January 16, 2018 / 4:07 AM / 9 months ago

コラム:日本株3万円到達いつか、高圧経済でPER上昇=木野内栄治氏

[東京 16日] - 最近の日米株高基調の背景には、日銀のスタンスが変わってきたことと、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル理事が次期FRB議長に指名されたことがあると考えている。

2017年の日経平均は9月までは前年末比1300円程度の上昇幅の中での推移だったが、10月からは16連騰を達成するなど急騰し、年末までの上昇幅は3800円程度に広がった。つまり、10月から相場付きが全く変わった。

そのきっかけの1つは、中曽宏日銀副総裁が10月5日に英ロンドンで行った講演だったと思う。「最近の深刻な人手不足は、生産性を改善する契機となる」「失業率が低くなっていくと、生産性の改善に向けた企業部門の自発的な取り組みを促進し、潜在成長率を高め得る」と、現状の人手不足が金融引き締めの要因にならないことを示唆した。この発言を好感したかのように、10月の欧州投資家は約2兆円の買い越しで、日経平均16連騰の原動力となった。

さらに、10月末開催の金融政策決定会合の議事要旨には、「何人かの委員は、労働力率の上昇や省力化投資などの生産性向上に向けた取り組みは、短期的には物価を抑制する方向で作用するが、やや長い目でみれば、潜在成長力を引き上げるとともに、企業の期待収益の向上等を通じて、物価の押し上げにも寄与すると指摘した」とある。

低インフレと好業績の継続が政策委員のコンセンサスになっているわけで、賃金上昇による物価への好循環を期待する従来の考えをさらに一歩進めたと言える。緩和的な金融政策を継続するフォワードガイダンスの強化であり、低金利と好業績の組み合わせは株価収益率(PER)の上昇を示唆する。

他にも、12月1日発表の地域経済報告(さくらレポート)は、労働生産性向上に向けた取り組みの事例集だ。人手不足でも緩和を続ける意義(高圧経済政策の効能)が、日銀全体で共有されてきた感がある。

<パウエル次期FRB議長も同じスタンス>

また、昨年11月初めに次期FRB議長に正式指名されたパウエル氏の考え方には、日銀と同じスタンスが感じられることを紹介したい。

パウエル氏の講演録をさかのぼってみると、2016年5月26日とやや古いが金融政策について述べている貴重な講演が見つかる。「米国にとって、金融危機後の潜在成長率予想の低下の大部分は、労働供給量の下振れというより、むしろ労働生産性の改善の弱さを反映したものだと思わる」と、雇用の改善は順調な一方で、生産性の改善が不十分とのスタンスだ。

さらに、「資本ストックの伸びの弱さは、需要回復の弱さと整合的である」と、設備投資が積極化するには需要が必要との立場を示した。前述した日銀のスタンスに通じるだろう。

加えて、「もう1つの重要な要因は、全要素生産性(TFP)の伸びの著しい低下だ」と、研究開発などの不十分さも指摘している。金融業界に関し、最近の講演でフィンテックなどのイノベーションの話が多いことや、規制緩和に積極的であることと整合的で、現在でもまだ経済全体に対しても生産性の改善は不十分と考えているはずだ。

パウエル氏の考え方には日銀と同じスタンスが感じられる。日銀のスタンスを欧州投資家や日本の株式市場が好感したのだから、パウエル氏のFRB議長指名で、米国株式が続伸した可能性が指摘できるだろう。

<高圧経済下ではPER上昇、連騰気味に>

パウエル氏が講演で用いた潜在国内総生産(GDP)と実際のGDPは、足元で明確に並んだ可能性が高い。GDP需給ギャップのプラス転換だ。

しかし、生産性改善の遅れのために、潜在GDPは以前見込まれていたよりも低下しているとパウエル次期FRB議長は考えており、純粋な「テイラー・ルール」などで算出される金利水準よりも緩和的なスタンスを維持するだろう。結果、潜在成長率が高まり得るわけだ。

テイラー・ルールとは、需給ギャップなどとFRBの過去の行動をもとに導き出した関係式である。これを逸脱するということは、経済と金利の関係が、過去に比べて緩和的になるということだ。

経済成長率が高くても緩和的な金融政策スタンスを維持するならば、過去に比べてPERは高くなるはずだ。実際、米国の予想PERは19倍近くとかなり高くなってきた。

日本のGDPギャップも1.35%とプラス幅が大きくなっている。それでも日銀は前述のように需要超過や人手不足が設備投資などを促すことに期待を寄せている。日本株のPERも上昇しておかしくない。

こうした需給超過の高圧経済状態を金融当局が容認した場合の株式市場の相場付きは、連騰が増えることだ。プラザ合意やブラックマンデー直後に高圧経済状態を容認せざるを得なかった時期に、日経平均は12連騰や13連騰を記録している。米国株も足元で下げにくくなったし、高圧経済だった1940年代前半も下げにくい相場付きだった。

<米欧が利上げを開始した年はPER大幅拡張>

米国株のように構造的に日本株のPERが上昇すると筆者は考えているわけだが、1年程度の相場を考える上で、循環的に似た場面を紹介したい。それは欧州中央銀行(ECB)が利上げを開始した年だ。

米欧日の景気は、米国から回復すると、各地域に伝播しやすい。よって、利上げは、米国、欧州大陸、日本の順で開始されるのがパターンだ。結果、ECBが利上げをした場面では、米欧がそろって利上げするくらい世界景気が良い中、日銀は緩和を続けている。高圧経済を容認した場面と似ている。

現在の欧州銀行間金利先物は、2018年12月限で0.1%、翌年3月限で0.2%程度の金利上昇を織り込んでいる。遅くても2018年度中にはECBの利上げが開始されそうだ。循環的にもECBが利上げを開始した年が参考になるはずだ。

そして、米国に続きECBが利上げを開始した1999年や2005年に、日本株のPER(赤字企業を除く来期予想ベース)は2割5分前後も拡張した。今年の日本株のPERは上昇すると考えるべきだろう。

当社では、来期業績は約8%増益と集計しており、PERの拡張と合わせれば、3割強の上昇で、日経平均は3万円に達してもおかしくない。

ただ、2018年に3万円に到達するペースで試算すると、日銀の金融システムレポートに掲載されるヒートマップで、上昇ピッチが速すぎると警告される公算だ。日銀の上場投資信託(ETF)買い入れ策の継続に疑問符が付くと、PERの拡張が継続しにくい。よって、2018年度末頃に3万円に達成するペースだと筆者は予測している。

*木野内栄治氏は、大和証券投資戦略部のチーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2004年から11年連続となる直近まで、市場分析部門などで第1位を獲得。平成24年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の理事も務める。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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