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コラム:銀行受難が促す仮想通貨の進化=村田雅志氏
2017年11月14日 / 06:50 / 4日前

コラム:銀行受難が促す仮想通貨の進化=村田雅志氏

[東京 14日] - みずほフィナンシャルグループ(8411.T)は、今後10年近くの時間をかけて、店舗だけでなく従業員数も大幅に削減する意向を示した。同社が13日公表した資料によると、2017年3月末時点で約500ある拠点数を2024年度末までに約100拠点(約20%)、7.9万人の従業員数を2026年度末までに約1.9万人(約24%)それぞれ減らすことを目指す。

一部報道によると、同社のなかでは、従業員数の削減目標の公表について議論が分かれたようだ。他のメガバンク2社、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T)と三井住友フィナンシャルグループ(8316.T)は、業務量を削減するとしているが、従業員数の削減を明確には示していない。

しかし、日本のメガバンクはいずれも、収益性の低下に苦しんでおり、業務量が減るのに従業員を減らさない(労働生産性の低下を受け入れる)選択肢を選ぶことはあり得ない。公表の有無はともかく、全てのメガバンクは今後、業務量だけでなく従業員も減らす方向に動くとみるべきだろう。

従業員が減ることで銀行の競争力低下を危惧する声もあるが、メガバンクをはじめとする日本の銀行が、ジリ貧の状況を甘受するとは考えにくい。メガバンクは、従業員を減らす一方で、フィンテックによる収益性の向上を目指し、金融業への参入を検討するIT企業と連携・買収を進め、自らは研究・開発に注力すると思われる。

そうした動きの1つとして注目されるのが、メガバンク3社による仮想通貨の規格に関する連携である。一部報道によると、メガバンク3社は、それぞれが独自に研究・開発していた仮想通貨の規格を統一すべく協議会を立ち上げたという。

メガバンク3社が仮想通貨に関する規格を統一すれば、他銀行も追随するしかなく、統一された規格が仮想通貨を利用した資金決済のデファクトスタンダード(事実上の標準)になるだろう。この結果、小口での資金決済における銀行の存在感が強まる可能性もある。

<いずれ投機対象から通常資産の代替へ変化か>

現在普及している小口決済サービスは、クレジットカードのほか、流通・交通・IT企業が発行するデジタル情報を搭載したプリペイドカードが主流で、銀行が発行する(銀行口座と直結した)デビットカードの普及は限定的である。しかし、仮想通貨による資金決済規格が銀行間で統一されれば、銀行はカードだけでなくスマホといったIT機器でも利用可能な支払いサービスを提供することが可能となる。

利用者からみれば、銀行が提供する支払いサービスは、銀行口座と直結しているため、クレジットカードのように与信が求められず、プリペイドカードのように事前に資金を預ける(支払う)手間も省けるといったメリットがある。

個人間での資金のやり取りが可能になるというメリットもある。例えば複数人で飲食を共にし、飲食店への支払いを各人で分ける場合(いわゆる割り勘の場合)、現在は現金のやり取りをするか、支払いを肩代わりしてくれた方に送金する必要があるが、仮想通貨による資金決済規格が統一されれば、各人が保有するスマホなどを使い、異なる銀行であっても、その場での送金が可能となる。

インターフェース上では、自動的に生成されたQRコードなどを提示する必要があるかもしれないが、口座情報を明示的に示す必要がなく、プライバシーが保護されるメリットも生まれる。

クレジットカードやプリペイドカードを提供する各社は、銀行に対抗すべく各種サービスを強化することになるだろう。利用者に付与するポイントを増やすことや、購入した商品に対する保険機能を充実する可能性がある。しかし、こうしたサービス強化は、利用者の引き留めには寄与しても、コスト増を通じサービス提供会社の収益性を低下させる。収益性低下をカバーすべく、クレジットカード会社やプリペイドカード会社の間で統合の動きが強まることもあり得る。

金融庁は9月末、11事業者を仮想通貨交換事業者として登録し、現時点で19社が継続審査中としている。金融庁は明確に認めることはないだろうが、一般の方々からすれば、金融当局が仮想通貨の交換(取引)業者に(ある種の)お墨付きを与えた形にみえる。

こうしたなか、これまで保守的とされていた日本の銀行が、仮想通貨を利用したサービスに前向きな動きをみせれば、日本における仮想通貨の認知度がさらに高まる可能性もある。仮想通貨の認知度が高まることで、仮想通貨取引がさらに拡大し、より多くの企業が仮想通貨交換事業者として参入してくるだろう。

しかし、銀行が仮想通貨を利用した利便性の高い支払いサービスを提供すればするほど、一般社会において仮想通貨を直接、決済に使う必要性は低下し、仮想通貨は投機対象の位置付けが強まるとみられる。今後もしばらく、仮想通貨取引業界は拡大を続けるだろう(もっとも、投機的な取引を好む方は一定数に限られ、数年後には仮想通貨取引の市場規模は頭打ちになるだろう。これは外国為替証拠金取引業界がたどった歴史でもある)。

一方、世界的な金余りや低インフレを背景に、先進国を中心に低金利状態は長く続くと予想される。運用をはじめとする金融界では、仮想通貨を投機対象としてではなく、通常資産の代替として注目する動きが強まるのではないか。既存の金融業界に存在する信託、運用、貸借といった各種サービスを仮想通貨に対し提供する事業者も数多く出現すると思われる。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。近著に「人民元切り下げ:次のバブルが迫る」(東洋経済新報社)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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