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コラム:米株高と円安の「逆回転」リスク=村田雅志氏
2017年7月13日 / 08:43 / 4ヶ月後

コラム:米株高と円安の「逆回転」リスク=村田雅志氏

[東京 13日] - 世界の株式市場は、米国を中心に堅調に推移している。ダウ工業株30種は、7月12日の終値で2万1532.14ドルとほぼ1カ月ぶりに過去最高値を更新。S&P総合500種も2443.25に上昇し、過去最高値(2453.46)に迫った。

ドイツDAXは6月20日に12951.54と過去最高値を更新。6月末には12300台まで下落したが、7月に入ると下げ止まり、12日は12626.58と、年初来10%プラスの水準まで持ち直している。韓国では総合株価指数が13日に2400を超え、過去最高値を更新している。

世界的な株価上昇の好影響は日本株市場にも波及している。日経平均株価は4月17日に一時1万8200円台まで下落したが、その後は底堅い動きが続き、6月2日には2015年12月以来となる2万円ちょうどを上抜けた。それ以降も2万円を割り込む場面が何度かあったものの下値は堅く、7月10日以降、2万円を割り込んでいない。

東京証券取引所が管轄する東証第1部など5市場合計の時価総額は、7月11日に622.5兆円と2015年8月18日以来の最高を記録し、同年8月10日に記録した過去最大(630.2兆円)に近づいている。過去最高値を更新する他国の株価指数に比べると、日本の株価指数に物足りなさを感じるかもしれないが、時価総額で見れば、日本株市場も過去最高水準に達しようとしている。

時価総額が増加することで、日本株を保有する家計や企業の金融資産が増加し、最終的には個人消費や設備投資が拡大するという資産効果も期待されるが、果たしてどうか。

過去の経験では、アベノミクス・ブームに沸いた2013年を除き、日本では資産効果による景気拡大効果は限定的だった。実際、今局面(日本株が底堅さを増した5月以降)でも、小売業販売額や機械受注などを見る限り、個人消費や設備投資の増勢が強まった様子はうかがえない。

そもそも資産効果が表れるまで、ある程度の時間がかかることもあり、景気が秋口から強含む可能性も否定はできないものの、現時点でそのシナリオ実現を強く期待するのは難しい。

ただ、次のような見方はできそうだ。世界的な株高ということもあり、日本の家計や企業は、株価上昇により拡大した金融資産をゼロ金利状態の預金口座に眠らせず、海外株や債券といった対外証券投資に振り向けると考えられる。現に財務省が毎週発表する対外証券投資は、年初から売り越しの動きが強かったが、5月に入ると買い越し基調に転じ、買い越し額は7月第1週までの10週間で5.4兆円に達している。

また、国内での労働需給のひっ迫は続いており、世界経済は新興国も含め安定感を増している。これらの点も勘案すると、日本景気が今後も底堅く推移し、(慎重な見方は根強いものの)国内要因に起因する日本株の大幅な調整局面は回避されるとの予想は可能かもしれない。

この場合、日本株の上昇が対外証券投資の増加を促す図式も続くと考えられ、為替市場では円安優勢の地合いが続くことになる。いわゆるリスクオンの円売りである。

<米株との連動性を強めるドル円>

12日のマーケットでは、米下院金融サービス委員会でのイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長発言が注目された。中でも、「インフレ率が目標の2%を持続的に下回り推移するリスクを認識している」などの発言を受け、米2年債利回りが1.37%ちょうど近辺から1.32%台後半に急落。フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ確率は16%から10%に低下した。

一方、米国株式市場では、イエレン議長のハト派的な発言を好感し、取引序盤は買い優勢の動き。その後も米国株は高値圏を維持した。

ドル円は、イエレン議長の発言後に113円台半ば近辺から113円ちょうど近辺まで下落したが、ドル売り・円買いの動きは続かず、短時間で113円台前半に反発した。米債利回りが低下し、FRBによる追加利上げ期待が後退したにもかかわらずドル円が下値の堅い動きを見せたのは、この日の米国株が底堅く推移したためと解釈できる。

日本も含めた世界的な株高が円安を促す図式が近い将来、崩れるとすれば、過去最高値を連日更新している米国株式市場が大幅な調整局面を迎える場合だろう。6月下旬にFRBのイエレン議長やフィッシャー副議長、サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁が相次いで指摘したように、米国株のバリュエーションは短期間で著しく上昇しており、ちょっとしたきっかけで調整色を強めるとの見方も一部にある。

仮に米国株の大幅な調整があれば、日本株市場では売り圧力が強まるだけでなく、米国景気の先行き懸念も高まり、FRBによる追加利上げ観測は後退するだろう。日本の機関投資家も積み上がった対外証券投資を巻き戻さざるを得ず、円高の動きが一気に強まることになる。今後のドル円相場は、日米金利差だけでなく米国株とも連動する傾向を強めると考えられる。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。近著に「人民元切り下げ:次のバブルが迫る」(東洋経済新報社)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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