June 15, 2018 / 5:23 AM / 3 months ago

コラム:FRBと好対照、ECBの慎重さが市場で歓迎される訳

[ロンドン 14日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は14日、年内に量的緩和(QE)を打ち切ると表明し、危機モードの政策を巻き戻す上でこれまでで最も大きな一歩を踏み出した。前日には米連邦準備理事会(FRB)が政策金利を引き上げ、以前の想定より利上げペースを速める姿勢を打ち出している。

 6月14日、欧州中央銀行(ECB)は、年内に量的緩和を打ち切ると表明し、危機モードの政策を巻き戻す上でこれまでで最も大きな一歩を踏み出した。写真はドラギECB総裁。フランクフルトで3月撮影(2018年 ロイター/Ralph Orlowski)

ECBとFRBはいずれも金融政策正常化の道を進んでいるように見えるが、進み方はこれ以上ないほど対照的だ。ECBは少しずつ前進している一方、FRBはより大股で歩き出した。

別にECBとドラギ総裁を批判しているわけではない。ECBの慎重さは恐らく正当化されるし、FRBが2月に就任したパウエル議長の下で先行きに自信を持っているのもまたうなずける。

ドラギ氏は、QEの出口と政策正常化に関してもっと明確に示せと突き上げるECB内のタカ派をなだめすかしながら、異例の金融緩和を維持して必要なら再び緩和を強化する余地も残しておくという難しい仕事を巧みに成し遂げているように見える。

金融市場にとってECBの慎重さは喜ばしい。特に世界的な貿易戦争の緊張感が高まっている状況において、米国とユーロ圏の両方で金融引き締めが行われればリスクが生まれるのは避けられない。

表面的には、金利上昇と危機モードの緩和の巻き戻しは、経済や市場、金融システムが全体としてもう大丈夫になった明らかな印だ。

米国は景気回復期間が第2次世界大戦以降で2番目の長さに達し、労働市場がこれほど引き締まった局面は過去にほとんどない。企業利益は過去最高で、銀行は健全だ。

ユーロ圏経済も2008年と11─12年の危機から立ち直り、7年ぶりの高成長となっており、失業率は10年ぶりの低さで、第1・四半期の企業利益は30%増えた。

ECBが今引き締めをするか、少なくとも引き締めを示唆できないなら、一体いつ可能になるというのだろうか。

しかしこのように指標が明るく、足元が歴史的に見て好ましい状態にあるからこそ、現在織り込まれている以上に金融引き締めれば投資家を不安がらせかねないのだ。つまり恐らく、経済はこれ以上良くなりようがない。

<怪しい雲行き>

ユーロ圏は成長が足踏み局面(ソフトパッチ)に入ったことが一段と鮮明になりつつある。経済データは一貫して予想に届かず、景気拡大の強さに疑問を投げかけている。ドラギ氏も、ソフトパッチは一部の国で第2・四半期にまで持ち越されただろうとの見解を示した。

シティが算出するユーロ圏の経済サプライズ指数は現在、2011年以降の最低水準にある。ユーロ圏と米国の同指数の格差は約10年ぶりの大きさになっている。

これは過去数年間アウトパフォームしてきたユーロ圏経済への期待があまりに高過ぎたからとも言える。だが見通しは暗さが増し、ドイツ経済研究所(DIW)は今週、今年と来年の同国の成長率見通しを下方修正した。今年は1.9%、来年は1.7%でそれぞれ0.5%ポイントと0.2%ポイント下がった。

ECBは向こう2年の物価上昇率見通しを1.7%に引き上げた。ただそれでも政策担当者が望ましいとみなす水準には達しないだろう。それゆえにドラギ氏も、「相当な」緩和政策がまだ必要になると発言している。

ユーロ圏の銀行もそれほどの輝きを放っているわけではなく、同地域の金融株は年初来で13%下落し、横ばいを維持している株式全般に比べてふるわない。

各銀行は自己資本と流動性バッファー強化のため多額の国債を保有せざるを得ず、ECBのQE打ち切りが債券価格を押し下げてしまえば、銀行の資本基盤は弱体化するかもしれない。もちろん最近のイタリア国債市場で起きた騒動に関する心配の種も消えない。

もし債券のイールドカーブがスティープ化するなら、金利上昇と金融引き締めは銀行にとってそれほど悪いニュースとならない。ところがイールドカーブは特に米国でフラット化が止まらず、2年─10年国債利回りスプレッドは07年9月以来の水準まで縮小し、逆イールド化までもう40ベーシスポイント(bp)足らずだ。

今回は違うという主張は根強いが、過去40年の5回の景気後退局面はその前に必ず逆イールド現象が発生していた事実は変わらない。

ウニクレディトのチーフ米国エコノミスト、ハーム・バンドホルツ氏が指摘するように、景気刺激策の効果がいったん消えてしまえば、成長は減速し始めるだろう。同氏がFRBの来年の利上げは1回にとどまり、それで最後になると予想するのはこうした理由からだ。

FRBは14日、今年全体で4回の利上げを想定していると示唆した。それでも短期市場が年内に4回目の利上げに動く確率を50%しか織り込んでいないのも、景気の勢いが弱まる事態に目を向けているからではないだろうか。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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