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コラム:ドル120円へ、衆院選後に再始動か=鈴木健吾氏
2017年10月20日 / 06:37 / 1ヶ月前

コラム:ドル120円へ、衆院選後に再始動か=鈴木健吾氏

[東京 20日] - ドル円相場は9月初旬の1ドル=107円水準から1カ月足らずの間に113円台まで6円もの一方的な上昇をみせた後、しばらく112円台を中心に調整的な動きを示してきたが、ここにきて113円台を断続的に回復、そろそろ動意を強めそうだ。

22日には本邦衆院選を控え、26日には資産購入額の減額が予想される欧州中央銀行(ECB)理事会がある。その頃までには米連邦準備理事会(FRB)の次期議長指名も行われている可能性が高い。

そして31日には日銀金融政策決定会合、翌11月1日は米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が公表される。3日には米10月雇用統計があり、この日よりトランプ大統領がアジアとハワイを歴訪する。目先、材料が満載だ。特に衆院選やFRB議長人事、各金融政策決定会合などは為替相場を動かす要因となり得る。

<衆院選は自民党の勝ち方に注目>

衆院選は、各種世論調査などから自民党の優位が伝えられており、焦点はその勝ち方となるだろう。デフレ脱却を掲げてスタートしたアベノミクスは為替市場で円安材料ととらえられる傾向が強い。定数465議席のうち、自民党が3分の2となる310議席前後を押さえれば、やや値幅を伴った株高・円安反応となろう。

安定多数となる244議席や絶対安定多数の261議席を上回る勝利となった場合は若干の株高・円安反応、過半数の233議席近辺ならほぼ動かず、過半数割れとなれば失望や政策に対する不透明感から株安とリスク回避の円買い反応、という整理で良いのではないか。

<FRB議長人事とドル円シナリオ>

9月末にトランプ大統領が「今後、数週間以内に次期FRB議長を決定(指名)する」と語ったことから、にわかに次期FRB議長人事が注目を集めている。10月12日にはケリー大統領首席補佐官が結論は「まだしばらく先」と発言したり、18日には大統領報道官が「数日以内に発表」と述べるなど、いつ発表されるかは定かでないが、トランプ大統領が11月3日に今回のアジア歴訪に向けてハワイへ飛び立つことから、前日2日までには指名が行われそうだ。

当初最有力候補とされたコーン国家経済会議(NEC)委員長は、バージニア州で起きた暴力事件を巡りトランプ大統領の白人優越主義的発言を直接的に批判したことから、レースから脱落してしまった。

金融市場の混乱回避にはイエレン現FRB議長の続投が最適と思えるが、金融規制を巡りトランプ政権と意見の相違があるほか、民主党オバマ政権の置き土産といったイメージもある。その点、パウエルFRB理事ならば共和党員であるうえ金融政策も現状維持で市場の混乱も少なく、トランプ大統領にとっても「変えた」という満足感が醸し出せそうだ。

これまでのところ、為替市場ではパウエル理事はハト派的としてドル売りの反応がみられるが、実際のところそのハト派具合はイエレンFRB議長と同程度だ。目先、年内および来年にかけての利上げペースなど基本的には現状のFRBのスタンスを踏襲するとみており、「パウエル理事ならハト派」との市場の反応は一時的にとどまるだろう。

その他2人の有力候補となった場合の方が為替相場は動くとみられる。その1人、ウォーシュ元FRB理事の主張は目標インフレ率の引き下げや量的緩和反対などタカ派的。しかし、それ以上にテイラー・スタンフォード大学教授が指名された場合の方がドル高インパクトは強いだろう。

テイラールールに基づく政策金利の推計値は現状のFRBの政策金利を大きく上回る。ドル円でウォーシュ氏指名なら1円程度、テイラー氏指名なら数円程度のドル高となる可能性があるとみている。イエレン議長続投なら現状維持でほぼ動かず、パウエル氏指名なら一瞬ドル安と整理すると、相場変動のリスクはどちらかといえばドル高方向か。

<金融政策イベントは円安示唆>

月末にかけて金融政策イベントも集中する。26日のECB理事会では、前回の会合で言及された通り、資産購入規模の縮小が決定されるとみられる。

現行の月額600億ユーロの購入規模を200億ユーロ程度に縮小し、期間を9カ月程度延長するとの見方がコンセンサス。本来はユーロの上昇要因だが、すでに織り込んでいるとみられることや、ECBが金利や通貨の上昇を防ぐため声明に資産購入規模の拡大を選択肢として残すと予想されること、加えてドラギECB総裁も「テーパリング(量的緩和縮小)ではない」といったハト派的発言を行うと思われることなどから、ユーロの反応は限定的となろう。

混迷しているカタルーニャ情勢もユーロの上昇抑制要因だ。スペイン議会は来週にかけてカタルーニャ自治州の自治権停止に関する審議を行う可能性が高い。

しかし、中長期的には特に対円でユーロの上昇は続くとみている。年初月額800億ユーロだった資産購入規模が4月から600億に、そして2018年から200億に、となれば「2018年9月以降はいよいよゼロに」との思惑はどうしても台頭する。

一方で、30―31日に予定される日銀金融政策決定会合では「消費者物価の前年比プラス2%目標を維持し、強力な緩和政策を続けていく」姿勢が踏襲されるとみられる。11月1日のFOMCで「インフレ鈍化は一時的で緩やかな景気回復が継続し、漸進的な利上げが適当」とのスタンスが維持されるとの予想と併せ、金融政策の方向性は年末にかけて円を一段と押し下げるだろう。

前述の通り、足元のドル円はもみ合い・こう着の動きとなっているが、昨年までの5年間を振り返ると、10―12月期のドル円の上下値幅は平均で12%近くに達しており、比較的大きく動くことが多い。今年も年末にかけて米国の税制改革や利上げなどが実施されるとみられるなかで、筆者は引き続き1ドル=115円を超え、120円を目指す動きを予想している。目先、衆院選や日銀金融政策決定会合などといった上記イベントがその動きの起点になるのではないかとみている。

*鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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