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コラム:新・安倍カレンダーに見る株高シナリオ=木野内栄治氏
2017年10月23日 / 06:11 / 1ヶ月前

コラム:新・安倍カレンダーに見る株高シナリオ=木野内栄治氏

[東京 23日] - 日経平均株価がついに15連騰を果たした。連続上昇日数の記録としては、過去最長を更新。先週末の米株高に加えて、22日投開票の衆議院選挙において自民・公明の連立与党が予想通り圧勝したことで、安心感が広がったと言える。

そして何より重要なことは、与党圧勝で、財政刺激策への期待がさらに強まったことだろう。

例えば、政府・財務省から見れば、消費税率引き上げは与野党の三党合意なので安泰と思っていたが、選挙戦を通じて全野党は増税凍結か反対に変わった。2019年の参議院選挙前に、またもや増税延期に追い込まれかねないとの懸念が台頭していると思う。それを避けるためにも、景気を良くしなければならないと政府・財務省は感じていよう(逆に言えば、消費税率引き上げに関しては、景気が良くない場合は中止・延期をするという景気条項が今回の選挙を経て事実上復活したと思われる)。

国会議員から見れば、選挙戦を通じて改憲勢力が大多数となった。改憲は有権者のポケット・イシューではないので国会議員の実際の意欲には濃淡がある。それでも改憲を進めなければならないなら、別途、選挙民向けに予算付けの手柄が欲しいところだ。

官邸から見れば、安倍晋三首相の自民党総裁三選の可能性が復活・濃厚となった。ただし、2019年の参議院選挙で負ければ、今度こそ安倍時代での改憲は不可能となる。野党再編の恐ろしさも味わったことから、2019年に向けて支持率を回復したい。やはり、景気を一段と持ち上げる必要が出てきた。

<新たな政治スケジュール>

こうして見ると、消費税率の引き上げを最終的に閣議決定する2019年春頃までは、財政刺激策が強まると相場は読んでいるのだと思う。この頃の景気はまずは2018年度予算が左右する。その予算案は早くも今年の12月22日頃には閣議決定される。

実際、10月8日のNHKの党首討論で、安倍自民党総裁は「十分に消費税を上げることができる状況をこれから、あらゆる政策を総動員して作っていきたい」と述べ、その直後に山口那津男公明党代表も「準備はもう来年度予算から始めていかなければならない」と追い打ちした。

例えば、2018年度の本予算案が今年度補正予算も合わせた大きな予算案になるなど、財政刺激策が誰の目にも明らかになる時期が近づいていると思う。

その先にも、日銀正副総裁人事、骨太の方針や成長戦略、2018年度の補正予算、さらには消費増税後の教育支援拡充など、2019年春に向けて景気刺激策が継続するだろう。

そして、消費税を引き上げても参議院選挙で負けない良好な経済状態や国民の支持があれば、改憲を問う国民投票も同時期に実施できるだろう。今回の総選挙を経て、新たな政治スケジュール、いわゆる新「安倍カレンダー」が見えてきた。

なお、前回、日経平均が14連騰した場面(1960年12月21日から1961年1月11日)では、その道中で所得倍増計画が閣議決定されている。今も昔も日経平均の連騰は、景気刺激策の好感だと言える。

<日経平均の連騰は金融緩和継続を示唆>

その他の日経平均の連騰場面を見ると、金融緩和の継続期待とも言える。日経平均が13連騰した1988年2月は、西ドイツの金融引き締めがブラックマンデーを引き起こした反省から、日銀の金融引き締めが遅れるとの見方が優勢となった。1986年3月にも12連騰したが、プラザ合意後の協調利下げを好感した結果だ。

中でも1980年代の金融緩和は、その後のバブルの遠因とされる。実際、潜在供給能力を大幅に上回る需要が抑えられず、需給ギャップは大幅にプラス領域に上昇した。

そうした反省もあり、その後は需給ギャップがプラスに転じそうになると、経済政策が引き締めに転じた。具体的には、1996年6月の消費税率引き上げの閣議決定、2000年8月のゼロ金利解除、2006年3月の量的金融緩和解除などだ。

結果、経済や株価がピークアウトする「偽りの夜明け」が続いた。同様に、2015年6月の12連騰の場面は円安相場がけん引したが、円安けん制発言で市場の期待は萎んでしまった。

しかし、今回は異なる。例えば桜井真日銀審議委員の函館での記者会見(10月18日)の要旨を見ると、「需給ギャップがプラスに転じて、そのプラス幅がリーマン・ショック以降では一番高い水準にある」「現在の状況を維持することが非常に重要だ」とプラスの需給ギャップを容認している。

このように需給ギャップがプラスに転じてから、財政刺激策と金融緩和を継続する点が、バブル崩壊後や従来のアベノミクスと異なる点だ。これは高圧経済政策と定義できる。

<高圧経済は成長戦略>

高圧経済の定義は、潜在供給能力を上回る需要がある状態だ。需給ギャップがプラス圏の過熱的な経済状態なので、転じて、日本では高度経済成長期を指すことが多い。

例えば、有斐閣の経済辞典では第3版まで後者の説明が載っているが、第4版(2002年)では前者の説明に置き換わり、最新の第5版(2013年)では両方の併記に変わった。高圧経済に関しては、日本では理解が深くない。

一方、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は2016年10月の講演で、高圧経済によって労働参加率や設備投資が促され、さらには研究開発・イノベーションも増加する可能性があると指摘した。中でも、財政出動して金融緩和を続ければ成長戦略になるとの論旨は、日本では理解されなかった。

しかし、日本でも、こうした成長戦略の面を当局者が語り始めた。中曽宏日銀副総裁は10月5日にロンドンで、「最近の深刻な人手不足は、生産性を改善する契機となる」「景気好転の結果、失業率が低くなっていくと、生産性の改善に向けた企業部門の自発的な取り組みを促進し、潜在成長率を高め得る」と指摘した。前出の桜井審議委員も同様の論旨だった。

高圧経済政策は成長戦略となり得るとの認知が広がり始めた。

<外国人投資家は好感>

建設・コンピューターシステム・観光・物流・飲食などの高圧経済・人手不足業界において強烈な省力化投資やイノベーションが出始めている現実については、筆者はこれまでも報告してきた。こうした業界の株価パフォーマンスは好調だ。

中曽副総裁は「個別の事例をマクロ経済全体に一般化して考えることには、一定の慎重さを要する」と留保しているが、こと生産性の向上に関してはそんな遠慮は必要ないと思う。全要素生産性は実質国内総生産(GDP)成長率から資本と労働寄与を除いた残差であって、マクロ的には直接計測することすらできない。イノベーションはいつでもミクロの現象だ。

そして、結果的に高圧経済政策となった1940年代前半のNYダウは大変堅調だった。

つまり、やや過熱的な経済運営をすることが、成長戦略となり、株価も上昇しやすいと言える。これまではアベノミクス下で成長戦略が不十分と指摘されてきたが、とうとう成長戦略を推し進める方法が認知され始めたことになる。株価上昇もうなずけよう。

中曽副総裁講演が外国人買いを誘発し日経平均の15連騰を達成させた可能性が高いと筆者は考えている。今月末の日銀展望レポートあたりで議論が取り上げられれば、さらに外国人買いや株高を誘発することになるだろう。

*木野内栄治氏は、大和証券投資戦略部のチーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2004年から11年連続となる直近まで、市場分析部門などで第1位を獲得。平成24年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の理事も務める。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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