August 19, 2018 / 1:20 AM / 3 months ago

コラム:ドル高と新興国危機、蘇るグリーンスパン氏の警告

[ロンドン 15日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)議長だったグリーンスパン氏は20年前、「世界で重圧が高まっている中で、米国が影響を受けずに繁栄のオアシスであり続けられる保証はない」と警告した。

 8月15日、米FRB議長だったグリーンスパン氏(写真)は20年前、「世界で重圧が高まっている中で、米国が影響を受けずに繁栄のオアシスであり続けられる保証はない」と語った。ワシントンで2010年4月撮影(2018年 ロイター/Kevin Lamarque)

ドル高やトルコ金融危機で新興国市場が深刻な内部崩壊の危機にさらされている現状をみると、グリーンスパン氏の発言は今日でも重要な意味を持つ。FRBはいつまで単独で利上げを続けることができるのだろうか。

1998年と同じ流れになるならば、まもなく事態は一変する。グリーンスパン氏の発言は98年9月4日だが、FRBはその数日後に利下げに踏み切り、ドルは数カ月間ではあったが下落した。

グリーンスパン氏が挙げた「重圧の高まり」の要因は、米金利上昇とドル高に端を発する世界的な金融の引き締まりであり、新興国市場が今日抱える問題と根源は全く同じだ。

世界金融危機後に金利が0%近くに据え置かれたことで、借り入れは世界的に過去最高水準にある。また、FRBが2015年以降、緩やかながら確実に利上げを進めた結果、米国債利回りと借り入れコストは世界金融危機以降で最も高くなっている。

これは危険な組み合わせで、FRB当局者は口では逆のことを言うが、今後の金融政策決定でこうした要因を間違いなく考慮に入れるだろう。新興国市場の経済が軒並み悪化した場合、FRBは短期金融市場や政策当局者が示唆するように、年内にさらに2回、来年には3回の利上げを実施するだろうか。

グリーンスパン議長率いるFRBは、ロシア金融危機やロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の経営破綻で市場が動揺したため、1998年の9月、10月、11月にそれぞれ相次いで利下げした。安全資産とされる円はこの年の10月に18%上昇し、月間としては30年ぶり高い上昇率を記録した。

<システミックリスク>

1998年と同様に米経済は現在、ハイテクブームを謳歌しており、政策当局者は低いインフレ率と長期金利の低下、イールドカーブのフラット化に困惑し、新興国市場のドル建て債務は史上最高となっている。トルコ危機は当時のロシア危機と重なる。

歴史がそっくりそのまま繰り返すことは稀だが、共通点はあるものだ。特定の金融機関や市場の機能不全が金融システム全体に波及して危機を引き起こすシステミックリスクは、現在の方が小さいだろう。世界金融危機とその後の規制強化により金融システム全体の借り入れが縮小しているためだ。しかしドルのためにこうした構図は成り立ちにくくなりそうだ。

FRBのまとめによると、ドルの新興国市場通貨に対する実効レートは昨年1月以来の水準に上昇している。

重要なのは過去最高水準からそれほど遠くないという点だ。昨年1月の水準を抜けば、FRBが指数の算出を開始した1995年以来であり、恐らくは1980年代半ばのプラザ合意以降の最高水準となる。

国際決済銀行(BIS)によると、新興市場国のノンバンクに対するドル建ての与信は今年初めに3兆6800億ドルと過去を更新し、借り手の負担は増している。

ドルは4月以降に8%上昇、10年物米国債の利回りは今年に入ってから50ベーシスポイント(bp)近く上がり、2年物米国債の利回りも75bp上昇して2.70%近辺と約10年ぶりの高水準だ。

借り手にとって心配なのはドル高に一服の兆しが見えないことで、特に対人民元では節目の1ドル=7.00元が視野に入った。

また市場全体にとって気がかりなのは危機の「伝染」の兆候が顕在化し始めていることで、少なくとも投資家はヘッジを増やしている。

市場のゆがみを示す、シカゴ・オプション取引所の「スキュー指数」は先週159と過去最高を更新した。セマフォ・マクロのイオアン・スミス氏によると、1990年以降に同指数が145を超えたのは9回だけ。1998年10月と2006年3月に140を超えて急上昇したが、いずれのケースでも市場は2000年と2007─08年にピークを付けた。

スミス氏は先月のノートで「スキュー指数は今度も大きな潮目の変化の前兆になるのだろうか」との問いを発し、目先の相場下落に備えるのは根拠のあることだとしている。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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