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コラム:ドル115円「年内突破」へ残る2つの芽=鈴木健吾氏
November 20, 2017 / 7:49 AM / in 25 days

コラム:ドル115円「年内突破」へ残る2つの芽=鈴木健吾氏

[東京 20日] - ドル円は11月序盤にかけて114円台へ上昇し、11月2週目には今年3月以来の高値となる1ドル=114.73円を記録する場面もあったが、その後は失速。ずるずると111円台まで下落する動きがみられている。

一時2015年以来の水準まで低下していたドル円の1カ月物ボラティリティーも11月9日より急反発に転じ、オプションの売買の傾きを示すリスクリバーサルも円買いの権利の需要が高い円コールオーバー方向に拡大した。1カ月物ボラティリティーの上昇と円コールオーバーの拡大は、今後1カ月のドル円相場の値動きが円高方向に拡大する可能性を示唆している。

<真相はドル安よりも円高>

ドル円下落の背景としては、米税制改革を巡る不透明感なども理由とされているが、11月に入り起きているのはドル安というよりも円高だ。どちらかと言えば株式市場の不安定な動きがリスク回避的な円買い(円ショートの巻き戻し)を引き起こしているように思える。

実際、前述のドル円のボラティリティーが急上昇をみせた11月9日は、日経平均株価の上下値幅が850円を超える振れをみせた日だ。また、独DAXや英FT、NYダウなど世界の株価指数も11月2週目に直近の高値を更新したのち調整色を強め、ドル円もこれに歩調を合わせて下落している。

株式市場が調整的な動きとなった背景としては、企業の7―9月期決算発表がおおむね良好な結果に終わって株価が上昇したなか、11月や年末に決算を迎える海外ファンドなどが益出しに動きやすかったことなどが挙げられる。

しかし、来年に向けた企業業績や経済見通しに悪影響を及ぼすイベントは特に見当たらず、あくまでフローを中心とした調整にすぎないだろう。すでに米国株には底堅さも感じられるが、世界的にも調整が一巡すれば改めて企業業績を反映した動きに回帰し、金利の低下やドル円の下落にも歯止めがかかるだろうとみている。

ただ、年末までの営業日が30日を切ってきたなか、3月以降のドル円のレンジ上限である114―115円を上抜くという筆者の予想は時間的に苦しい状況になってきた。年内最後のヤマ場は12月前半の米国2つのイベントになるだろう。この結果が年末のドル円相場の水準を決め、場合によってはまだ115円超えの芽は残る。2つのイベントとは、「米税制改革」と、「米経済指標及びそれを受けた米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果」だ。

<税制改革がドル高要因となる条件>

米税制改革は、議会の本気度をうかがわせるペースで審議が進んでいるが、ポイントはその成立時期と内容となろう。税制改革法案の成立には、以下6つのプロセスを経る必要がある。

1.下院歳入委員会が法案を作成して委員会で可決

2.下院本会議で審議し可決

3.上院財政委員会が法案を作成して委員会で可決

4.上院本会議で審議し可決

5.下院・上院協議会での調整後法案を上院・下院で可決

6.大統領の署名を経て発効

なお、下院の法案と上院の法案は順番ではなく同時並行で審議される。11月20日現在、上記プロセスのうち、3つ目までが終了している。感謝祭に絡んで休場に入っている米議会は今後、11月最終週に上院案を本会議で可決し、12月序盤にかけて両院協議会が法案のすり合わせを実施、12月半ばにかけて調整後の法案を改めて上下両院が可決し法案成立、という最短ルートを目指すことになる。

しかし、米議会は税制改革以外にも12月8日に期限が到来する暫定予算への対応など、やる事が多く、また税制改革案においても州・地方税控除の撤廃やオバマ前政権が導入した医療保険制度(オバマケア)の加入義務の廃止、法人税減税の開始時期など、下院案と上院案には違いも多い。現実的には年内の成立はかなり難しいとの見方がコンセンサスのなか、逆に言えば年内成立が可能なペースで事が進めば、市場はこれを好感する可能性が高い。

内容的には、上記の州・地方税控除(上院案では全廃する意向だが、下院歳入委員長は受け入れられないとしている)やオバマケア加入義務(上院財政委員会案では撤廃としたが、反対も多い)などに加え、法人税減税の開始時期(下院は2018年から、上院は2019年から)と税率(上下両院とも20%への引き下げをうたっているが、減税開始時期の前倒しや減税恒久化のため、多少引き上げられる可能性)なども注目される。法人税減税やリパトリ減税が盛り込まれている税制改革法案が成立に向えば、ドル高材料となろう。

<12月FOMC後のドル円上昇余地>

11月15日に発表された米10月消費者物価(除くエネルギー・食品、コアCPI)の前年比や同小売売上高は市場予想を上回り、低インフレ基調の改善の兆候や堅調な個人消費が示された。

米国経済の堅調さは続いている。金利市場は12月FOMCでの利上げをかなり織り込んでいるものの、FOMCメンバーが3回としている来年2018年の利上げに関しては1.4回程度しか織り込んでいない。12月序盤にかけて発表される米供給管理協会(ISM)景況指数や雇用統計といった重要経済指標と、これを受けた12月のFOMCでのメンバーによる2018年の利上げ予想ペースによっては、かなりの修正余地があるとみている。

FOMCで米連邦準備理事会(FRB)は、引き続き米国経済の緩やかな回復傾向に自信を示し、これが賃金や物価も緩やかに押し上げるとの前提を維持するとみられる。加えてFRBは非常にタイト化したクレジットスプレッドや株価を含め、資産価格動向にも配慮すると筆者は考えており、これらを理由に12月のFOMCで2018年も3回の利上げペースを維持すると予想している。

実際にFRBが利上げを実施すると、そこがピークとなって米金利もドルも下落する「噂(うわさ)で上昇して、事実で下落する」パターンになるのでは、との見方もあるが、昨年12月の利上げ時とは違い、今回はまだ米金利もドルも「噂で上昇」していない。12月前半の米指標が経済の底堅さを示しFOMCがタカ派に傾けばドル円は上昇余地があると考えている。

今年、ドル円相場は3月以降、おおよそ108―114円のレンジを上下する動きが続いてきた。これに対し、1ドル=105円割れを予想するドル安円高派と、1ドル=115円超えを予想するドル高円安派が、それぞれ論陣を張ってきたが、その結果は最後の最後までもつれそうだ。筆者は引き続きドル高円安方向を予想している。

*鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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