[香港 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米自動車大手フォード・モーターF.Nの上席幹部が、中国において、商用車の電気自動車(EV)に焦点を絞るという戦略転換をロイターに明らかにした。同国の新たなディーゼルエンジン規制は、現在国内メーカーが支配する世界最大の自動車市場に風穴を開ける好機となる。
商用配送車両のEV化は、フォードが中国政府の販売割り当てを満たす一助となるかもしれない。生産プラットフォームも中国本土の消費者に人気のスポーツ用多目的車(SUV)に再利用できる可能性もある。だがそれは、フォードの現地パートナーとバッテリー供給の確保状況によるところが大きい。
中国政府は深刻な都市部の大気汚染を削減し、石油輸入を抑え、そして国内EVメーカーを発展させようとしている。政府のプレッシャーを受け、自動車メーカーはEV量産の準備を整えている。
フォードのような海外自動車メーカーにとって、問題点は人気モデルの大半が大型SUVであることだ。誰も買わないEVを生産させられるのでは、という懸念を抱いている。
フォードの打ち出した解決策はまるで、隣接市場に対する奇襲攻撃のようだ。中国では、何百万台という中型トラックや商用バンが、排気ガスをまき散らしながら通りを往来している。
中国政府は、EV乗用車の販売目標と同じくらい積極的に、ディーゼル燃料などを使う従来の商用車を、もっと早くEVに取って代わらせ、道路から一掃したいと考えている。
中国の新規制は、フォードが中国販売を回復する後押しとなるかもしれない。同社の中国販売は今年1月─8月に、前年同月比で6%減少した。販売低下の大半は普通乗用車を生産する合弁事業からきている。 その一方、フォードのSUV「エベレスト」などを生産する江鈴汽車000550.SZとの合弁会社は売り上げを同16%伸ばしている。
規制当局が新ルールをどう解釈するかによるが、フォードと江鈴汽車によるEV生産は、2019年までに年間販売台数の10%を「新エネルギー車」にするという中国政府の要求を考慮したものかもしれない。また、フルーツジュースを運ぶ商用トラックのプラットフォームは、SUVの車台として完璧にフィットするだろう。
しかしフォードと江鈴汽車は、ライバル社に先駆けて新モデルを市場投入しなくてはならないだろう。そのためには、バッテリー供給の確保が決定的に重要となるかもしれない。一部の中国国内メーカーは、すでにリチウム鉱山やバッテリー工場に投資しているが、十分な供給が得られないのではと危惧している。
フォードは目的地に到達することができるだろうが、アクセル全開で走り続けることが肝要だろう。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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