調達は、割高かつ困難な状況に陥っている。

 9月28日、米FRBが利上げに踏み切り、自身のバランスシートを縮小する中で、ドルと米国債利回りは上昇しており、海外投資家によるドル資金調達は、割高かつ困難な状況に陥っている。写真は米ドル紙幣。シンガポールで昨年6月撮影(2018年 ロイター/Illustration)

こうした状況は明白だが、意外なのは、そして恐らく懸念すべきは、ドルがいかに高く、希少になりつつあるかということだ。

通貨スワップ市場では、これまでストレスの兆候はなかった。同市場は、幅広いドル需要や流動性、調達をを示す上でもっとも注視されている指標の1つだが、オフショアドル需要は容易に満たされ、相場も安定していた。

だが、FRBが今回のサイクルで8回目となる利上げを行い、今後も利上げを継続する意向を示唆した翌日の27日、金利差からのかい離を示すベーシスは急拡大した。ドル/ユーロの1日当たりのベーシス拡大幅は世界金融危機以降で最大を記録した。

それはまた、銀行による四半期末のリバランスや、イタリア情勢への懸念を生み、ユーロ圏からの資金流出の急増を招いてしまった可能性がある。依然として注目すべき動きであり、他の指標も加味すれば、海外の投資家や企業、金融機関にとって、ドルの借り入れコストは2009年以降でもっとも高くなっている。

しかも、それは今後も高くなる一方だ。

米ドルや利回り、加えて金利の上昇にさらされている世界中のドルの借り手にとって、それは赤信号とは言わないまでも、黄信号が点灯している状態だ。これらの上昇が、債務を膨張させ、返済を困難にするためだ。

加えて、米金融市場改革や金融規制の強化は、米銀のドル流動性供給能力を損なっている。

トランプ米大統領の税制改革は、自国に還流する米企業の莫大な現金の一部を迂回させ、海外銀行の米国支店が現地で資金調達するコストを増加させている。

一方、本格的な世界貿易戦争のような、新興市場からの資本流出を招く、急激なリスク回避が発生する可能性は高まっており、これまで以上にその現実味を増している。今夏経験したように、資本逃避は、新興国の借り手が受ける痛みを倍増し、ドル流動性のひっ迫を、より広範囲に悪化させる。

「ドルの借り入れコストは、特にオフショアドルについては今後も上昇し続け、世界の資金調達に相当な圧力を与えることになる」と、TSロンバードのシュウェタ・シン氏は指摘。「世界調達に対する主な脅威はオフショアドルの縮小だ」

<ドル支配と依存>

3カ月物のドル資金調達コストは現在、約2.50%。歴史的な水準から見れば、高いわけではない。一見したところ、大半の借り手にとっては確実に対応可能な水準だ。しかしコストは上向いており、ドル供給は減少している。

FRBの量的緩和は実質的に終了しており、量的引き締めへと向かっている。FRBのバランスシート縮小だけでも、まもなく月500億ドル、年間6000億ドルの資金を吸収することになるだろう。

加えて、1兆ドルに上るトランプ政権による減税策や防衛費向けに国債発行が急増している。米証券業金融市場協会(SIFMA)のデータによると、1カ月ベースの発行残高は8月、初めて1兆ドルを超えた。

こうした資金を吸う音は大きくなる一方で、銀行やファンド、他の金融機関がこれら国債を購入している。購入に使われている一部のキャッシュは、さもなければ他のどこかに流れているだろう。

こうしたことの一切は、世界的ドル依存がかつてないほど高まる中で起きている。国際的な資金調達通貨としてのドル支配は、2008年の金融危機以降、特に新興市場の借り手の間で急速に広がっている。

国際決済銀行(BIS)によれば、米国以外のノンバンク向けドル与信は3月末時点で世界の国内総生産(GDP)の14%に相当しており、2007年末時点の9.5%から上昇した。

新興市場国のノンバンクに対するドル建て融資は約3.7兆ドルと、危機以降2倍以上増えている。また、同規模が通貨スワップを通じて借り出されている。

「ドル建て融資比率の高まりは、ドル高が継続した場合に現実化するリスクを予見するものだ」と、BISは四半期レビューで指摘。「さまざまな新興市場資産のポートフォリオを抱える世界の投資家にとって、ドル高は、テールリスクを高める。これによって新興市場のエクスポージャーに大幅な縮小が起こりかねない」

何兆ドルも借り入れている米国以外の銀行は、保有する資産と債務に通貨のミスマッチを抱えている可能性がある。大半は、安定したドル建て預金へのアクセスを持たないか、米国支店のドル建て預金にも簡単にはアクセスできないことが多い。

これらの銀行は、より不安定で借り入れコストも高騰する短期的なドル資金調達への依存を強いられる。ドル不足は大きな痛手となりかねない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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