November 27, 2018 / 5:59 AM / 16 days ago

コラム:日本経済の「命綱」、米中貿易戦争に耐えられるか=熊野英生氏

[東京 27日] - 7─9月期の国内総生産(一次速報、GDP)は前期比マイナス0.3%と、今年2度目のマイナス成長となった。2017年の成長率が高かったこともあり、18年は7─9月期時点で0.56%のプラス幅しか見込めない。

 11月27日、第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は、米中通商摩擦の一段の激化が予想される中、米国経済の成長ペースが貿易戦争の悪影響を完全に吸収できるかどうかが問題になると指摘。写真は2018年11月9日、米バージニア州アーリントンで撮影(2018年 ロイター/Yuri Gripas)

10─12月期、さらに19年1─3月期の景気を展望すると、わずか数カ月の間に山ほどイベントが集中しており、見通しが大きくかく乱されそうだ。最も注目されるのは、今週末に迫ったアルゼンチンのブエノスアイレスで開催される20カ国・地域(G20)首脳会合。そこで米中首脳会談が行われる見通しだ。貿易問題で何らかの合意が行われるという観測もあるが、トランプ大統領は強硬姿勢を強めており、楽観は禁物だろう。

12月は米連邦準備理事会(FRB)の利上げが予想されるほか、米国でクリスマス商戦が本格化する。株価の下落が、好調な個人消費を脅かす可能性がある。年末には環太平洋連携協定(TPP)がいよいよ発効する。これで貿易自由化のメリットが意識されれば、日本は年明け1月から始まる日米物品貿易協定(TAG)交渉のけん制材料として利用できるかもしれない。

19年に入ると、日本とEU(欧州連合)の経済連携協定(EPA)の発効や、英国のEU離脱(ブレグジット)など欧州関連のイベントがある。ブレグジットは、3月29日の離脱日までに英議会の調整など混乱が予想される。

<日本が耐えられる円高水準は>

こうした数々のイベントは新しい展開を生み、人々を過度に強気にさせたり、逆に弱気にさせたりするだろう。

その中で、日本経済にとっては円安基調と強い米経済が命綱となりそうだ。筆者は19年10月の消費増税が景気の腰折れにつながらないとみているが、その根拠は外需が総崩れにならず、設備投資と企業収益の増加が内需を支えると予想しているからだ。

ドル円は今年6月以降、109─115円の円安レンジで安定的に推移している。これは同月の米朝首脳会談で、北朝鮮リスクがうまく封じられたからだと筆者はみている。いずれ開催されるであろう2回目の首脳会談は、初回ほど注目度が高くないかもしれないが、トランプ米大統領が北朝鮮の非核化プロセスを前進させようとして、新しいディールを持ち出してくる可能性がある。もしかすると、いったん決裂というショックに見舞われるリスクもあると警戒している。

企業収益は、実際の為替レートが想定よりも円安で着地すると上積みされる。もし北朝鮮ショックが起きればドル円が下落し、企業収益を圧迫する恐れがある。

筆者は、日本経済が十分に耐えられる為替の目安を1ドル=107.40円とみている。

<トランプ減税の賞味期限>

もう1つの命綱である米経済に水を差す可能性があるとすれば、中国との貿易戦争だろう。米国は9月24日、2000億ドル(22兆円)相当の中国からの輸入品に10%の追加関税を課した。その悪影響が色濃く表われないかと心配された10月の米雇用統計は、依然として強い結果だった。米供給管理協会(ISM)が発表する製造業景気指数も高水準が続いている。

だからといって、米中貿易戦争を懸念する必要はないと判断するのは早計だろう。米国は19年1月に対中関税率を25%に引き上げる。トランプ米大統領は11月26日、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のインタビューで、関税引き上げの見送りを求める中国の要請を受け入れる可能性は「非常に低い」と述べた。タイムラグを伴って、米国の輸出入が減っていく可能性は否定できない。

そこで肝要なのは、米経済の成長ペースが貿易戦争の悪影響を完全に吸収できるかどうかである。7─9月期の成長率は年率換算で前期比3.5%(速報値)と極めて強かった。10─12月期、19年1─3月期も3%台の成長ペースが維持されるのであれば、貿易戦争のインパクトは相対的に小さかったと総括できるだろう。

筆者はそう単純ではないと思いつつ、米経済の強さは最終的に持ちこたえるという見方に同意したい。感謝祭前から本格化した年末商戦は好調で、アドビ・アナリティクスによると、ネット通販の売上高は過去最高の78億ドル(約8800億円)に達する見通しだ。少なくとも19年前半まではトランプ減税の効果もあり、3%台の成長ペースを維持できるとみている。

(本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

(編集:久保信博)

熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト (写真は筆者提供)

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

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