December 9, 2015 / 7:17 AM / 4 years ago

コラム:「テロとの長き戦い」から西側が学ぶべき教訓

[7日 ロイター] - オバマ米大統領が6日夜行ったスピーチの背後には、不愉快な現実がある。「9.11」米同時多発攻撃以来、欧米諸国はイスラム主義武装勢力を相手に2種類の戦いを進めてきた。2つはある意味で別々ではあるが、深く絡み合っている。

 12月7日、単にイスラム主義武装勢力に対する欧米諸国の守りを固める一方で中東を炎上させるに任せるというのは、現実的には選択肢の一つではない。過去15年間の欧米諸国の行動の多くは、状況はさらに悪化させるだけだった。写真は乱射事件が発生した米カリフォルニア州サンバーナディーノで警戒にあたる警官。2日撮影(2015年 ロイター/Mike Blake)

一方は、欧米諸国を攻撃から守る戦いであり、これは実のところかなり成功している。だが他方の戦い、つまり中東及び周辺地域の状況を落ち着かせ、過激な武装グループに反撃する戦いについては、惨憺たる状況が続いている。過激派組織「イスラム国」などのグループとそのイデオロギーを打倒するためには、この2つの作戦を何とかして調和させなければならない。

先週カリフォルニア州サンバーナディーノの福祉施設で起きた乱射事件は、9.11以来、米本土で起きたジハーディスト(聖戦士)による攻撃として最大の犠牲者を出した。このような9.11以降に発生した攻撃による死者は合計45名。いずれも無辜の犠牲者だが、強い懸念と高い関心が注がれるわりには、数字自体は比較的少ない。

こうした攻撃の大多数は、国内で立案された計画によるものであったと思われる。ただし多くの場合、実行犯は国外の武装グループに刺激を受けており、なかには直接そうしたグループとの接触が見られることもある。

米国内での攻撃がこれほど少ないのはなぜか。理由は複数ある。単純に、中東などから距離が離れており、また空路での移動では保安検査が厳しいことから、外国からの攻撃者が侵入しにくい。また、米国内のムスリム住民は、特に欧州に比べると、依然として社会への統合が進んでいることもある。警察などのテロ対策も大規模であり、比較的効果を上げている。また、他国での攻撃により計画が中断されることもあれば。戦闘員自体が無能だったとも言える。

ただ、現旧治安当局者が認めるように、これらの多くは幸運に恵まれたにすぎない。

パリ同時攻撃が示したのは、過去10年にわたる中東での戦争が、我が身にはね返りつつあるということだ。なるほど、パリ同時攻撃を実行したのは主として欧州生まれ、もしくは欧州在住の犯人だったかもしれないが、その計画の裏にはシリアとの明白なつながりがある。

欧州大陸に中東の戦火を逃れた難民が押し寄せるなか、一握りの戦闘員が密かに紛れ込むことを防ぐのは、まず不可能である。もっとも、米英両国の場合は、こうしたことはあまり心配する必要はない。国境管理がはるかに容易だからだ。

単に欧米諸国の守りを固める一方で中東を炎上させるに任せるというのは、現実的には選択肢の一つではない。過去15年間の欧米諸国の行動の多くは、状況をさらに悪化させるだけだった。

特にイラクとリビアでは、軍事力によって独裁政権を倒したものの、それに代わるよい代替案はなかった。シリアでは、欧米諸国はさらにひどい失敗をした。反体制派がアサド大統領に対して蜂起することを促しつつ、政権転覆を達成するための十分な支援を行わなかったのだ。結果として生じた不安定さが、イスラム国がのさばる絶好の環境を与えてしまった。

その結果は惨憺たるものだ。世界全体で、武装勢力の攻撃による犠牲者は9倍に膨れあがった。ほとんどすべてが中東及びアフリカの比較的少数の国々に集中している。

だが、状況は必ずしも多くの人々が考えているほど悪いものではない。確かに、イスラム国がイラク及びシリアで支配している地域の広さには頭を抱えてしまう。だが、空爆と現地勢力の努力のおかげで、その拡大はほぼ停止している。結果としてイスラム国がその「無敵神話」を維持することははるかに困難になっており、特にイラクにおいては地歩を失い始めている。

イスラム国と、同グループが支配するラッカ及びモスル周辺の都市拠点は例外だが、主要都市周辺での本格的な支配地獲得という点では、イスラム主義グループは意外なほど成功していない。

