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コラム:「ヒラリー大統領」が日本に求めること=熊野英生氏

[東京 8日] - 米大統領選挙を目前に控え、多くの金融機関関係者が6月の英国ショックを思い出して身をすくめている。直前のメール問題で民主党のヒラリー・クリントン候補が共和党のドナルド・トランプ候補に逆転を許すのではないかという恐怖感からである。

 11月8日、第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は、民主党のヒラリー・クリントン候補が事前の予想通り大統領選で勝利すれば、日本に対しては、米国の肩代わりをできるように、経済力の強化を望むだろうと指摘。提供写真(2016年 ロイター)

仮にそれが現実となると、あの時と同じように選挙直後は為替も株価もオーバーシュートして、そこが底値となるだろう。

本稿は、逆にクリントン候補が以前の予想通りに当選することを前提に書いている。

<次期米大統領に吹く4年周期の追い風>

まず、なぜクリントン候補が大苦戦したのか考えよう。米国通の人は何と説明するかは知らないが、筆者は2015―16年の米経済が不安定だったことが理由だと見る。

この米経済の不安定さは、力量に乏しい雇用に象徴的に表れている。失業率が5%を切っても、中間層の厚みは戻らず、賃金上昇率は最近まで鈍かった。

過去10年間の米経済を振り返ると、大統領選の前年と当年は荒れている。オバマ大統領が当選した2008年は、リーマンショックの年。その前はサブプライム問題があった。2011年と2012年は欧州経済の波乱である。今回は、2015年に中国の人民元切り下げがあり、2016年は新興国が揺らいだ。

この経験に沿って考えると、リーマンショックからの立て直しを期待されてオバマ大統領は就任したが、その対応が不十分だったから、2012年は苦戦した。2016年も同じ民主党のクリントン候補が大苦戦するのは当たり前に見える。

しかし、4年ごとのサイクルでは、その次の大統領の就任年は景気が改善している。2016年も後半になって再加速となっているから、2017年はクリントン候補には比較的恵まれた経済環境になろう。日本経済も米国の追い風で、景気改善に向かうと予想される。

<円安容認は望み薄、内需拡大を要求か>

クリントン候補の外交姿勢は、中国とロシアに対して厳しく、日本など同盟国との連携強化に傾くと思える。オバマ政権の外交姿勢が甘すぎたという反省を色濃くにじませるだろう。

その点で環太平洋連携協定(TPP)推進となっても何ら違和感はないが、クリントン候補には、それができない可能性がある。不支持が高いと不人気政策が取れないという図式からである。

日本にとってクリントン候補の同盟強化は好都合に見えるが、微妙なのは通貨政策だろう。日本の為替介入や日銀の円安誘導は簡単に許しそうにない。これは他の国々に対してもそうだから、日本だけに甘い顔をしないということだろう。新政権の下で、円安が進むとしても2015年までの1ドル120円台とはならないと見る。

リスクとして、クリントン候補が保護主義に走るとの警戒感もあるが、筆者はそれはないと考える。TPPが試金石となって、自由貿易の枠組みには推進姿勢が戻ると見る。TPPに新たな条件を付けて「私が反対したTPPではない」と言って、2017年中にTPPをまとめる可能性もある。米国はプラグマティズムの国だから、戦略的に有利なことは最後に決断すると思う。

新政権が日本政府に要求してくるのは、日本経済が存在感を増すことだろう。米国の肩代わりをできるように、経済力を強化してほしいと望む。財政拡張に対して、より寛容になるという見方もできる。そして成長戦略の推進を支持し、内需拡大を求めるだろう。

オバマ政権の反省は、アジアにおける米国の威光の低下だろうから、新政権はもっと強硬になってもおかしくない。そのとき成長戦略がいつまでも成果を上げないことへの批判が起こると考えられる。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

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*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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