December 21, 2018 / 1:50 AM / 3 months ago

コラム:米利上げ早期停止か、それでも円高になりにくい訳=熊野英生氏

[東京 21日] - 米連邦準備理事会(FRB)が、2019年中の利上げ停止に動く構えをみせている。12月18─19日の連邦公開市場委員会(FOMC)で公表されたドットチャートは、2019年の利上げ見通しを従来予想の3回から2回に減らした。中立金利に相当する中長期の金利見通しも、3.0%から2.75%へ下方修正した。

 12月21日、第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ決定を受けて米長期金利は低下したものの、為替相場はそれほど円高に振れていないと指摘。写真は9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に会見するパウエルFRB議長(2018年 ロイター/Al Drago)

一方、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標は、2.00─2.25%から2.25─2.50%へ引き上げられた。中立金利まであと1─2回の利上げで到達する水準であり、2019年のどこかで緩和的ではない状態に移行する。

<円高に振れてもおかしくない>

FRBの姿勢が変化したのは、経済減速に備えてのことだ。足元の景気は絶好調でも、2019年に入るとトランプ大統領による法人減税の効果は一巡し、米経済の成長率は減速してくるだろう。

インフレ率が加速しないという前提で、利上げペースも緩やかにするのが自然である。今回のFOMCを受けて、2019年の利上げは1回、またはゼロ回と予想する市場参加者が増えたため、直後の10年債利回りは2.7%まで低下した。

米長期金利の低下は、為替相場を大きく動かしてもおかしくない。長短金利差が縮小し、米国の景気減速が間近にあるというシグナルになるためだ。金利差縮小は以前から認識されていたことだが、ここまで長期金利が低下すると、景気減速はより意識される。

しかし、ドル/円だけに注目すると、長期金利が低下している割に円高に振れていない。円も買われるがドルも買われ、日米長期金利差がドル/円レートを決める図式にはなっていない。とりわけドルのほうが強く、流れは円安傾向にある。

筆者はこの背景に、東アジアの緊張を一時期高めた地政学リスクの後退があると考えている。米朝首脳会談が行われた今年6月以降、北朝鮮問題は落ち着きを取りした。それからというもの、ドル/円は110円を上回る円安水準が定着している。

この安定した構図が崩れるとすれば、米国経済が実際に減速するときだろう。ドル高は是正され、円高がやって来る。

<原油急落という支援材料>

では米経済が減速するとすれば、いつごろ、何がきっかけになるのか。1つの可能性は、米中貿易戦争だ。両国は2019年3月1日まで協議し、解決策を見出せなければ米国が制裁関税を引き上げる。ほかにも欧州連合(EU)離脱を巡る英国内の混乱など、リスクイベントは来年前半に集中する。

この間に、今年10月以降の米株価下落が個人消費に響いてくる可能性もある。トランプ減税の効果はいずれ剥落するが、そのタイミングがここに重なるかもしれない。

一方で、原油急落という支援材料が出てきたことは注目すべきだ。ニューヨーク市場のWTI(ウェスト・テキサス・インターミーディエート)原油先物は1バレル50ドルを割りこんだ。家計にとって減税と同じインパクトがある。

利上げの早期打ち止め観測が強まってきたことも、米経済にとってプラスと言える。利上げ停止が円高を招くという見方より、米経済を下支えしてドル高が維持されるという側面に目を向けても良いのではないだろうか。長期金利の低下も、停滞する住宅投資の下支えとなる。

米国の景気減速は一気に起きるのではなく、徐々に進む可能性が高いと筆者はみている。その中でドル安/円高が急進するとすれば、ゆっくり変化する米経済に合わせてではなく、大きなイベントの先行きが不透明になったときと考える。

大きなリスクイベントが目白押しの2019年前半は、その点で注意を要する。

(本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

(編集:久保信博)

熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト (写真は筆者提供)

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

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