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コラム:大相場来るか、ITブーム前夜と酷似=木野内栄治氏
2016年4月12日 / 02:21 / 2年前

コラム:大相場来るか、ITブーム前夜と酷似=木野内栄治氏

[東京 12日] - 最近の不透明感の源は、中国を中心に2007年頃までに構築された投資、債務、設備の3つの過剰だと筆者は考えている。

例えば、中国の鉄鋼の余剰生産設備は日本の生産設備の4倍程あると言われる。余剰生産能力を輸出に振り向けたい状況が、中国当局による元安誘導の動機と受け止められている。あるいは、シェール開発が進んだのも2008年頃までの原油価格高騰が背景で、同時に中東・ロシアでも能力増強が進んだことから今更減産には応じにくい状況だ。

また、一時の欧州銀の「CoCo債(偶発転換社債)」に対する不安も、リーマンショック前に作られたアセットに対する不良債権処理やデレバレッジが不十分だったことが遠因だろう。

実は日本も例外ではなく、シャープ(6753.T)が1兆円の国内設備投資を決断したのも2007年だったし、前期に赤字に転落した総合商社各社が資源ビジネスを結果的に過剰に拡大してしまったのもこの時期だ。

このように、年初から次々と襲ってきた悪材料の多くは、ブラジル・ロシア・インド・中国の新興4カ国(BRICs)ブームのころに起源がある同根の問題だと言える。あの頃は世界経済が大きく拡大すると誰もが思ったのだ。

<大天井から9年目に底を入れるパターン>

こうした過剰設備などが問題であるならば、かつての日本における過剰債務や過剰設備の解消プロセスが参考になる。

日本の過剰もバブルの天井である1989年ごろまでに多くが形成された。現在は中国株の大天井である2007年から9年目なので、日本で言えばバブルの大天井である1989年から9年目の1998年頃と同じ時期にあたる。

状況としても資金が日本から欧米に逃げて円安が進んだことが、現在の中国からの資金逃避・元安圧力と類似している。市況としても、原油価格の十数年来の底割れなど類似点が指摘できる。

1998年はロシアがルーブルを切り下げて混乱が極まり、国際協調的な金融緩和などが講じられて日本の通貨安が終わった。今回も人民元の切り下げが行われれば、米国も金融緩和に追い込まれる可能性があるし、そうなる前に国際協調的な景気刺激策が模索されている。1998年との類似性が指摘できよう。

なお、このバブル的な株価の大天井から9年目頃に株価がいったん底入れるパターンは、日本のバブル崩壊後の1998年以外にも観測できる。

例えば、1929年の米国株の大天井に対して9年後の1938年のNYダウは、前年から半値となる暴落で底入れた。1966年の米国株の大天井の後には、ニクソンショックのドル切り下げを経て、8年後の1974年に底入れた。2000年のナスダック指数の大天井に対して、ドル安を経て、2009年にリーマンショックの底を入れている。

1974年や2009年、そして1998年の底入れではいずれも経済政策の国際協調によって危機を脱した。今回も5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)において、財政刺激策で国際協調がまとまれば世界的に株式市場は上昇に転じると考えられる。現在は1998年のITブーム前夜と類似していると言える。

<余剰資金は電池やEVなどの新技術へ>

ただし、今後世界的な株高が示現したとしても、国際的に余剰資金が向かう先は過剰な設備を抱えた既存の産業ではなく、新しい産業となりやすい。1998年以降がITブーム相場だった一因は、日本のお家芸だったアナログ家電分野は過剰設備があふれ返っていたからだとも言える。

例えば、ソニー(6758.T)は1996年にブラウン管で表面がフラットなテレビを実現した(WEGAブランド)。今考えれば液晶などに注力すべきだったが、それほどアナログ家電の設備や技術はあふれていたのだ。

そして、ITブームでデジタル時代到来を受け入れたソニーはブラウン管のWEGAブランドを諦め、2005年には現在のBRAVIAブランドを構築する。このように設備の過剰解消や陳腐化には新技術への移行や長い年月、そして何よりも企業が諦めることが欠かせない。

今回、資金が向かう新技術の候補として、ロボットや人工知能(AI)、フィンテック、自動運転車、電気自動車(EV)が期待される。まだどこにも過剰な設備がないからだ。

例えば、米テスラ・モーターズ(TSLA.O)の株価が何倍にもなるような相場が示現したとすると誰もがガソリン消費量の減退を意識し、シェール業者は諦めるのだろう。あるいは、中国で自動車の生産能力が年間2500万台も余っているが、これがEV工場などに転換していくのだろう。

なお、テスラ・モーターズの株価は主力のモデルSの出荷ペースが安定した2012年終盤から2年間で10倍近く上昇した。現在米国で人気のSUVタイプであるモデルXのデリバリーが始まったところだが、徐々に出荷ペースが上がってきている模様だ。ここ2年の保ち合いを上放れれば、2年間程度の大きな相場が再現する可能性がある。

そして、2年以内にはモデル3のデリバリーが始まる予定だ。受注は絶好調なので、2年の大相場が2回つながる可能性さえ感じさせる。

<2000年問題に相当する環境規制強化>

さて、1998年との類似性に話を戻すと、2000年にはコンピューターの2000年問題が企業のIT投資を通じIT相場をより大きくした面がある。今回、2000年問題に相当するのは環境規制の強化と低金利だと思う。

米カリフォルニア州には販売車両数の一定割合を環境車(Zero Emission Vehicle:ZEV)とする規制がある。この規制が2018年モデルから厳しくなり、これまでZEVとされてきたハイブリッド車(HV)やクリーンディーゼルなどが認められなくなる。この先もこうした環境規制は世界的に順次厳しくなっていく。

そこで自動車各社はプラグインHV車(充電し30―60km程度をEVとして走行できるHV車。PHV)を中心にEVや燃料電池車の販売を増やさないとならない。実際、2018年モデルは来年夏から生産を始めるので、足元でEVやPHVなどの新モデルの発表が相次いでいる。これらは自動運転機能とも相性が良い。

そして、電池工場の建設が加速している。過剰な生産設備がないからだ。象徴的なのは独ダイムラー(DAIGn.DE)で、昨年1億ユーロを投じて4倍に拡張した工場を、今年さらに5億ユーロを投じて3倍に拡張する。

また、電池の原材料であるリチウム化合物の大半のシェアを握るチリのSQM(SQM.N)、米アルベマール(ALB.N)、FMC(FMC.N)の3社は、日本向け炭酸リチウム価格を2月に15―20%程度値上げしたとみられる。さらに、中国での炭酸リチウム価格は半年で3倍と急騰している。実需を必ずしも反映していないだろうが、過剰のない分野には余剰資金が流れ込む実例だろう。

筆者は、現在がITブーム前夜の1998年と似ており、今回は電池やEVなどに大相場の気配があると感じている。

*木野内栄治氏は、大和証券投資戦略部のチーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2004年から11年連続となる直近まで、市場分析部門などで第1位を獲得。平成24年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の理事も務める。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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