アフガニスタンでは、タリバンが数時間以上にわたって本格的な都市拠点の確保に成功したことは一度もない。ナイジェリアのボコ・ハラムも、また2008年にムンバイであれほど残虐な攻撃を行い、自国内ではさらに頻繁にターゲットを攻撃しているパキスタンのさまざまなグループも、やはり状況は同じである。

これらの国々には弱点もあろうが、今日では、史上かつてないほど都市化が進んでいる。少なくとも今のところ、各国政府は都市を維持する能力を持っているし、住民はイスラム主義武装勢力の支配下に入りたいとはほとんどまったく思っていないようである。終わりなき攻撃による人的コストは大きく、攻撃のターゲットに事欠かない都市に戦闘員が侵入することを止めるのはほぼ不可能だが、都市を丸ごと奪われる可能性は低いように思われる。

米国及びその同盟国にとって、イスラム国をもはや主要都市を保持できない状態に追い込むだけでも成功と言えるだろう。だがそれには時間がかかる。特に、モスルやラッカなどのスンニ派住民が、バグダッドやダマスカスのシーア派優位の政府の支配下に入って、虐げられるリスクを取るよりは、イスラム国のほうがマシかもしれないと考えているだけに、なおさらである。考えを変えるよう彼らを説得するのは容易ではなかろう。

だが、外部からの介入がそのような成功を達成した例が1つある。ソマリアだ。米国の攻撃及び諜報活動に支援された現地のアフリカ人勢力が「アル・シャバブ」武装勢力を、まずモガディシオから放逐し、今はさらに広い範囲から排除している。

オバマ大統領が6日説明した戦略は、このモデルに非常に似ている。そう、これから少数の米軍地上特殊部隊がシリア及びイラクに派遣されるだろう。どちらにおいても、現地の能力構築が主眼となる。

過去15年間の教訓が何かあるとすれば、欧米による介入の規模が拡大すればするほど効果は薄れるということだ。いずれ欧米の勢力は出て行くと誰もが知っているために、持続的な効果を達成することが難しいのである。

この面で、対象を限定した空爆は有効だろう。欧米諸国は長期的な戦略という点ではお粗末かもしれないが、軍事力で構造・システムを破壊することには長けている。イラクとリビアでは恐らく成果より悪影響の方が大きかったが、リアルな国家として機能したいというイスラム国の希望には大きな打撃を与えている。

だがこの戦略に立脚するためには、放っておけばイスラム国が支配してしまう地域に、きちんと機能する国家が必要だ。道のりは遠い。特にシリアの場合、以前から域内外の大国が、広汎な地政学的・イデオロギー的な対立に基づいてどちらかの当事者に加勢することによって、紛争をいっそう悪化させてきた。

武装勢力に対する2つの相互に関連する戦い、つまり欧米諸国での攻撃を防止し、現在の紛争地域を安定させる2つの戦いを結びつけるものは、結局のところ「統合」という一つの言葉で表現される。

ここで「統合」という言葉を使うからといって、必ずしも「文化的な統合」を意味しているわけではない。もちろんそれも重要ではあるが、筆者がこの言葉で表現したいのは、イラク及びシリアで居場所を失った集団であれ、米国及び欧州で暮らすムスリムであれ、潜在的な武装勢力を生み出す母体となっている人々が、自分の居住する国民国家から何か受け取るものがあると感じられる状況である。

米国・欧州では、これはさほど難しくない。相対的に見れば統合が弱い新規の移民であっても、各種の給付・手当や、就業・教育などの機会、法の支配といった点で得るものは多い。結局のところ、そもそもそうした利点があるからこそ、多くの移民がやってくるのだ。

イラクやナイジェリア、そして特にシリアといった国々では、このような社会契約を再構築することは、はるかに困難を極めるだろう。米国としてはどうしても好きになれないタイプの連中との不愉快な妥協・取引が必要になる。だが、不可能ではない。本当に効果的な戦略を描くならば、そうした構造を築くことがその柱となっている必要がある。

もちろん、確実に追跡して制圧する必要のある狂信的な集団はいるだろう。だがそれは、はるかに対処しやすい問題である。

簡単ではないかもしれない。特に、欧米諸国とその同盟国自体が、往々にして非効率的であり、明らかに偽善的で、実にたくさんの失敗を犯しがちであることを考えれば、なおさらである。

だが、それでも全体として見れば、欧米諸国とそれらが作りだすグローバル化された世界は、イスラム国やその同類が提供するものに比べ、やはりはるかに魅力的な生活の場なのだ。

*同コラムはシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」のサイトに掲載されたものです。

*筆者はロイターの防衛担当記者。現在休暇中で、PS21の理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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