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コラム:米株支えるアニマルスピリッツは健在か=岩下真理氏
March 23, 2017 / 9:43 AM / 9 months ago

コラム:米株支えるアニマルスピリッツは健在か=岩下真理氏

[東京 23日] - 米国株は、14―15日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ決定と、16日のトランプ政権による予算案概要発表を受け、調整色を強めている。

前者はいったんの材料出尽くし、後者はトランプ政権への失望感につながった。目先はオバマケア代替案の議会承認の行方だが、仮に難航すれば、大型減税やインフラ投資、規制緩和など他の重要課題への着手も遅れるとの懸念は強まるだろう。

マルバニー行政管理予算局(OMB)局長によれば、予算教書の発表は5月中旬頃を目指しており、ムニューシン財務長官は、8月の米議会休会までには税制改革法案を成立させたい意向だ。トランプ大統領は、当初は就任100日となる4月末までに立法措置を目指していたが、大幅にスケジュールは後ずれした。

ただ、各省スタッフの任命・承認も遅れており、事務作業が遅れるのはある意味で必然的なことだ。

目先の試金石は、オバマケア代替案が、4月のイースター休暇(下院は6日まで採決可能、その後21日まで休会)前に上下両院を通過できるかだろう。その次は、2017年度暫定予算期限の4月28日だ。2018年11月に中間選挙を控える共和党下院議員にとって政治的な成果は必要であり、ライアン下院議長が議会共和党をどうまとめられるかが鍵を握る。

一方で、筆者がトランプ相場の起点と考えている米10年債利回りは、FOMC開催時の2.6%台から22日には一時2.4%割れまで低下。予想以上に金利が低下した背景には、投機筋のショートカバーや金利上昇リスクのある欧州債から米国債への資金シフトなどの需給要因が大きく作用したとみる。

世界経済の回復、原油価格の安定(過去2年に比べ)というファンダメンタルズは変わっておらず、2.3%割れを買い進む状況にもない。筆者が名付けた「トランポリン相場」は、期待の第1幕から、昨年12月中旬以降は調整の第2幕(米10年債利回りの2.3―2.6%のレンジ)が続いている。米国経済がこのまま堅調さを持続するなら、適度な株価調整はあっても弱気相場には至らないとみる。

トムソン・ロイター・データストリームによると、1年後の予想利益に基づく予想株価収益率(PER)は現在18倍と2004年以降で最も高い水準に近い。適度な調整をこなした方が、息の長い相場となる可能性が高まる。

昨秋のトランプ大統領当選後の米株高の持続は、米国の企業と家計マインドを押し上げた。米供給管理協会(ISM)発表の製造業景況指数の動きは、在庫調整の進展と強い受注が読み取れ、年前半の堅調持続を示している。米国でのアニマルスピリッツは確かに強まっており、ソフトデータの大幅改善が、今後は生産や消費というハードデータを着実に押し上げることを確認できるかだろう。

<FRBバランスシート縮小議論に要警戒>

3月FOMC後の会見でイエレン連邦準備理事会(FRB)議長は、「今後数年間は緩やかな利上げペースが妥当と判断した」と発言し、市場に優しいFRBを再び演出した。

今回の声明文では、「インフレ率は中期的に2%近辺で安定すると予測」とし、新たな表現として「対称的なインフレ目標との比較」が盛り込まれた。「2%は物価の天井ではなくて目標だと思い起こすべきだ。2%を下回っていた局面と同様に、時には2%を超えることもあるだろう」と述べ、物価上振れを許容する可能性を示唆したと解釈できる。

しかし、「物価が過熱するような状態になれば、金融政策もそれに伴って調整していく」とも語った。1月の個人消費支出(PCE)総合物価指数は前年比プラス1.9%と目標に近づいており、今後は物価の上振れをどの程度まで許容するのか、要人発言などで見極めていくことになろう。

米国の賃金は物価の遅行指標であり、労働市場のタイト化に伴い、先行きに上昇が波及していく可能性は十分に考えられる。その点、賃金の先行指標である雇用コスト指数の動向が重要となろう。1―3月期分が4月28日に発表される。

なお、3月FOMC声明文にはバランスシート縮小に絡む新たな文言は盛り込まれなかったが、4月5日発表の3月FOMC議事録ではその議論内容を確認する必要がある。何回か議論の後、その手順などをまとめて発表する可能性(早ければ6月)はありそうだ。

直近では、投票権のある2人のFOMCメンバーの発言が目を引く。3月利上げに1人反対したミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は17日、バランスシート縮小時期と方法に関する詳細な計画を公表するまで、利上げを見送るべきと主張した。21日には、ダラス連銀のカプラン総裁が、年内にあと2回の利上げを行い、バランスシートの段階的な縮小に向けた取り組みを続けることが妥当との認識を示した。

実際のバランスシート縮小は、まだ先と思われるが、その計画はそう遠くない時期に公表される心積もりは必要だろう。この材料も、一時的には株価調整を促す可能性があることを覚えておきたい。

<ECBテーパリング議論前倒しの可能性>

日本と比較する形で2017年の欧米物価動向を考えると、欧州は日本に比べ原油価格変動が川下の物価に影響を与えるタイムラグが短いこと、さらには足元のユーロ安が押し上げ効果があることなどから、欧州の物価上昇が日米に比べて一番速い。

他方、米国では日本と異なり、家賃と医療費の物価押し上げ寄与が大きい。ただし、最新2月分の消費者物価指数(CPI)では、帰属家賃が前年比プラス3.5%(1月も同3.5%)となり、昨年12月の同3.6%をピークに鈍化してきた。それ以前の帰属家賃の急上昇の背景として、賃貸志向の強まりが指摘できるが、昨年後半から住宅着工件数での集合住宅の優位も低下しており、賃貸家賃価格の上昇一服につながっているようだ。加えて米国はドル高の物価抑制効果がある。

3月9日の欧州中銀(ECB)理事会後のドラギ総裁会見では、追加措置の緊急性低下を説明したものの、「2017年末まで量的緩和を続ける」というフォワードガイダンスを維持した。ECBスタッフによる物価見通しは、2017年の中央値はプラス1.7%(昨年12月時は同1.3%)、2018年はプラス1.6%(同1.5%)と上方修正されたが、目先は夏前にもエネルギー価格持ち直しによる一時的な物価上昇率はピークをつけるとの見立てだ。

背景にあるのは原油動向である。昨年2月に米国産標準油種(WTI)ベースでは26ドルで底入れ、昨年4月から35―45ドルに切り上がり、5月以降は40―50ドル前後で安定化。10月以降は50ドル超が続くも、今年3月に下落して47―49ドル台の推移。4―6月期にかけては、前年同月比での上昇率は一服が見込まれる。

それでも、ユーロ圏の2月消費者物価指数(HICP)は前年比プラス2.0%に上昇しており、ECB内でタカ派が金融引き締めを主張するのは自然の流れだ。特に労働組合の強いドイツでは、今後の賃上げに伴いサービス価格が上昇していく可能性は高い。

今年最大の欧州政治リスクである4―5月のフランス大統領選挙が波乱なく終われば、4月から月600億ユーロに減額する国債買い入れ額のさらなるテーパリング議論が、意外と早まる可能性には注意したい。2015年春と同様で、欧州債売りが足元の米国債買いの流れを変えるきっかけになり得るだろう。

*岩下真理氏は、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト。三井住友銀行の市場部門で15年間、日本経済、円金利担当のエコノミストを経験。2006年1月から証券会社に出向。大和証券SMBC、SMBC日興証券を経て、13年10月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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