Reuters logo
コラム:「実りの秋相場」到来か、ドル115円の現実味=岩下真理氏
September 25, 2017 / 7:05 AM / in 3 months

コラム:「実りの秋相場」到来か、ドル115円の現実味=岩下真理氏

[東京 25日] - 間もなく2017年度上期が終了し、下期が始まる。下期を展望する前に、簡単に上期を振り返っておこう。

2017年の世界経済は新興国の持ち直し、IT関連需要の強さを背景に緩やかな回復を持続。過去2年とは異なり新興国不安は起こらず、原油価格も安定推移している。

そのような状況下、2017年度上期の米10年債利回りは、トランプ米政権の政策実効性の低下、地政学リスクの高まりを背景に、4月11日に2.3%割れ。トランプ政権誕生後の2.3―2.6%レンジを下抜けた。

その後は、1―3月期の米国成長率の一時的な弱さと物価の伸び悩みを背景に、総じて2%台前半で推移。6月利上げを織り込みにいった5月前半、ドラギ欧州中銀(ECB)総裁講演(6月27日)を受けて日米欧金利が上昇した7月前半の2回、2.4%台をつけたが、長続きはしなかった。

夏場に北朝鮮ミサイル発射で地政学リスクが高まると、9月8日に2%近くまで低下。さすがにその水準では、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でのバランスシート縮小決定を控えて切り返したが、12月利上げ観測が強まっても2.29%までの上昇にとどまっている。結局、米10年債利回りは昨年12月利上げ直後(12月16日)、今年3月利上げ直前(3月13日)につけた2.62%台がピークで、この水準を抜けることはできなかった。

一方の米株は、利上げを継続できる米国経済の強さと堅調な企業業績、長期金利の低位安定もサポートとなって上昇相場を続けた。仏大統領選挙でのマクロン氏勝利に伴う欧州不安の後退も追い風となり、トランプ期待が剥がれても、NYダウは9月20日に史上最高値を更新した。行き過ぎのハイテク株の調整や地政学リスクを背景に売られる局面があっても、高値圏での推移をキープしている。米債と米株ともに居心地の良い「ゴルディロックス(適温)相場」が長期化した印象だ。

ドル円に目を移せば、米10年債利回りが一時2.4%をつけた5月前半と7月前半に114円台まで上昇したが、日米金融政策のベクトルは逆でも米国長期金利が2%台前半にとどまっていることから、上値は限定的だ。ただ、北朝鮮問題によるリスク回避の円買いや、弱い米指標を受けたドル安で水準調整を余儀なくされても、107円台で踏みとどまった点は心に留めておきたい。

<米株高値圏維持の条件>

下期を考える上で、9月の日米欧金融政策会合の結果は示唆に富んでいる。7日のECB理事会では、予想通り金融政策は現状維持、政策ガイダンスの変更もなかった。ドラギ総裁は会見で「決定の多くは大方10月になされる」と述べた。その大枠決定の選択肢としては、「資産買い入れ規模を2018年から400億ユーロあるいは200億ユーロに縮小、延長期間は6カ月あるいは9カ月」が検討されるだろう。

次に19―20日の米FOMCは、バランスシート縮小を10月から開始することを決定。筆者の予想通り、米連邦準備理事会(FRB)が金融政策の正常化を早めに進めたい意向は変わっていなかった。

最後に20―21日の日銀金融政策決定会合は賛成多数で現状維持を決定。ただし、就任したばかりの片岡剛士審議委員が、長短金利操作目標に反対票を投じた。次回10月会合では、対案を提出する可能性があるだろう。

市場は9月FOMCで示された目先のタカ派姿勢(12月利上げの可能性)に反応したが、今回の重要なメッセージはむしろ足元の物価伸び悩みを踏まえた次の2点ではないか。

●2017―18年のコア個人消費支出(PCE)の下方修正(2018年以降は2%近辺で安定推移との見方は変えず)

