April 4, 2018 / 9:28 AM / 3 months ago

コラム:内憂外患の日銀、出口を遠くしない緩和手段はあるか=熊野英生氏

[東京 4日] - 黒田東彦日銀総裁の2期目が4月9日にスタートする。相変わらず、黒田日銀の先行きは視界不良である。

まず、黒田総裁再任の意味を再確認しておこう。もしも別の誰かに交代することになっていたならば、黒田総裁の評価と後任者に対する見方はどうなっていただろうか。

仮に黒田総裁が退任となっていれば、物価2%を達成できずに終わった総裁という評価を残しただろう。高過ぎる目標を設定して、道半ばで役割を降りたことが、残念だと語られたに違いない。そして、次の総裁は、重い十字架を背負わされた「悲劇の総裁」とされるところだった。

今回、黒田続投となって、そうした部分は覆い隠されている。黒田総裁も、あと5年間の任期で高過ぎる物価目標を何とか達成しようと思いを新たにしているに違いない。

課題は、目標達成後の出口戦略の着手である。黒田総裁は、10年をかけて、デフレと超金融緩和からの脱却を成功させて、大団円を果たした人物になることを目指すのだろう。

<「トランプ・リスク」の再燃>

日銀に立ちはだかっているのは、トランプ米大統領である。保護貿易色をますます前面に押し出した政策を大統領自身が率先して行っている。米韓自由貿易協定(FTA)の見直しでは、為替介入に対するけん制も入った。この様子から察すると、日本の貿易・為替政策に対しても掟(おきて)破りの対応をしてくるかもしれない。

例えば、日銀が間接的に為替を動かすような巨大緩和を今、目指していたならば、トランプ大統領の怒りを買った可能性はある。不幸中の幸い、日銀はイールドカーブ・コントロールに政策のフレームワークを移行しており、為替操作と呼ばれる筋合いはない。

もっとも、黒田総裁が為替を円安にすることなしに、物価上昇率を2%に近づけることは容易ではない。円安もなく、エネルギー・コストの上昇をも含めずに、インフレ予想だけで物価を上げることは難しい。

中国への米通商法301条発動、鉄網・アルミニウムの輸入制限など商品市況や貿易取引にマイナスが大きい点も気掛かりである。

<リフレ派副総裁とどう向き合うか>

黒田総裁が今後、デフレ脱却に近づいたとき、波乱を生みそうなのは、若田部昌澄副総裁との関係だ。

安倍政権は、巨大緩和の解除をしてほしくはないというメッセージを人事に表わしているようにもみえる。リフレ派の人脈から指名された若田部副総裁、片岡剛士委員、原田泰委員の3人は、出口戦略に対して素直に「イエス」とは言わないだろう。彼らとどう対話しながら政策委員会のコンセンサスを出口方向に導いていくかは難関である。

目先、4月末には展望レポートの改定が注目される。新しいメンバーでの初めての決定会合となるからだ。若田部副総裁は、2019年度に2%を達成するという見通しに賛同するだろうか。

また、反対票を入れ続けている片岡委員との間で若田部副総裁と黒田総裁はどう意思疎通をするのか。片岡委員と若田部副総裁の考え方はほとんど同じで、違っているのは立場だけである。

<オペ手段の多様化なら出口は遠のかない>

4月2日に発表された日銀短観では、大企業・製造業の、国内製商品サービスの需給判断DIはゼロになった。従来、ずっとマイナス(「供給超過」超)が続いていたのが、1990年9月以来のマイナス解消である。いよいよ需給面での物価上昇圧力が新しい段階に入ったようにみえる。

しかし、この状況は別の見方もできる。需給環境が歴史的なピーク圏にあるという見方だ。過去、需給がピークを過ぎると、今度は需給悪化に移行していた。もしかすると、2018年中に需給は悪化に転じるという悪いシグナルかもしれない。

その場合、黒田総裁は、出口を探すことを諦めるだろうか。いや、緩和を講じても、その効果が後に残らないツールを編み出して、一時的な緩和要請に耐えしのぐだろう。普通、資金供給オペの手段を多様化すると、それは出口を遠くしない。期待に働きかける政策は、出口を遠く感じさせる反面、オペ手段を多様化する政策対応で応じるならば、出口の制約とならない。

今後の追加緩和のツールとして、期待に過度に働きかけることなく、景気刺激ができる新型ツールを雨宮正佳副総裁らは果たして考えつくことができるのだろうか。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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