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コラム

コラム:現実味を帯びてきた中国と日本のドル売り介入

[オーランド(米フロリダ州) 9日 ロイター] - ドルの上昇は多くの国にとって、あまりに大幅かつ急速になっている。

 9月9日、ドルの上昇は多くの国にとって、あまりに大幅かつ急速になっている。写真は米ドル札。7月17日撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

そして世界第1位と第2位のドル準備保有国である中国と日本は、近いうちに為替介入を通じてこの一部のドルを売却し、これまで1年にわたって続いてきたドル高の流れに歯止めをかけようとするかもしれない。

米連邦準備理事会(FRB)の積極的利上げによって米国と他の世界、特にアジアとの金利差が拡大したことがドルを主要通貨に対して押し上げる役割を果たしてきた。中国人民元は対ドルで7.00元近辺と2年ぶりの安値に沈み、円に至っては1ドル=145円前後と24年ぶりの円安ドル高に振れている。円の対ドル下落率は年初来で20%、昨年初めからで30%と、G3通貨としては驚きを誘うほどに大きい。

ドル全面高を受け、インドやインドネシアといった幾つかのアジア諸国は今年に入って自国通貨を買ってドルを売る為替介入に動いている。

中国と日本も、FRBのタカ派姿勢に正面から対抗する形で大幅な利上げに動かないとすれば、自国通貨を支えるには強力な為替介入を駆使するしかないのではないか。そしてそうなれば、世界の金融市場に波紋を広げる可能性がある。

両国は大量に米長短期国債を保有しているので、まず米国債市場がより不安定化しかねない。アジア地域の他の中銀も追随してドル売りを迫られた場合、これらの通貨が急変動する展開も想定される。

中国人民銀行と日本銀行がそれぞれ保有する外貨準備は3兆0550億ドルと1兆2900億ドル。合計すれば、世界全体の外貨準備約12兆5000億ドルの3分の1を占める。

両国とも、もう何年も直接的ないし公式にはドル売りとドル買い双方の為替介入はしていない。

しかし外交関係評議会シニアフェローで元米財務省高官のブラッド・セスター氏は、日中による直接為替介入は「明白な可能性」として存在し、市場の注目度は高まる一方だと指摘する。

セスター氏は「他のアジア諸国は今年、外貨準備を売却している。だが日本と中国の場合はずっと重大な意味がある」と述べ、人民元と円の値動きはドルの幅広い価値に影響を及ぼし、他のアジア通貨にかかる圧力が増大してもおかしくないとの見方を示した。

<不胎化が鍵>

日中がドル売りに乗り出すとして、その「出発点」は異なる。円は変動相場制で、人民元は管理相場制だ。また中国の方が日本よりも金融緩和を進めている。それでも両国は同じ結論、つまり自国通貨をてこ入れしなければならないという考えにたどりつくだろう。

そのてこ入れ手段は、政治面と資金面の問題をとりあえず除外すれば、基本的にドルを売って自国通貨を買う直接為替介入が最も効果を発揮する。

とはいえ、こうした介入を「不胎化」しない限り、効果は限られるかもしれない。不胎化しなければ、自国通貨買いは国内金利を実質的に押し上げ、人民銀行と日銀が現在実施している金融政策に逆行してしまう。

人民元と円の軟調ぶりは、中国と日本が持つ介入資金規模の大きさゆえにニュースをにぎわせている。ただインド、台湾、シンガポールの保有外貨準備を合計しても1兆4000億ドルに達する。

インドルピーとフィリピンペソが過去最安値まで下がり、マレーシアリンギも1998年以降で最低水準となっている以上、アジア諸国の政策担当者はこうした通貨情勢がインフレの面で「火に油を注ぐ」事態になっていると認識している。

バンク・オブ・アメリカのアナリストチームは6日、「このような背景を踏まえると、アジアの各中銀が通貨下落にブレーキをかけ、市場の乱高下を抑えるために介入したとしても何ら不思議ではない」と記した。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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