April 18, 2018 / 8:43 AM / 8 months ago

コラム:円安再始動のシグナル点灯、ドル110円も射程内=鈴木健吾氏

鈴木健吾 みずほ証券 チーフFXストラテジスト

 4月18日、みずほ証券チーフFXストラテジストの鈴木健吾氏は、ドル円について、最近の値動きは短期下落トレンドの一段落を示唆しており、今後、110円に向けた反発が期待できると予想。 写真は都内で2016年7月撮影(2018年 ロイター/Shohei Miyano)

[東京 18日] - ドル円相場は1月8日の1ドル=113.40円を高値に3月23日の104.64円まで約3カ月にわたり一方的なドル安円高が進んできたが、4月に入り一時107円台後半まで反発しており、ようやく短期下落トレンドが一段落したようにみえる。

一時は急激なドル安円高を反映して将来の変動の大きさを示すボラティリティーが大幅に上昇、将来の方向性を示唆するリスクリバーサルも円コールオーバー(ドル安円高方向)が急拡大していた。しかし、4月に入り、いずれも1月前半の水準まで低下していることは、「一相場終わった」ことを示唆している。

テクニカル的にも反発の兆しがみえる。日足一目均衡表の転換線と基準線がゴールデンクロスし、遅行スパンが実線を下から上抜く動きとなっていることも、下落トレンドの終了と反発局面入りを示唆している。テクニカル的には上記1月の高値とその後の安値の半値戻しである109円や、乖離が拡大している200日移動平均線110円台前半などが、目先、戻りの目標値となりそうだ。

ドル安円高をもたらした材料も徐々に変化しそうだ。2月には米金利の急上昇と米国株の急落、これによるボラティリティーの急騰などがリスク回避の円買いにつながった。

しかし、ここにきて米10年債利回りは2.85%程度を中心とした水準でもみ合う動きをみせ、米株市場のボラティリティーを示すVIX指数も長期平均である20ポイントを下回る水準に低下、落ち着きを示している。

米株式市場では、1―3月期決算発表が始まったところだが、全般的に良好なスタートを切っている。大手SNSの顧客情報漏えいや自動運転車による死亡事故など、これまで相場をけん引してきたハイテク関連企業に個別の悪材料が浮上していることには注意が必要だが、トムソン・ロイターが集計したS&P500指数構成企業の予想業績は2018年に前年比20%程度の成長が見込まれており、株価指数も徐々にこれを反映した上昇トレンドに回帰していきそうだ。

<「地政学+貿易戦争」リスクの賞味期限>

3月以降の相場の焦点は地政学リスクと貿易戦争懸念に集まり、ドル安と円高の材料となったが、こちらも懸念が後退しつつある。

地政学リスクではシリアに対して米英仏が攻撃したが、事前のトランプ米大統領による「ミサイルが来るから準備せよ」とのツイッター予告の効果もあり、懸念された米ロの直接対立は免れたようだ。マティス米国防長官は、シリアのアサド政権に化学兵器を再び使わせないための「1回限りの攻撃だ」と述べており、再び化学兵器が使用されることでもない限り、緊張は緩和に向かうだろう。

北朝鮮を巡る懸念も後退していきそうだ。4月には南北首脳会談、5月末か6月初めには米朝首脳会談が予定されており、北朝鮮は条件によっては非核化も受け入れる姿勢が伝えられている。

5月12日に米国の対イラン制裁再開の是非を決定する期限が訪れることには一定の注意が必要だが、シリアや北朝鮮を巡る地政学リスクは4―6月期に大幅に後退し、市場の注目材料からは外れていくとみられる。

トランプ大統領が巻き起こした貿易戦争懸念もドル円の下押し材料となった。一時は中国と報復関税の応酬になる様相もみせ、貿易戦争が現実味を帯びて語られる局面もあったが、習近平国家主席がボアオ・アジアフォーラムで自動車などを含め市場開放を推進していく方針を示すと、トランプ大統領はツイッターで謝意を示し、「われわれはともに大きく前進する」と応じるなど緊張は緩和している。

もともとトランプ大統領の交渉手法は、無理難題とも思える高めのボールを投げ、その後徐々に譲歩を引き出しつつ落としどころを探るパターンが多い。中国が一定の譲歩姿勢を示したことで、中国への関税が発動するとみられる6―7月頃までには、落としどころを見いだすのではないかと考えている。

日本にとっては目下開催中の日米首脳会談が大きなヤマ場となろう。これを無事に切り抜けられれば、ドル円の上値はかなり開けてくるとみられる。

今年序盤の一方的なドル安円高で特徴的なのは、前述の通り「相場の急変動」「貿易戦争」「地政学」など「リスク」を主語とした動きであり、本来、為替市場の変動材料となりやすい、経済指標などのファンダメンタルズや金融政策が置き去りになっていることだ。

だが、経験則からも為替相場がいつまでもファンダメンタルズや金融政策を無視した動きを続けるとは思えない。市場で注目を集めたこれらリスクは4―6月期にはいずれも緩和方向に向かい、それとともにファンダメンタルズや金融政策が見直され、ドル円は1ドル=110円を超える水準へ反発していくのではないかと予想している。

鈴木健吾 みずほ証券 チーフFXストラテジスト(写真は筆者提供)

*鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

(編集:麻生祐司)

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