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コラム:ユーロ高に伴うECBの政策不透明感、市場は歓迎
2017年8月30日 / 06:20 / 3ヶ月後

コラム:ユーロ高に伴うECBの政策不透明感、市場は歓迎

[ロンドン 29日 ロイター] - 29日の外国為替市場で、ユーロ/ドルがおよそ2年半ぶりに1.20ドルの大台を突破した。欧州中央銀行(ECB)が9月の次回理事会でどう反応するか疑念が出ているが、今回に限ってみればほぼすべての投資家は、ECBの政策を巡る不透明感の高まりを歓迎するだろう。

 8月29日、外国為替市場で、ユーロ/ドルがおよそ2年半ぶりに1.20ドルの大台を突破。ECBが9月の次回理事会でどう反応するか疑念が出ているが、今回に限ってみればほぼすべての投資家は、ECBの政策を巡る不透明感の高まりを歓迎するだろう。写真はユーロマーク。フランクフルトで2012年1月撮影(2017年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

北朝鮮によるさらなるミサイル発射やトランプ米政権の迷走に伴う経済改革期待の後退に、9月が歴史的に荒れる時期だという事情も加わり、金融市場のボラティリティはじりじりと拡大している。

この点でECBが債券買い入れ規模の縮小を先送りすれば、市場に安心感が生まれる。

ECBの政策担当者は、ユーロ圏経済が過去6年間で最も強くなっていることを踏まえ、債券買い入れの縮小を開始し、これまで景気回復の主な支えとなってきた大規模金融緩和の解除を徐々に進めたいと考えている。

債券買い入れが始まったのは2015年3月で、それ以来の総購入額は約2兆3000億ユーロに達した。来年早々には買い入れ縮小に着手すると予想されているものの、物価上昇率と予想物価はいずれも2%よりもずっと低い。

そうした中でのユーロの値上がりは、金融政策の「正常化」の試みを難しくしてしまう。実質的な金融引き締め効果でテーパリング(段階的緩和縮小)の緊急性を低下させ、ただでさえ弱い物価上昇圧力を一段と下押すからだ。

BNPパリバのエコノミストチームによると、10%のユーロ高は向こう12カ月で物価上昇率を0.5%ポイント近くも押し下げる効果を持つ。

7月のECB理事会当時、ユーロ/ドルは1.15ドルだったが、ドラギECB総裁は為替レート上昇が政策担当者の「ある程度の注意」を引き付けていると発言していた。

そして29日に2015年1月以来となる1.20ドル超えを達成したことで、ユーロの年初来の対ドル上昇率は15%となり、実効レートもほぼ5%上がった。このペースなら、年間上昇率は03年以降で最も大きくなる。

先週の米ワイオミング州ジャクソンホールの経済シンポジウムで、ドラギ氏はユーロ相場や当面の政策運営方針には言及しなかった。もっともこのようにドラギ氏の姿勢に関する手掛かりが乏しいことよりも、米連邦準備理事会(FRB)が追加利上げとバランスシート圧縮に慎重に見えることが注目され、米国債利回りとドルが下がっている。ある意味では、ECBはユーロ高を止める力を持っていない。

特に株式市場の投資家は、ユーロ高によってECBがテーパリングを先送りすると期待するだろう。ドイツ銀行によると、ユーロの実効レートが10%上がるごとに、域内企業の1株利益は5%減少する。この夏には今年通期の企業利益見通しがマイナス圏まで下振れした。

03─04年にかけて以来の10カ月という長きにわたって月間ベースで上昇を続けてきた世界の株式は、8月は下げる見込み。S&P総合500種の予想下落率は1%と、昨年10月以降で最悪になりそうだ。しかしユーロ圏の株式はユーロ高のためにもっと大きな2%安を記録しようとしている。

中央銀行が、潤沢な流動性を供給し続けることがもたらす長期的なリスクは自明だ。つまり資産バブルが醸成され、企業や家計、金融市場のレバレッジが高まり、低リターン環境を背景に投資家はよりリスクが高く、流動性が乏しくい資産や市場へ分け入っていく。

それでも短期的に見ると、流動性供給の波がほとんどの市場を浮揚させ、信用スプレッドはタイト化し、新興国通貨は堅調に推移するとともに、先進国でも債券価格が上がり、株価も過去最高値近辺にあるにもかかわらずしっかりした値動きを維持している。

ECBが政策変更しなければ、今のこのような状況をもうしばらく続ける上で大いに役立つだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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