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コラム:株高は過熱圏に、物色絞り込みのすすめ=木野内栄治氏
2017年6月1日 / 04:14 / 6ヶ月後

コラム:株高は過熱圏に、物色絞り込みのすすめ=木野内栄治氏

[東京 1日] - ここ2カ月間の株式市場を振り返ると、日経平均は4月17日に3月決算銘柄の業績開示が始まるとともに上昇に転じ、5月15日に業績開示が一巡した翌日にピークアウトした。

実は、決算発表時期に日本株は底入れすることが多い。昨年4月から見ると、日経平均のザラ場安値は、昨年の4月8日、7月8日、10月14日、今年の1月18日、4月17日と決算発表直前の時期に形成されている。

昨年度からアナリストが事前に業績動向をヒアリングするプレビュー取材が禁止になったことから、実際の業績発表がサプライズとなることを恐れ、機関投資家が様子見となることが1つの背景だと考えられる。この2カ月間の株式市場は、業績開示前の押し目は買い場になるとの従前の筆者の指摘を確認する展開となったと言える。

<積極的な設備投資計画と強気の業績ガイダンス>

では、これらの過去のリバウンドがどの程度継続したかというと、いずれも10営業日前後で、それに比べて今回は1カ月上昇と相対的に長めのリバウンドとなった。日経平均の上昇幅で見ても今回は1774円上昇と、最近の中では大きめだった。

背景としては、企業による業績見通し(ガイダンス)が堅調だったことがあげられる。当社が継続的にフォローする代表的な200銘柄で見ると、昨年のこの時期の企業による新年度の業績見通しは、経常増益率で1.9%の減益と保守的だったが、今年は3.7%増益とプラスに転じた。

終わった前期は結局4%程度の増益だったが、ほぼ同じ程度の増益ガイダンスを今年出してきたということは、下方修正を嫌がる企業側としては強気だと言える。結果、今回の相場のリバウンドは日柄・値幅ともに大きかった。

こうした強気の姿勢は、期初段階での設備投資計画にも表れており、3月の日銀短観では大企業製造業の設備投資は近年の中ではかなり高い伸びだった。設備投資計画には、必ず事業計画や資金計画などが存在する。資金手当て、設備投資、生産、販売、収益、資金回収などの一連の計画があるならば、業績ガイダンスは明確な数字になりやすい。おのずと過剰に保守的な見通しにならないのだろう。

<戻り一巡のタイミング接近、外部環境次第へ>

しかし、ガイダンスが強いと、その後の上方修正余地が限られるとも言える。実際、3月調査の日銀短観で設備投資計画が強かった年を見ると、期初に比べて中間期末の日経平均は下落したことが多い。2000年、2004年、2006年、2012年、2015年などだ。今年も中間期末の業績開示ではガイダンスの上方修正はさほど期待できないだろう。

より短期的には、騰落レシオ(25日)などのテクニカル指標が過熱圏に入っている。今しばらくは相場上昇の余韻が残るかもしれないが、期間限定だろう。

なお、海外株安や為替市場でドル軟調にもかかわらず、1日の日本株は大幅高で前場を終えた。実は、この1年間は外部環境にかかわらず毎月月初は日経平均の堅調が続いている。毎月月初にタクティカル・アセット・アロケーション(戦略的資産配分)運用などが、債券などから株式に資産ウエートをシフトしたためだろう。さらに、今月初めは日本企業の好業績を反映して大きめの株高となったと思う。ただし、この大幅高によって、足元の好業績は当面織り込み終えたとみられる。

その後を考えると、内外景気次第だとみている。企業が設備投資に積極化したことで、経営にはレバレッジがかかってきたからだ。世界の景気が良ければ、設備投資積極化の判断が正解だったとなるだろうが、外部環境がスロー化すると、増強された設備の十分な稼働が期待できず経営の負担になりかねない。実際、設備投資計画が強かった上記の年は、下期は急回復する事例もあるし、続落の事例もあった。

<外部環境には期待しにくい情勢に>

内外景気情勢の点では、日米の経済政策に期待がかかる。ただし、日本は東京都議会選挙(6月23日告示、7月2日投開票)で新たな風が吹く公算であり、安倍政権としては解散総選挙に打って出る計画を立てにくい時期だと思われる。

実際、過去の都議選では、例えば1993年に日本新党が躍進、2009年に自民党が第2党に転落したが、それぞれその翌月の総選挙で自民党は下野した。今回、そうした過去の教訓から、解散総選挙が計画されないとすれば、大規模な経済政策を絞り出す必要性も薄れ、骨太の方針や成長戦略も小粒となりかねない。

また、米国ではトランプ大統領は議会による弾劾が取り沙汰される状況であり、議会との予算獲得にかかわる交渉力を削がれてしまったと思う。結果、共和党の伝統である「小さな政府」的な政策が見込まれ、早々の大規模経済政策の実現は期待しにくくなった。実際、共和党に政権が移行した戦後の事例に目を向ければ、1年目の後半は必ず株安で景気後退期を迎えている。

こうして見ると、外部環境は年末までスローとなる懸念がある。筆者はその時期が長期的な買い場となる可能性が高いと判断している。

<注目はグロース、機械、半導体関連、通信、小型株>

さて、こうした相場想定での投資戦略を考えたい。足元、騰落レシオはかなりの過熱圏まで上昇したので、当面は低下が見込まれる。言い換えると、値上がり銘柄数が減ることになる。市場エネルギーが一部の銘柄に集中すると、個々の銘柄では意外高となることも多い。いわゆる「値幅取り相場」といわれる相場付きが想定される。

前回、昨年12月に騰落レシオがピークアウトしてからは、日経平均は高値保ち合いに移行した。その間で物色はバリューからグロースに移行したし、電気機器株はアンダーパフォームからアウトパフォームに移行した。米国で、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの頭文字を取った「FANG」と呼ばれる一部の銘柄に物色が集中しているのと同じイメージだ。

今回の物色絞り込み候補は、設備投資積極化でメリットが大きい機械株、半導体関連の設備投資拡大で半導体製造装置株に期待したい。また、例年、通信株や日経ジャスダック平均は8月頃まではアウトパフォームしやすいので注目だ。こうした分野の銘柄へ絞り込み、「値幅取り相場」に備える投資戦略が有効だと考えている。

*木野内栄治氏は、大和証券投資戦略部のチーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2004年から11年連続となる直近まで、市場分析部門などで第1位を獲得。平成24年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の理事も務める。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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