January 13, 2017 / 2:50 AM / 2 years ago

コラム:ビットコイン投資の落とし穴=村田雅志氏

[東京 13日] - 昨年12月以降、仮想通貨ビットコインの値動きが派手なものとなっている。昨年1月から5月まで400ドルちょうど近辺で取引されていたビットコインは12月下旬には800ドルを突破し、今年初めには1000ドル台に到達。1月5日には1160ドル台と過去最高値を更新した。

しかし、過去最高値を付けた同じ5日に、ビットコインは一時900ドル割れまで急落。翌6日には1000ドル台を回復する場面もあったが、12日には700ドル台半ばと昨年12月中旬以来の安値を記録し、本稿執筆時点の13日は800ドル台で上値の重い動きとなっている。ビットコインは年初の高値から30%以上も下落したことになる。

ビットコインとはインターネット上で流通する暗号化された電子通貨の名称だ。ビットコインは、ドルや円のように法的に定められたものでもなく、中央銀行や政府機関によって発行されるわけでもない。取引の正当性の確認は、マイニング(採掘)と呼ばれる計算作業を通じて行われ、同作業に協力した者(マイナー=採掘者)には一定量のビットコインが交付される。

ただ、最大発行量はプログラムにて2100万と決められており、既存の貨幣のように発行量が無制限ではない。発行主体がなく、発行量が有限という点で、金やプラチナといった貴金属に近いとの見方をする者もいる。

ビットコインの特徴の1つに、秘匿性の高さがある。ビットコインは、暗号化されたデジタル情報でしかなく、既存の貨幣のようにコインや紙幣といった物質(モノ)ではないため、物理的に発見されにくい。

また、ビットコインの保管や送受信に使われるソフトウェア(ウォレット)を利用する際には、本名などのプライバシー情報を開示する必要はなく、メールアドレスを登録するだけである。このため行政当局は個々人のビットコインの取引状況を把握することができず、取引を強制的に停止したり、課税することも難しいとされている。

<元建て資産の逃避先に>

ビットコインの値動きが大きくなった理由の1つとして、人民元の先安観を背景とした中国の外貨需要の高まりがある。

中国当局は昨年、約3200億ドルの外貨準備を使い元買い介入を続けたものの、年末の人民元は1ドル=6.9450元と、2008年6月以来の元安を記録。下落率は6.5%と、アジア通貨の中で最も大きかった。中国景気の減速、資本流出の継続、外貨準備の減少などを理由に人民元は今後も下落が続くとの見方が大勢で、1ドル=7元を突破するのは時間の問題とみられている。

中国人投資家の立場で考えれば、元安が今後も続くと見込まれるのであれば、元建ての保有資産を外貨建てに換えることが合理的となる。元建て資産を外貨建てにすれば、元安による資産価値の目減りを防ぐことができるだけでなく、元安進展による差益を得ることも可能となるからだ。

しかし中国当局は、さらなる資本流出を抑えるべく外貨買いの動きに対し規制を厳しくしている。例えば昨年11月から、500万ドル以上の海外送金、両替、海外企業買収については当局による事前審査が義務付けられた。

また、中国人観光客が海外での買い物で広く利用している銀聯カードは、昨年12月下旬より新規発行が停止された。今年からは、中国国民が人民元を外貨に両替する際に提出する申告書に、両替した外貨を外国での不動産購入、証券投資、生命保険・投資性還元保険類に使用してはならない旨が明記された。

こうした状況では、ビットコインは元建て資産の逃避先として非常に魅力的となる。上述したようにビットコインは秘匿性が高い。人民元でビットコインを購入すれば、中国当局によるさまざまな資本規制をくぐり抜ける形で元建て資産を外貨(ビットコイン)建てに換えることが可能となる。

<中国当局の規制リスク>

ビットコインは過去にも資本規制をくぐり抜ける手段として注目され、価格が高騰したことがあった。タックスヘイブン(租税回避地)として世界各国から資本を呼び込んでいたキプロスは、2012年後半から大規模な資本流出に直面。同国政府は、2013年3月に銀行預金の引き出し制限などの規制を実施するとともに、銀行預金への課税を実施した。

当時、ビットコインは一部のマニアの間でしか知られていないものだったが、当局の資本規制をくぐり抜ける有力な手段であるとの見方から世界的に知名度が上昇。キプロス当局による資本規制・銀行課税が決まる前に13ドルにすぎなかったビットコインは急騰し、同年4月には200ドルを超えた。

仮に人民元の下落や中国の資本規制の強化が今後も続くとすれば、ビットコインの価格上昇が続くとの見方も、一見正しいように思えるかもしれない。しかし政府樹立以来、社会主義国として国民に対し、さまざまな規制や干渉を行ってきた中国当局が、ビットコインに対して手をこまぬき続けるとは考えにくい。

現に中国人民銀行(中央銀行)は11日、中国でビットコイン取引所を運営する主要3社に対し調査を始めたと発表。中国当局がビットコイン取引の取り締まりを強化するとの思惑が、ここ数日のビットコイン価格の急落につながったと考えられる。

キプロスの資本規制・銀行課税をきっかけに世界的に知られるようになったビットコインは、2013年末に1100ドル台まで上昇したが、2014年からは売りが先行し、同年末には300ドル台まで下落した。また、上述したように昨年初めは、400ドルちょうど近辺にすぎなかったが、今年初めには(一時的とはいえ)1160ドル台と過去最高値を更新するなど、ビットコインの値動きは非常に大きい。

そもそもビットコインの価格は、供給がマイニングを通じて緩やかにしか増加しないため、需要の変動に大きく左右される性質を持つ。資本規制などのイベントで需要が急激に増えれば、価格は高騰しやすくなるが、今回の中国人民銀行の動きのように先行き不透明感を強めるイベントが発生し、需要が後退すれば、価格が急落しても不思議ではない。

また、ビットコインはインターネット上での取引がほとんどであるため、需給動向の変化スピードは他の実物資産に比べて早い。このため短期間で価格が大きく変動しやすい。

投資の世界では、資産価格の評価をする際に、得られるリターンと同時に価格の変動率(リスク)も検討することが一般的となっている。ビットコインは、短期間に大きな値動きを示す可能性があるが、これはリスクが非常に高いことも意味しており、リスクで調整したリターンは、他金融資産と比べて大きくないだろう。

競馬やパチンコといったギャンブルとして考えるのならともかく、ビットコインを投資の1つとして考えるのはあまり合理的ではないように思える。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。近著に「人民元切り下げ:次のバブルが迫る」(東洋経済新報社)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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