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コラム:黒田総裁再任なら日本経済はどうなるか=熊野英生氏
December 6, 2017 / 5:33 AM / in 9 days

コラム:黒田総裁再任なら日本経済はどうなるか=熊野英生氏

[東京 6日] - 2018年が近づき、筆者のようなエコノミストは近未来予測を求められることが多い。まさしくテーマは、「2018年の日本経済、マーケットがどうなるか」という将来展望である。

こうした予測は、往々にして2018年のイベントを軸に行われる。大イベントは4月に日銀総裁が交代することだ。任期を迎える黒田東彦総裁の次に誰がそのポストに座るかで、金融政策は大きく変わる。

ところが、最近は黒田総裁再任説が頭ひとつ抜けて有力である。そこで、同ケースを軸にして金融政策の展開を考えていきたい。

まず、黒田総裁再任のメッセージだ。黒田総裁は2016年9月に量的・質的金融緩和の総括的な検証を行って、イールドカーブ・コントロールを導入した。おそらく、この枠組みの見直しを安倍晋三政権はあまり歓迎しなかったと思われる。その証拠に、リフレの原理主義者に近い片岡剛士審議委員を新しくボードメンバー(政策委員会)に送り込んできた。案の定、片岡委員は現状維持に反対票を投じた。これは黒田路線へのけん制球である。

ならば、黒田総裁再任は矛盾することにはならないか。筆者は、安倍政権は黒田氏以外を考えてはみたものの、より望ましい人選ができず、黒田氏続投の考えに戻ってきたと読む。あえて黒田総裁再任を選ぶことは安倍政権がイールドカーブ・コントロールを容認したということだろう。さらに言えば、長期国債の買い入れ額を黙って減らしていく「ステルス・テーパリング」をも容認していることになる。

<2%目標は張り子の虎>

黒田総裁の続投でイールドカーブ・コントロールが継続されるとして、2%の物価目標はどうなるのか。この点は多くの人が分かっている通り、長期金利をゼロ%近傍に固定するだけで物価は上がらない。

2018年は生産循環が鈍化するだろうから、物価も弱含む可能性がある。海外経済もそれほど加速せず、米連邦準備理事会(FRB)の利上げペースが年3回程度の緩慢なものになれば、日米長期金利差も拡大せず、円安も進まない。2018年も2017年同様、ドル円は1ドル=108―115円のレンジ内で動く可能性が高そうだ。

消費者物価(除く生鮮食品)は、円安による輸入物価の押し上げの作用が弱まり、前年比も0―1%の伸びで足踏みすると予想される。基本的にイールドカーブ・コントロールは我慢強く日本の長期金利を0%前後に固定して、海外の長期金利上昇を待つ戦略である。だから、日銀が展望レポートで2019年度頃に2%に行きそうだと予想を示しても、それだけで人々の期待形成を上向きに変えることはできない。

つまり、黒田総裁再任は、安倍政権がイールドカーブ・コントロールで弱い景気刺激のまま我慢することに同意したも同然だと理解できる。

<出口政策に着手するか>

黒田総裁再任時のもうひとつの論点は、出口政策の行方だ。黒田総裁の任期が5年延びると、出口政策をますます急がなくなるだろう。これは、緩和政策継続の副作用が日本経済を害することを意味する。

具体的には、マイナス金利が銀行などの収益を圧迫する。すでに大手銀行は人員削減を発表した。その影響が金融仲介機能の低下に及ばない理屈はない。また、債券市場は機能を低下させ、銀行以外でも運用収入の減少に苦しんでいる。出口政策は、ある程度の金利上昇を容認することであるが、それをしないならば広範囲の金融機関を弱体化させる。

さらに、長期金利低下は、財政運営を救う反面、住宅投資を増やす。これは一見好ましいと感じさせるが、すでに供給過剰体質の住宅市場をますますあおることになる。日本はバブル崩壊後、住宅過剰に苦しんだ記憶がある。今度は、バブルが生じなくても麻薬の打ち過ぎで、どうしようもない住宅デフレに陥る。

2018年以降も、異次元緩和を延長すれば、より強い副作用で日本経済の屋台骨がぼろぼろになる。黒田総裁は自分が始めた巨大緩和を自分できっちりと終わらせる責任がある。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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