February 7, 2018 / 5:28 AM / 4 months ago

コラム:ブラックマンデー連想させるパウエルFRBの船出=熊野英生氏

[東京 7日] - 5日のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長就任を挟んで、株式市場が大きく揺れた。ダウ工業株30種平均は2日に前日比665.75ドル(2.54%)下落した後、週明けの5日には1175.21ドル(4.60%)急落。日中には一時1600ドル近く(6.26%)下げるなど、終値でもザラ場ベースでも過去最大の下げ幅を記録した。

その後、6日には急反発し、前日比567.02ドル(2.33%)高の2万4912.77ドルで終えたが、前任・イエレン議長時代の「ゴルディロックス(適温)経済」が、パウエル新議長就任とともに終焉したことは、文字通り「波乱の時代」の幕開けにみえる。

<インフレ懸念の広がり>

ダウが急落する手前で、バブル的な値上がりがあったことは正しく認識されなくてはいけない。バブルは、ハト派のパウエル議長が緩やかな利上げを崩さないという先入観によって築かれていた。

1月分の雇用統計発表がその先入観を打ち砕いたというのは言い過ぎだろう。すでに原油(WTI)の市況は1月に入って急上昇していたので、物価がエネルギー要因で押し上げられることは分かっていた。

雇用統計の平均時給が強い数字となり、インフレ圧力の広がりを示したことはちょっとしたサプライズだが、それは疑心暗鬼を崩すきっかけにすぎない。米長期金利は、もっと手前からじりじりと上昇していた。インフレ圧力は1月に入ってから、すでに潜在的に高まっていたのだ。

<1987年10月の教訓>

焦点になりそうなのは、3月20―21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)である。大方の予想通りに利上げを実施して、どのような見通しを示すのか。2018年中に、3月を含めて4回以上の利上げをするという見通しになると、引き締めを意識させるだろう。

同時に、パウエル議長は安心感を与えるためにどのようなアナウンスメントを出すのだろうか。株価下落が、実体経済に与えるネガティブな影響を大きくみているかどうかも気になる。

思い出される事例は、1987年10月のブラックマンデーである。当時のグリーンスパン議長は就任2カ月目だった。1カ月目で3年ぶりに利上げをして、インフレ懸念への対処に動いた。

当時のダウは値動きが現在とよく似ており、株価が大幅に上昇した後に急落に見舞われた。10月19日月曜日の下落幅は508ドル(前日比22.6%)だった。金融機関には損失が生じ、金融システムにも支障が出始めていた。この時、史上最大の記録となった株価急落に驚いたグリーンスパン氏は、すぐに流動性供給を強化する声明を発表し、不安心理を和らげる。それで株価も底打ちした。「マエストロ(巨匠)伝説」の始まりだった。

パウエル氏は、「ミスター・オーディナリー(普通)」と呼ばれ、その手腕がまだ認められていない。この株価急落は、腕の見せどころだ。

<景気配慮かインフレ警戒か>

では、パウエル議長はどう動けばよいのだろうか。株価急落の原因は、景気が強く、インフレ懸念がない間は利上げを急がなくても済むという安心感が崩れたことにある。景気が強く、FRBが利上げを急いでインフレの芽を摘むと人々が思うから、株価上昇にストップがかかる。

まずは、株価下落が続くと景気に悪影響を及ぼすと警戒感を示すことが先決だ。過度にインフレ警戒をしてはおらず、利上げを急ぐことはしないと不安を打ち消す。パウエル議長がハト派だと思われている点は、株価を支えるのに都合がよい。ただ、インフレ圧力を放置して大丈夫かという疑問は残る。

逆に、株価に不都合なメッセージがあるとすれば、パウエル議長が、タカ派に動かされているという印象を与えることだ。FOMCのコンセンサスがインフレ警戒にシフトして、自分もそれに従うと発言するなら、株価には好ましくない。

難しいのは、インフレ圧力を放置して後手に回るリスクをどう説明するかだろう。もともと景気配慮とインフレ圧力にはジレンマがある(景気への悪影響は、インフレ懸念を抑える効果もある)。インフレ圧力がいったん顕在化すると、景気や株価にマイナスであっても利上げを急がざるを得ない。

さまざまなシナリオを考えると、パウエル議長の選択肢は限られており、最善と呼べる対応は思いつかない。そこをどう乗り切るか。それが問題だ。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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