March 9, 2018 / 9:46 AM / 7 months ago

コラム:ECB「緩和バイアス」削除、出口にハードルなお多く

[ロンドン 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、非伝統的手段を駆使した金融政策の実験の終了に一歩近づいた。

 3月8日、ドラギECB総裁(写真)は、非伝統的手段を駆使した金融政策の実験の終了に一歩近づいた。フランクフルトで7日撮影(2018年 ロイター/Ralph Orlowski)

ECBは8日の理事会で、必要なら債券買い入れ規模を拡大するという「緩和バイアス」を声明から削除し、3年にわたる買い入れ打ち切りの地ならしをした。ただドラギ氏による出口に向けた細心の準備をもってしても、前途にはなお多くのハードルが待ち受けている。

緩和バイアスは声明において既に余計な存在になっていた。ユーロ圏の昨年の成長率が2.7%に達し、物価上昇率は今後1─2年で徐々に加速していく見通しである以上、ECBが毎月300億ユーロの債券買い入れを増額する可能性は極めて乏しい。さらに実際問題として、ECBが自主的に定めたルールを破らずに購入できる債券は枯渇しつつある。

だが緩和バイアスは象徴的な重みがあった。導入されたのは2016年で、狙いはECBが大規模緩和の巻き戻しをゆっくりと、かつ状況次第で再び強化できる形で進めていくと市場に伝えることだった。そのバイアス削除は、市場に量的緩和(QE)のない世界がやってくる備えを促す。もっともドイツ10年債利回りがいったん上がった後すぐに低下したことを踏まえると、債券投資家はそれほど心配していないのかもしれない。

恐らくこうした楽観論の理由は、ドラギ氏が市場安定のためのいくつかの手段を持つからだろう。例えばもし債券買い入れ打ち切りを受けて投資家が利回りやユーロ相場を押し上げれば、ドラギ氏は利上げの先送りを示唆する可能性がある。ECBは満期を迎えた保有債券を必要な時期までいつまでも再投資して、長期金利を抑えることもできる。

しかしせっかくのドラギ氏の周到な振り付けが、無に帰す恐れもある。米政府の鉄鋼関税導入が新たな保護主義の時代を招くかもしれない。そうなるとECBの対応策がほとんどない状態で、欧州の経済成長が打撃を受けかねない。また米連邦準備理事会(FRB)の資産縮小が進んで米国債利回りが上昇すれば、いくらドラギ氏が手を尽くしても、ユーロ圏の債券利回りも追随して上がっていく。

ユーロ圏が抱える固有の脆弱性が問題化することもあり得る。先のイタリア総選挙でポピュリズム(大衆迎合主義)とユーロ懐疑主義を掲げる政権が誕生する可能性が高まったからだ。そうした政権が本当に出現すれば、投資家がユーロ圏の中で経済力の劣る国の国債を買う際に要求する利回りがはっきりと上振れする。

ドラギ氏は、債券買い入れの開始よりも巻き戻しがいかに難しいかを思い知るのではないか。

●背景となるニュース

*ECBは8日の理事会で、物価押し上げに必要なら債券買い入れを拡大するという、これまで長く声明に記してきた約束を削除した。この約束は2016年の声明に初めて盛り込まれた。

*ECBは現在国債と民間セクターの債券を毎月300億ユーロ購入し、物価上昇率を目標の2%弱に近づけようとしている。毎月の買い入れ額は最大時800億ユーロだった。買い入れプログラムは最短でも9月まで継続される。

*ドイツ10年債利回りは、ECBの声明発表後一時3ベーシスポイント(bp)上がって70bpとなった。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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