●政策金利見通しの長期水準の中央値を2.750%(6月時3.000%)に引き下げ

1点目からは、イエレンFRB議長が会見で「現在の2%を下回っている物価はミステリーだ」と述べたように、物価停滞に納得できる理由が見当たらない苦悩が垣間見える。

2点目からは、潜在成長率低下のもと、完全雇用に近づいても賃金が伸び悩む状況が続き、政策金利の上げ余地も限られるとの認識が感じ取れる。

なお、フェデラルファンド(FF)金利の最終地点が2.750%なら、仮に12月利上げが実施されれば1.500%となり、25ベーシスポイント(bp)の利上げをあと5回すれば到達できる。焦ることなく、ゆっくりとしたペース(年2回程度)で良い。2018年の利上げ予想は、今後下方修正されていく可能性が高いと思われる。

上記の2つのメッセージを踏まえれば、米10年債の金利上昇は長続きしないだろう。2%台後半の定着は難しそうだ。米長期金利が低位安定なら、米株は適度な調整はあっても急落はなく、高値圏での推移が続くことが見込まれる。

<人民元と非鉄金属価格に要注意>

それでも10月前半は、中国が国慶節の休暇(1―8日)であるため、北朝鮮が自制する可能性があること、ハリケーン到来前に比べると、トランプ政権が年内に税制改革法案を成立させる可能性が高まったことなどから、市場がリスクオンを続ける可能性は高いとみている。

10月後半は、4つのイベント(18日から1週間程度の中国共産党大会、22日の日本の衆議院総選挙、26日のECB理事会、30―31日の日銀金融政策決定会合)が控えており、潮目の変化があるかもしれない。

これまで筆者は繰り返し、「7の付く年の株価は春から夏にかけて上昇し、秋には下がる」というジンクスを紹介してきた。2017年の秋で一番の注目材料は、5年に一度の中国共産党大会だ。習近平国家主席が景気安定に配慮し、中期的な改革断行の姿勢が示されれば、安心感につながろう。

中国経済は7月分指標からすでに鈍化の兆しが見え始めており、ここから一気に景気失速するわけではない。来年にかけて6%台前半の成長でソフトランディングできるかが重要である。

目先では、共産党大会後に、人民元や商品市況の動向に変化が出てこないかが気になる。この3カ月程度、人民元は対ドルでじりじりと上昇し、1ドル=6.5元割れで一服。足元は6.6元まで低下してきている。

その動きに連動して、銅やニッケルなどの非鉄金属価格も上昇。一部資源国の通貨と株も上昇後、一服している。米国の12月利上げ観測の高まりもあり、国際的な資金フローに変化が生じるか(リスクオフ相場に転じるか)否かについては、人民元と非鉄金属価格の動向が重要な鍵を握る。

最後に日本については、過去の経験則(アノマリー)から、選挙日までは日本株の上昇が続く傾向がある。選挙前に期待先行の上昇が続けば、選挙結果が予想通りなら、いったん材料出尽くしとなろう。

ただ、FRBに続いてECBも出口戦略を進めることが事実となれば、緩和を継続する日銀との金融政策のベクトルの違いが鮮明となる。日銀執行部は黒田東彦総裁任期まで、現状維持を続けるとみるが、片岡委員が極端な緩和強化策を提示した場合、その部分に株式、為替市場が反応してしまう可能性は否定できない。

欧州発のユーロ高、米国発のドル高、日本発の円安が重なれば、ドル円が久しぶりに115円を超えてもおかしくない。そしてドル円の115円超えは、日本株にフォローの風となるだろう。その地合いとなった場合、12月FOMC前後まで続く可能性を考えておきたい。

*岩下真理氏は、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト。三井住友銀行の市場部門で15年間、日本経済、円金利担当のエコノミストを経験。2006年1月から証券会社に出向。大和証券SMBC、SMBC日興証券を経て、13年10月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below