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コラム:独連立交渉が決裂、市場の隙を突く欧州政治危機の再燃
November 21, 2017 / 6:51 AM / 24 days ago

コラム:独連立交渉が決裂、市場の隙を突く欧州政治危機の再燃

Jamie McGeever

 11月20日、世界の金融市場にとっては、予期せぬ皮肉めいた展開だろう。ドイツの連立協議が決裂したことで、5月にエマニュエル・マクロン氏が仏大統領選に勝利してから鳴りを潜めていた欧州の政治不安が突如、再燃している。写真はメルケル独首相。ベルリンで2日撮影(2017年 ロイター/Hannibal Hanschke)

[ロンドン 20日 ロイター] - 世界の金融市場にとっては、予期せぬ皮肉めいた展開だろう。ドイツの連立協議が決裂したことで、5月にエマニュエル・マクロン氏が仏大統領選に勝利してから鳴りを潜めていた欧州の政治不安が突如、再燃している。

なぜ皮肉なのかと言えば、9月の独総選挙は、今年行われる欧州選挙のなかでも、市場を混乱させない、もしくはユーロ圏の結束を脅かさない数少ない選挙だと広く思われていたからだ。

今のところ、市場は2017年のプレーブックに従い、戸惑いはほとんど見られない。20日午前のユーロ圏市場は下げたものの、堅調な経済成長や企業業績、そして縮小傾向ではあるが継続する欧州中央銀行(ECB)の金融緩和策が支えとなって持ち直したようだ。

もし昨年が何らかの教訓となり、経済状況がさまざまな政治不安に勝るのであれば、今回の市場の動きは、向こう数週間、あるいは数カ月間におけるユーロ圏市場の動向を示すことになるだろう。

とはいえ、年の瀬に思わぬリスクが浮上しているのかもしれない。1年前に相当高まったユーロ圏政治へのリスクプレミアムが、実質的に取り除かれたと、一部の資産運用大手がロイターに語ったのはわずか先週のことだというのに。

思い出してほしい。2017年はオーストリア、オランダ、フランス、ドイツ、さらにはイタリアでも選挙がある可能性のあったことから、欧州の「政治リスク」が金融市場にとって最大の脅威の1つだと、1年前は考えられていた。

極右や反ユーロを掲げるポピュリスト政党が相次いで勝利し、ユーロ圏の結束を脅かすと懸念されていた。政治に対するリスクプレミアムは、単一通貨ユーロや周縁国の国債といったユーロ圏の資産に組み入れられ、一部の投資家はユーロ圏崩壊を想定して取引を行っていた。

ユーロは昨年第4・四半期、対ドルで6.5%下落し(四半期ベースで約2年ぶりの下落率)、イタリア国債とドイツ国債の利回りスプレッドは昨年10月から今年3月のあいだに65ベーシスポイント吹き飛んだ。

だがそうしたことは全くドイツの懸念材料とはならず、またどちらの場合も長続きはしなかった。

フランス大統領選でマクロン氏が勝利した後、ユーロ圏の政治的・経済的統合深化への気運は、9月にメルケル氏が独首相に再選され、欧州の政治的指導者であり続けることが分かると一段と高まった。

政治リスクは低下し、経済がますます強くなるなか、2017年にかけてリスクプレミアムはユーロ圏資産からしぼんでいった。ユーロ崩壊の見方は、とりわけマクロン大統領誕生後に消え失せた。

「1年前の今なら、マクロン氏が勝利するとは全く予想していなかった。欧州の精神に実に有意義な影響を与えた」。運用資産残高が6兆ドル近い米資産運用大手ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は先週、ロイターサミットでこう述べた。

<どこに向かうのか>

だが、事はそう簡単に運ぶかどうかはまだ分からない。メルケル首相は4期目を務めることになるだろうが、4週間以上に及ぶ交渉の末、企業寄りの自由民主党(FDP)が予想に反して連立協議から撤退したため、もはやそれも定かではない。

突如として、欧州の中心部に危機が発生した。欧州で最も強い経済基盤を持ち、欧州の政治的指導者であるドイツにおいてだ。投資家たちが今年はもう気を緩めようとしているまさにこのタイミングで、懸念が思いもよらぬところから突如、頭をもたげた。

必要な協力をまとめることができると仮定するのであれば、最も可能性が高いのは、メルケル氏が少数与党政権を率いることだ。あるいは、再び選挙を行うことだ。どちらにせよ、同氏の影響力は弱まることになる。

ドイツ国内においては、政治的まひにより、財政刺激策の見通しが来年へ後退するだろう。また、ユーロ圏の共通予算や銀行同盟強化、労働市場改革といった分野における欧州経済改革協議も滞ることになる。

金融市場の観点から言えば、メルケル首相とマクロン大統領はまさに適切な時期に仏独の軸を強化していた。欧州経済は「ユーロブーム」のさなかにあり、企業業績の伸びは米企業のそれを上回っている。フランス、オランダ、オーストリアの選挙における極右政党の脅威はことごとく現実のものとはならなかった。

だが突然、メルケル氏とマクロン氏のパートナー関係に暗雲が漂い始めた。右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」には追い風となり、リーダー不在の舵なきドイツは、長引く英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)交渉を一段と混乱させる。

こうしたことを背景に、投資家はユーロ圏資産に再びリスクプレミアムの少なくとも一部を上乗せすることを考えるかもしれない。通貨ユーロ、ユーロ圏の株式、スペインやイタリアのような周縁国の国債、これらは全て今年好調な成績を残しているが、今から年末にかけて圧力にさらされかねない。

とはいえ、もう1つ皮肉な展開としては、これらのうちのどれかの市場が下落した場合、それは他の市場ひいては経済全体への打撃を和らげる可能性がある。つまり、ユーロの下落だ。

ユーロ安はユーロ圏企業の業績を押し上げるため、ユーロ圏の株式市場は海外投資家にとって魅力が増す。また、輸出においては競争力を高め、ユーロ圏経済を押し上げ、「ユーロブーム」を持続させることになる。

これは長期的な展望だ。短期的には、市場は予想していたよりも年末にかけて不安定になるかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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