March 20, 2018 / 7:32 AM / a month ago

コラム:「円安の春」来るか、目先のチェックポイント=鈴木健吾氏

[東京 20日] - 2018年1―3月期のドル円相場は、年初1月8日に記録した1ドル=113.40円を高値に3月2日の105.24円までほぼ一方的にドル安円高が進む展開となっている。

1月には「国債購入額減少による日銀の緩和縮小観測(後に否定)」や「中国による米国債購入減額・停止報道(後に否定)」、「欧州中銀(ECB)によるフォワードガイダンス変更の議論」などが材料視され、ドルは全面安となった。

2月には米金利の急上昇と米国株の急落、これによるボラティリティーの急騰によって金融市場の緊張が高まり、リスク回避の円買いにつながった。さらに3月には、トランプ米政権の強硬な通商政策に対する懸念や、同政権中枢で辞任や更迭が相次いだことなどが、ドル売りとリスク回避の円買いの材料となっている。加えて、これらを材料にドル円の下落傾向が鮮明となったことによるテクニカル要因もドル売り円買いを支援したようだ。

この間、年末の減税法案成立と10―12月期の良好な決算などを反映し、1月下旬にかけて米国株式が上昇したことに加えて、米長短金利の上昇や、全般的な米経済指標の堅調さといったファンダメンタルズ的なドル上昇要因もあったが、市場はこれをほとんど材料視しなかった。

また、黒田東彦総裁続投による日銀の緩和政策継続や、米連邦準備理事会(FRB)による利上げ姿勢継続といった金融政策の方向性もほぼ無視されており、本来、相関の高い日米10年債金利差とドル円との乖離も大きく拡大している。

筆者は昨年末、2018年の基本的なドル円相場の見方について、良好な米国景気の継続を前提に日米景況感格差や米国の利上げ継続、これによる日米金利差の拡大予想などから、ドルが円に対して優位な状況を想定し、ドル高円安方向をメインシナリオとしてきた。

しかし、上記の通り市場がファンダメンタルズをほとんど材料視しなかったこともあって、一方的なドル安円高が進み、2月には想定レンジの下方修正を余儀なくされた。このような動きは継続し、今後も2018年を通じてドル円は一方的なドル安円高が進んでいくのだろうか。

<英ポンドの教訓>

結論から述べると、目先は引き続き一方的で急激なドル安円高の可能性に警戒が必要だが、4―6月期にはこの下落トレンドも反転に向かうだろうと考えている。

本来、通貨の値動きは経済のファンダメンタルズや金融政策などを反映する傾向が強いが、足元のドル円相場はトランプ政権に対する警戒感やテクニカル的なトレンドなどを背景に、どこまでドル安円高が進むのか試したいといったセンチメントが強い状況だ。何らかのきっかけでテクニカル的な心理的節目とされる105.00円を下抜けば、次の心理的節目である100.00円程度まで急激な下落を示現する可能性も十分に考えられ、こうした目先のチェックポイントには注意が必要だ。

ただ、ドル円の下落も年初からの約2カ月強で7%を超える水準に達する中、このペースでのドル安円高が継続するとも思えない。加えて、1ドル=100円といった円高となれば国内経済への悪影響がファンダメンタルズを通じて円を押し下げるだろう。

実際、3月2日に公表された内閣府による企業行動に関するアンケート調査によれば、輸出のある上場企業の採算為替レートは100.60円、中堅・中小企業では105.60円だ。1ドル=100円では多くの企業が採算割れとなることで、株価のみならず雇用や消費、物価などに悪影響を及ぼす恐れがある。政府・日銀にしても来年に消費増税を控える中、このような状況は避けたいのではないか。

為替相場は短期的な材料によってモメンタムやセンチメントが過熱し、動きが加速する場面はよくあるものだが、中長期的にはファンダメンタルズに回帰する傾向が強い。英ポンドの動きも良い例だ。2016年6月の英国民投票での欧州連合(EU)離脱決定という材料で英ポンドは短期的に急落したが、その後はファンダメンタルズを反映して上昇に転じ、急落前の水準をほぼ取り戻す場面もみられている。ドル円相場も一定の達成感が得られれば、反転に向かうだろう。

むろん、11月に米国で中間選挙を控える中、トランプ政権の通商政策に対する警戒もくすぶり続ける可能性があることから、すぐにドルが一方的な大幅上昇となるのは難しいかもしれない。だが、景況感の格差や来年に向けた金融政策の方向性、大幅に拡大した日米金利差とドル円相場の乖離などを考えれば、4―6月期にもドル円はいったん反発し始めていくのではないかと予想している。

*鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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