March 7, 2018 / 7:32 AM / 6 months ago

コラム:超緩和時代の終幕、円安回帰は期待薄=熊野英生氏

[東京 7日] - 2月2日の米ニューヨーク市場から始まった世界的な株式市場の混乱は当面、収束しないだろう。その背景には、保護貿易もあるが、インフレ懸念に対して超金融緩和が終りそうだという警戒感もある。

皮肉なことにそれを後押ししたのは、2017年末に成立した米税制改革法(企業と個人を合わせて今後10年で1.5兆ドルに達する「トランプ減税」)だった。

完全雇用の下で大減税をすれば、需要超過になるのは当然である。長く低金利が続きそうだという「ゴルディロックス(適温)」の状態をトランプ政権は自らぶち壊したことになる。

株価がいくぶん改善してきたのは、米連邦準備理事会(FRB)と市場のコミュニケーションが次第に取れるようになったからだろう。今後、FRBが用意周到にコミュニケーションを図ることで少しずつ株価の安定化も期待できると思われる。2月5日に就任したパウエルFRB議長率いる新体制は、経験値を1つ積んだことになる。

<元に戻らないものは為替>

一方、将来、株価は元に戻ったとしても、戻らないものもある。為替である。

ドル円レートが円高に振れたことで、ドル安という見方もあるが、実効レートではドル高というのが実際だ。なぜかと言えば、円やユーロ以外の新興国通貨でドルが買われているからである。

FRBや欧州中銀(ECB)が2017年までのような超緩和を続けなくなるという予想が、新興国から主要国への資金還流を生んでいる。トランプ減税もそれを後押しする。円もその流れに乗って緩和予想が後退して円高となった。

見方が難しいのは、主要国の超緩和が終わったとして、それが新興国経済の波乱へと直結しない点だ。各国とも割と厚めの外貨準備を持っている。相対的に外貨準備の支払能力が低いのは、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン、そして中国である。

経済状況が悪くならない限り、それらの国の準備不足のような話にはならないだろう。むしろ、通貨下落によって物価上昇圧力が生じて金融引き締めに動くという変化が警戒される。

<一番弱いところから崩れる>

仮に米株価が高値近くまで戻ってくるとすれば、原油価格はどうなるのだろうか。再び原油高が進むことは想像に難くない。インフレ圧力は、まだくすぶり続けるとみるのが妥当だろう。超緩和時代へ戻ることはない。

問題は、いずれ金融引き締め方向への転換がどこかに影響を及ぼしてくるという点だ。米国は、米供給管理協会(ISM)発表の景気指数が製造・非製造業ともに高原状態であり、需要超過に転じている。経済の成熟化が進んでいることは確かだが、耐久力は十分に強い。

むしろ、悪影響が及ぶとすれば、より脆弱な体質の地域となろう。そう考えると、相対的にみて先進国よりも新興国の方ではないかと考えられる。通貨安や原油高といった圧力が新興国の経済に悪影響を及ぼす時、次なる波乱が生じるだろう。米利上げの先行きをみながら、予期せぬところに火種が隠れていないかを点検しなくてはいけない。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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